「さっきのパンチは効いたぜ」
痛そうに胸をさすりながら、ルーカスはダレンへ歩み寄ってきた。クロードも徐々に距離を詰めてくる。
「ミスター・ダレン。やっぱりお前、神に味方するふりをして、内側から俺たちを潰す機会を虎視眈々と窺ってたってわけか? アンビリーバボー!」
「裏切りも、裏切ったふりをするのも、二号戦士の十八番だからな」
ダレンは悪びれずに淡々と応じた。
「――神に楯突くとは良い度胸だ。ルーカス、クロード、彼はもう用済みです。始末しなさい」
光球の声に二人が「はっ」と恭しく頷き、武器を構える。
「調子に乗るなよ、ダレン。お前は生前の俺に勝てなかった。何度やっても結果は同じだ!」
「俺の『年下好き』のデバフはお前に効きづらいかもしれないが、二対一で勝てると思ったらビッグ・ミステイクだぜ! アーユーオーケイ?」
「……私が何の策もなく裏切るわけがないだろう。貴様らを葬る方法は既に考えてある」
対するダレンは一度変身を解き、ルーカスが今使っているものと同型のドライバーを腰に巻き付けた。オレンジ色の手裏剣型プレートを中央にセットし、回転させる。
「ルーカス。貴様が使用している原典、それが放送されている世界線での二号戦士の力を見せてやろう。変身」
『踏んだり! 蹴ったり! ハッタリ!』『超次元ライダー・ダレン!』
背後に出現した大きな蜂から防具が現れ、橙色のそれを全身に纏った。頭部には三方手裏剣の意匠がある。
「貴様を片腕五秒で倒す。ハッタリではなく、マジでな!」
「ハッ、やれるものならやってみろ!」
ルーカスとダレンは共に短刀を召喚し、激しく斬り結んだ。形勢は互角。やがてダレンがバックステップで距離を取り、両手で印を結ぶ。
『カチコチ・忍法!』
ダレンの掌から冷気が放たれ、ルーカスを全身氷漬けにした。と思ったのも束の間、紫の忍者は氷の内側から炎を湧出させ、脱出を果たした。
「残念だったな、ダレン。こんなこともあろうかと、氷遁の術を受ける直前に火遁の術を自分自身へかけておいたのさ!」
「くっ、眩しい……」
炎の鎧を纏った状態で凍結されたせいで、氷は温度差により凄まじい輝きを放っている。目がくらんでしまったダレン目がけ、ルーカスは必殺技を発動した。
「そろそろ幕引きと行こうぜ」
『フィニッシュ・忍法!』
紫のエネルギーを帯びた短刀で連続斬りを浴びせる。
しかし、ダレンが使っているのもまた忍者系の戦士の原典。身代わりの術のようなものを使い、煙に包まれて姿を消すと、負けじと必殺技で対抗した。
『ファンタスティック・忍法!』
肉体を無数の蜂へと変えて敵を翻弄したのち、ジャンプしてライダーキックを放つ――と見せかけ、忍術で敵の背後へ瞬間移動、短刀で一閃するという技である。
「おっと、そうは行かないぜ」
これも瞬間移動するところまでは決まったのだが、殺気を感じ取ったルーカスは「おねロリ」性癖のパワーで自身と植物の苗の位置を入れ替えた。ダレンの斬撃は、宿敵ではなく苗を爆発四散させてしまった。
「ヘイヘイ、まどろっこしいのはディスライクだぜ。ネクストタイムは俺に戦わせろ!」
お互いに身代わりの術やら何やらを使えるせいで、なかなか技が命中しないのに痺れを切らしたのだろう。それまで静観していたクロードが、剣を振り上げて乱入した。
「喰らえ。『雷電残光』!」
「ぐあっ⁉」
稲妻を受け、後退するダレン。彼の右手には、いつの間にか青い指輪がはまっていた。銀色の扉のような形状に変化したベルトへ、指輪を押し込んで変身する。
「ならば、奥の手を使わせてもらおう」
『ハイパー! ゴー!』『ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイパー!』
顔と胸にライオンのたてがみの意匠がある、青と金の戦士へと変わった。手にしたマグナムから光弾を撃ち、クロードたちを狙う。
「――馬鹿め。自ら機動力を捨てて遠距離攻撃主体になったところで、ルーカスの忍者の力に勝てるはずもない。さっさととどめを差せ!」
「はっ」
嘲笑うような神の声を受け、ルーカスは身代わりの術で光弾を避けつつ、素早くダレンの背後へ回り込んだ。
「どうやら判断を誤ったようだな。今度こそ終わりにしてやる!」
『ビクトリー・忍術!』
短刀で鋭い突きを放ったルーカス。が、ダレンは何を思ったか、振り向くとその突きを自らのベルトで受けた。
「な、何の真似だ⁉」
「奥の手を使うと言ったはずだ」
ベルトが破壊され、変身も解除された。にもかかわらず、顔に傷を負った男は微笑を浮かべていた。
「この二号戦士の原典には、『敵の武器によってベルトを自ら破壊した場合、変身能力を失う代わりに、敵の偉大な計画を阻止する』というパワーが秘められている。私は貴様らの使う原典の性質や、使用可能な技などを調べ上げた上で、この力を解放するときを待っていたのだ」
中央が損傷したベルトから、ライオン、カメレオン、イルカ、牛、隼の五種類の動物を一体にまとめたような、キメラ的なモンスターが出現した。キメラは咆哮を上げると、ルーカスとクロードへ襲いかかった。
「何をする……ぐあああああっ⁉」
「オーマイゴッド⁉ せっかくリバイブしたのに、そりゃないぜ。シーユーアゲイン!」
五種の動物の特徴を持った獣は、瞬く間に二人の体をすり抜けた。すると戦士はもがき苦しみ、ばたりと倒れてしまう。その肉体は徐々に身体的特徴を失っていき、元のマネキン人形同様の姿へ戻った。
「この合成獣は貴様らが受肉したかりそめの体ではなく、そこに宿る残留思念のみを喰らい尽くす。いかなる術を使おうとも、思念や魂が牙から逃れることは不可能だ」
もはや聞こえていないだろうに、ダレンは死者へ告げる。彼なりのけじめであり、復讐であるのかもしれなかった。
「……ルーカス。貴様の怨念、確かにこの私が葬ったぞ」