ぐんぐん大きくなったメビウスは、店の天井を突き破って街中に降臨した。左腕のブレスから光の剣を伸ばし、ビルへ手当たり次第に斬りつける。
「何て往生際の悪い奴なんだ!」
半ば呆れ、ヒョウガも超次元界から牛型の巨大モンスターを呼び出した。モンスターから放たれるビームを浴びて巨大化し、合体してゼロタウラスへと変化する。ツインゼロソードを振るい、メビウスと激しく斬り結んだ。
(……それにしてもこいつ、一体何者なんだ?)
刃と刃を交える最中、零騎士はふと疑問に思った。
(最初は超次元生命体かと思ったが、俺の性癖『年上好き』が全く反応しない。ということは、人間よりも寿命の長い超次元生命体や高次元生命体ではない可能性が高い。まさか、虚無英雄会の元メンバーの人間が変身しているのか?)
しかし、メビウスは「神の親衛隊のルーキー」と名乗っていた。虚無英雄会は会長グリイザや四人の役員を敬ってこそいるが、宗教団体的な性質はなかったはずである。事実、武神ソードに変身した青年をはじめとする一般構成員たちは、英雄会の真の目的を知らされていない駒でしかなかったではないか。
今までに戦った組織のどれにも属さない、新たな敵なのだろうか?
「巨大化能力のある原典を使っているようだが、性癖のパワーの方は出し惜しみか?」
情報を引き出す目的で、ヒョウガは少し煽るように言ってみた。剣に力をぐっと込めて鍔迫り合いに競り勝ち、一太刀浴びせようとする。
「性癖? ないですよ、そんなもの」
メビウスはバックステップし、ビルを盾にして攻撃を防いだ。地上から見ていたカイリが「バカヤロー! 何て下手くそな戦い方だ! 周りを見てみやがれ! 何も守れてねえじゃねえか!」と怒鳴っている。
「だって僕、造られたばかりですから」
「……?」
どういう意味なのだろう、と戸惑った隙を突かれた。敵は光の剣を消すと、腕をクロスさせて破壊光線を繰り出してきた。
「今だ!」
「くっ⁉」
胸部に光の奔流を喰らい、転倒するゼロタウラス。それに馬乗りになり、メビウスは再度光の剣を顕現させた。
「「――超絶エックス合体! 天元突破! 完成、『百合&BLカイザー・VSX』!」」
とどめを差そうと剣を振り上げた赤と銀の超人へ、駆けつけた巨大ロボがキックを炸裂させる。三機の戦闘機と三台のマシンがそれぞれ上半身と下半身を構成した、六体合体。百合・BLレンジャーの現状で最強のロボである。
「待たせたな、後輩。後は任せろ!」
「二人の試合をただ見てるだけじゃ我慢できなくて、ケイイチロウたちにもこっそり連絡しておいたのよ。間に合って良かったわ!」と、操縦席からカイリとツカサの声が届く。
「お、おのれ~~!」
吹っ飛ばされたメビウスはふらふらと立ち上がった。自暴自棄になって突進してくる敵に、六体合体のロボは「一気に決めるわよ!」と必殺技をお見舞いした。
「「『百合&BLカイザー・性癖ラッシュストライク』!」」
ロボが各マシンへ分離し、六人それぞれのパーソナルカラーの破壊エネルギーを帯びて高速突進。最強の六連撃を受け、超人は大爆発した。
「ぐあああああーっ⁉」
「永遠に、アデュー! ……って、ん?」
爆発の中で、光の粒子のようなものが四方へ散ったのを一同は見逃さなかった。これまでに倒した敵で、やられるときにあんなエフェクトを出した奴はいない。
「何だったんだろうな、あのメビウスってやつ」
「あたしに聞かれても困るわよ!」
コクピット内でそんなことを言い合いながら、百合・BLレンジャーは勝利を収めたのだった。
ゼロカード大会での騒動から、数日後。ツカサはヒョウガに電話していた。
「もしもし、ヒョウガくん? 今大丈夫?」
「ちょうど大学のお昼休みだったので、大丈夫ですよ。どうしたんですか?」
「実は、この間の偽造カードのことなんだけど」
あの後、BL警察が現場へ踏み込み、問題のカードを押収した。専門家を呼んで鑑定してもらい、誤字ありの正規品なのか、それともやはり不正なカードなのかを調べたのだ。
「専門家によると、おそらく偽造だろうって。でも、細かいところまでしっかり加工してあって、相当手の込んだ偽物よ。とても一人の力で作れる代物じゃない。メビウスは単独犯ではなく、彼を支援している者が他にもいそうだわ」
「……そうですか、分かりました。連絡ありがとうございます」
学生食堂でランチ中だった青年の表情が、曇る。
まだ見ぬ敵の出現。彼は早くも、波乱の予感がしていた。