零騎士ヒョウガがいちゃいちゃしていた頃、超次元界でも動きがあった。再び人間界で進攻しようとした自称「神」に、クロードの残留思念たちが進言したのである。
「ヘイ、ゴッド! その前に、超次元界のレジスタンスを潰しておいた方がベターだぜ。アンダースタンド?」
「レジスタンスだと?」
光球は馬鹿にしたように笑った。
「あんな雑魚、いつでも倒せるだろうに」
「ハウエバー、そうでもないぜ。イン・ファクト、虚無英雄会のノン・プリシャスは、レジスタンスのお菊に心臓のカードを奪われて作戦失敗している。ゲートを開くことのできる奴が百合・BLレンジャー側にもいると、何かとやりづらいのは間違いないな」
「……なるほど、一理ある。ダレンが我々の側に付いたことで安心していたが、貴族階級ではないとはいえ、ゲートを開ける存在が戦隊に味方すると厄介かもしれぬ。作戦を変更し、先手を打ってレジスタンスを潰そうではないか」
その役目は君に任せる、と神はダレンへ光を向けた。
「私はまだ、君を完全に信用したわけではない。レジスタンスを倒せるかどうかで、君の覚悟を見定めさせてもらおう」
「……面白い」
顔に傷を負った男は、不敵に笑った。
ルーカス、クロード、ダレンは各々が開いた「どこへでも行けるドア」によって、自称「神」はそれ自身が持つ超パワーによって空間を跳び越え、一瞬でレジスタンスの本拠地へ殴り込みをかけた。
「うわっ⁉」
「な、何だ⁉」
半球状の超次元界の中心部、最も光化学スモッグがひどい地域において、レジスタンスの構成員たちは懸命な植林活動を行っている最中であった。ガスマスクを装着し、片手には植物の苗、もう片方の手にはスコップを持って、地道に作業していた。
「ダレン? ダレンじゃない!」
ガスマスクを外したお菊が、驚いて叫ぶ。
「あなた、二、三日前に突然飛び出していったと思ったら、どういうわけよこれは。何で倒したはずの奴らと一緒にいるの? ジゲン・ライドを悪用したってレベルじゃないわよ」
「勘違いするな。彼らは私の能力によってではなく、神の偉大な力で復活を遂げたのだ」
ベルトに時計型のアイテムを装填し、ダレンはマジェスティ状態へとチェンジした。彼に合わせるかのように、ルーカスとクロードもアイテムを取り出して変身する。
『ダレン・マジェスティ!』
『誰じゃ? 俺じゃ! 忍者!』『ルーカス! 見参!』
「天、怒りて悪を斬る。荒れるぜ、ベイベー! 『ブレイブキョウリュウクロード』!」
赤き救世主、紫の忍者、金の恐竜戦士が並び立った。同時変身というのは普通「熱いな~、これ。燃えてきた!」となるものだが、敵側がやると絶望感がすごい。
「今の私は、神の命によって動く。貴様らレジスタンスを殲滅させよとのお達しだ、覚悟せよ!」
『フル・チャージ』
ボウガン型の武器を召喚したダレンは先陣を切り、光の矢を乱射しながらレジスタンスたちへ突っ込んだ。レジスタンス側はリボンズトルーパーへ変身して迎え撃つも、スペック差は歴然である。
さらに悪いことに、今回ダレンが使っている武器の原典には、「誰から攻撃されたのか」を一瞬だけ忘れさせる能力がある。武器本体、もしくはそこから放たれた攻撃がヒットした瞬間に忘却効果が働き、相手を隙だらけにしてしまう。まだダレンが無貌支持派第二位として動いていたときに、一度だけ披露した能力だ。
「あんたって奴は……! 私が止めるわ!」
『DEEP! DROP! DANGER! アメリカン・ファイター! リボンズ!』
好き勝手させてたまるか、とお菊も変身。雄叫びを上げてダレンマジェスティへ体当たりし、レジスタンスの仲間たちから引き離した。
「面白くなってきたな」
「俺たちもダレンに加勢するぜ。アーユーレディ?」
「――駄目だ」
戦いを見守っていた神が、ルーカスとクロードを制止する。
「ダレンの忠誠心を試すため、奴が最も親しくしていたレジスタンスの仲間、リーダーのお菊と戦わせる。君たちは他の量産型を片付けたまえ」
『エル・サルバトーレ・ダレンバースト!』
ベルトを回転させ、マジェスティが必殺技を発動した。高く跳び上がり、歴代二号戦士の幻影を順に浮かばせたのち、脚部に纏わせて破壊エネルギーへ変換。そのまま強烈なキックを、リボンズの胸部へと叩き込む。
「がっ……」
オクトパスの機械アームで防御を試みるも、破壊力に耐え切れずにあえなく粉砕された。お菊は派手に吹き飛ばされ、無様に地面を転がった。
視界の端には、クロードやルーカスの攻撃を受けて変身解除されていく同胞たちの姿が映る。彼らが一人、また一人と戦闘不能に陥るたびに、植えたばかりの植物の苗がその体の下敷きになっていった。
「どうして⁉ どうしてこんなことをするのよ、ダレン!」
かろうじて変身解除されていないが、満身創痍。息も絶え絶えに、彼女は絞り出した。
「私は……私は、あなたとは分かり合えると思っていた。私たちは無貌やルーカスのせいで人生を狂わされ、それでも絶望せず、何度だって立ち上がってきたじゃない!」
「お菊……」
僅かに動揺を見せるダレン。彼が攻撃の手を止めたのに苛立ったのか、自称「神」はルーカスへ何事かを囁いた。紫の忍びが頷き、二人へ近づいていく。
「情が移ったか、ダレン。もういい。神からの指令は俺が全うする!」
「――このときを待っていた」
刹那、男は仮面の下でカッと目を見開いた。ベルトを回転させ、再度必殺技を放つ。
『エル・サルバトーレ・ダレンバースト!』
「なっ⁉」
先ほどと同様のエフェクトのパンチ技を、振り向きざまにルーカスの胸部へ見舞う。不意を突かれたルーカスは咄嗟に反応できず、軽く吹き飛ばされてしまった。
「え? どうなってるわけ?」
呆然としているお菊へ、赤き救世主はゆっくりと手を差し伸べる。
「今は何も聞くな。……立て、お菊。世界を救うときだ!」
「いや、聞きたいことしかないんだけど」