百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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第28話 CHOKER

「狂ってるのは僕なのか? それとも、世の中なのか?」

 

 顔を白く塗り、ピエロのようなメイクをした男が機関銃を乱射している。首には黒いチョーカーを装着していた。

 たちまち宝石店のショーウィンドウが粉砕され、店内にピエロ率いるならず者たちが踏み込んでいく。片っ端から金目のものを奪い、やりたい放題だ。略奪の最中もピエロは常に奇妙なスマイルを浮かべていて、笑顔以外の表情を見せないのが逆に不気味だった。

 

 

「やめろ、チョーカー!」

 

 そこに、黒い帽子と仮面を身につけた、マッチョなヒーローが現れた。

 

「街の平和を乱す奴は、このハットマンが許さない。今日こそお前を倒す!」

「やれるものならやってみろ。僕は生よりも高価な死を望んでいるんだ」

 

 道化師衣装の袖から二十五セント硬貨を一枚取り出し、チョーカーがコイントスをした。手の甲で硬貨を受け止め、表が出たのを確認し、その奇妙な笑顔をハットマンへ向ける。

 

「『硬貨』だけに」

「いいコメディアンになれるぜ」

 

 ハットマンが軽口を叩き、チョーカーへ突進する。コイントスを合図にしたかのように、両者はぶつかり合って激しい戦闘を始めた。

 

「僕はずっと、自分の人生を悲劇だと思ってた。でも今分かったよ。僕の人生は喜劇だ!」

「お前の喜劇は、今日ここで終わる!」

 

 近距離から銃を発砲するチョーカー。超パワーで相手にパンチをお見舞いしようとするハットマン。勝つのはどっちだ?

 というクライマックスのシーンに、突如として乱入者が現れた。

 

 

「……何だかよく分からないけど、戦うのはやめて下さい。街がめちゃくちゃじゃないですか!」

 

 手首から長く伸びたリボンで、ビルからビルへと飛び移ってやって来る。鮮やかな赤いリボンに身を包んだヒーローが、投げ縄の要領でリボンを飛ばし、一瞬で二人を拘束した。

 さらに、他のならず者たちをもリボンで縛り上げ、身動きを取れなくしてしまった。

 

「大丈夫ですか、皆さん」

 

 宝石店の店員たちへリボンダーマンが振り返ったとき、遠くから「カット!」という声が聞こえた。

 

 

「えっ?」

 

 振り返ると、カメラマンや監督、その他スタッフたちが困った顔でリボンダーマンを見つめていた。

 

「リボンダーマン、これは映画『ハットマン対チョーカー featアイロンマン』の撮影だよ。本物のバトルじゃない。この店だって撮影用のセットだ」

「もしかして僕、撮影の邪魔しちゃいました?」

 

 言われてみれば、何だか奥行きのない、作り物っぽさ溢れる宝石店だ。縛られたチョーカー役の俳優もすっかり笑顔を消して、うんうん唸っている。

 

「ご、ごめんなさいっ!」

 

 慌てて全員の拘束を解くと、リボンダーマンは監督に謝ってからそそくさと立ち去った。

 

 

 高層ビルの屋上に寝転がって、ため息をつく。

 

「はあ。珍しく騒ぎが起こってるなあと思ったら、映画の撮影だったなんて。ツイてないや」

 

 頭部を覆っていたリボンを解き、ピーター・バーガーの素顔が露わになった。

 リボンダーマンの初登場からずいぶん長い時間が経ってしまったけれども、皆さんはこのピーターという青年のことを覚えているだろうか? 高校の社会見学に行く途中にエッチな同人誌を拾ったのがきっかけで、彼は超人的な力を使えるようになった。以来、叔父の「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉に従って平和のために戦い続けてきたのだ。

 来日し、ツカサやカイリと共に戦ったのは良い思い出である。が、アメリカで高次元生命体の脅威に備えるために帰国してからというもの、事件らしい事件が起きていない。今日は何やら騒がしかったが、映画の撮影だった。

 

「邪魔してしまって申し訳なかったなあ。お詫びに、あの映画が公開されたら三回くらい見に行こうっと」

 

 そうして独り言ちていると、もう一人、別の影が屋上に降り立った。

 

「坊ちゃん、リボンダーマンでございやすね?」

 

 

 ウエスタンハット型の頭部アーマーを持つ、カウボーイ風なアーマーの戦士が少年を見下ろしている。突然のことに、ピーターは「うわっ」と跳ね起きた。素顔を見られてはまずいと思い、急いでリボンを装着し直す。

 

「そうだけど、君は?」

「あっしはおねロリの星・ロリーニンジャーでございやす。次元大魔王の手先だと聞きつけて、リボンダーマン殿を成敗しに参りやした!」

 

 ギター型武器のロリースターガンをギュイイイイン、とかき鳴らし、金色の忍者が名乗る。

 

「覚悟して下さいやし!」

 

 スターガンをソードモードにしたのち、中央部のダイヤルを回すと「おねマジック!」と電子音声が流れた。竜巻と共に斬撃を繰り出す必殺技「ウイニング・おねスター」をいきなり発動させる。

 

「ちょ、ちょっと待って! ヒーローあるあるだけど、初手から必殺技を使う回は大体負けるから要注意だよ! だから敵を弱らせてから使うのが一般的なんだ!」

 

 と言いつつも、実際のところ、リボンダーマンは攻撃を受けて普通に吹っ飛んでいた。リボンを伸ばして屋上の縁にしがみつき、かろうじて転落を避けた次第である。

 

 

「次はこいつで行きやしょう!」

 

 ロリーニンジャーは話を聞いていない。ダイヤルを切り替えて「ロリマジック!」と音声が流れ、今度はガンモードにしたギターから電撃を放ってくる。

 

「『ライトニング・ロリスター』!」

「うわああっ!」

 

 電撃でリボンが焼き切れ、ピーター・バーガーの体は宙に投げ出された。

 いかに超人的な力を持っていても、高層ビルから落ちたら確実に死ぬ。必死に両手首から新たなリボンを飛ばし、どうにか市街地を走るバスの屋根に着地した。

 しかし、安心している場合ではない。車の上から上へと飛び移り、ロリーニンジャーも物凄い速さで追いかけてきていた。

 

「派手な帽子だね。ハットマンの友達かい?」

 

 やがて同じバスの車上で向かい合うと、リボンダーマンは軽いジョークを飛ばした。

 

「これも撮影だったらいいんだけどな」

「ハットマン? いえ、あっしは忍者でございやすよ。人に隠れて推しを尊ぶ、ジャパニーズ・ニンジャでございやす。おねロリを愛し、ある日突然変身能力に目覚めてからは、影となりて悪を討つために戦おうと決めやした」

 

 ピーターと同じく、偶発的に力を手にしたタイプの戦士らしい。百合レンジャーやBLレンジャーのように、人為的に開発されたシステムによって変身するタイプとは一線を画する。

 ならば分かり合えるのではないか、とピーターは微かな希望を抱いた。

 




今回、ご迷惑をおかけした作品
・バットマン
・JOKER(映画)
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