百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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9 古着について

 二大ロボットが拳をぶつけ合う。だが、必殺技を喰らってダメージを負っているからか、ブラゴクウが変形している兄妹攻神はいまいちパワーが出ていない。押し負け、後ずさった。

 

「とどめだにゃ! 『デストキャサリンファイヤー』!」

 

 キャサリンが乗る鉄人の、胸部のハッチが開く。その中の罐には、炎が赤々と燃えていた。キャサベリオンが発動した不思議な吸引力によって、兄妹攻神の全身は鉄人の罐内部へと吸い込まれていく。

 

 

「ぼ、僕、一体どうなるんです⁉」

 

 ロボへ変形しているブラゴクウが、柄にもなく情けない悲鳴を上げた。

 普通に考えたら、物理的にはあり得ない現象だ。何せ、体長がほとんど同じ二体のロボがいて、その一方がもう片方を圧縮して取り込もうとしているのだから。

 

「端的に言って死ぬだろうな」

 

 諦めムードに突入したダレンはそう呟き、コクピットからひらりと飛び降りた。

 

「すまない、超ブラゴクウ。過去の貴様のコピー体を召喚しても、キャサリンを正気に戻すことはできなかった。やはり私自身の手で、今やるしかない」

 

 

 直後、兄妹攻神はキャサベリオン内部に完全に飲み込まれた。ハッチが閉じ、灼熱に焼き尽くされる。

 

「――君自身の手で? 愚かな。今さら他の巨大戦力を呼び出したところで、もう間に合うまい。早く奴の息の根を止めてしまえ、キャサリン!」

「了解だにゃ~」

 

 大地へ降り立ったダレン。鉄人は彼の前に立ちはだかり、もう一度ハッチを開いた。その胸に宿る業火を、今度は逆に外部へ放出する派生技を繰り出そうとしている。

 

「『デストキャサリンファイヤー・逆噴射』!」

 

 

 そのとき、ダレンの背後に桃色のゲートが開いた。金の装飾も付いている。

 

「……待ちくたびれたぞ」

 

 顔に傷を負った男は、仮面の下で不敵に笑った。

 

 

 三十分前。

 人間界、東京都郊外。今二人が談笑しているのは、BL警察本部の休憩室。

 前回、自称「神」に敗北した直後にもかかわらず「とりあえずハードオンでも行こうぜ!」と発言したカイリは、ツカサから顰蹙を買った。それを教訓に、彼は全く異なる提案をしてきたのである。

 

「ハードオンが駄目なら、オンハウス行こうぜ!」

「行かないわよ!!」

 

 もちろん、爆速で却下された。

 

 

「行く場所を変えたら良いって問題じゃないから!! この非常事態にのんびりお出かけすること自体がまずいのよ。まあ、作戦会議はさっき終わったけど」

 

 話し合いの結果、「ルーカスやクロードの残留思念が活動限界を迎えるまで粘る」という方針に決まったのだ。具体的には、ゴークイーンズのクイーンパレットによる癒しの力で他の面々を回復させ、怒涛の鮫や鋼の猛牛のごとくネバギバで戦う。

 おそらく、敵は前回同様、互いの位置を巧みに入れ替えて戦おうとするだろう。そういうトリッキーな相手に対して有効手段を見つけるのは難しいが、二人に共通の弱点を突くことは可能だ。

 

 

 当然、作戦の要となるゴークイーンズを敵が集中的に狙ってくることも考えられる。そこでナオヤ、裕介、美明日、ヒョウガの追加戦士組が護衛役を引き受けた。

 

「そうだな。真面目な話、今から新しい装備を開発したり、戦隊の新メンバーを増やしたりしてる余裕もない。現状では最善の作戦だと思うし、俺は満足してるぜ」

 

 テーブルを挟んでツカサと向き合い、カイリは頭を掻いた。

 

「じゃ、実際に行くのはなしとして、オンハウスの魅力だけでも伝えさせてくれよ」

「まあ、それくらいなら……」

 

 

 ハードオンについて熱く語られたことはあったが、そういえばオンハウスについてはあまりレクチャーされていない。軽い気持ちで頷いたツカサ。しかし、それが間違いであった。

 

「オンハウスといえば古着とか家具家電とか色々取り扱ってるわけだが、全部を解説するとページがいくらあっても足りないんで、今回は古着についてだけ喋るぜ。なあツカサ、古着の良さって何だと思う?」

「えっ? えーっと……」

 

 新品よりも安い、と言いかけて、慌てて言葉を呑み込む。

 

 

『……クロード。お前は中古原典を使っているが、中古品に対する愛着が感じられない。ただ安いから、扱いやすいからという理由で中古を選んでいるだけだ。中古品それ自体を、スペックの低さとかレトロ感とかその他諸々を含めて愛している俺に、お前が勝てる道理はないぜ!』

 

 

 しばらく前にカイリはこんなことを言っていた。危ない。もう少しで、ツカサはクロードみたいな台詞を吐いてカイリを呆れさせてしまうところだった。

 

「えーっと、お洒落?」

「ズバリ正解!」

 

 炎神と一緒に戦っていそうな口調で、彼はうんうんと首を縦に振る。

 

 

「古着の魅力の一つは、店に売られているものの多くが一点ものだってことだ。だから流行に左右されず、個性的なファッションをすることができる」

「古着コーデに凝っている人をたまに見かけるけど、確かに、いわゆる量産型のファッションにならないのは強みかもしれないわね」

「第二に、安い! 一部のビンテージものはともかく、大体の古着は定価よりかなり安いぜ!」

「うん、それは知ってる」

 

 何ならさっき考えていた。ムーヴォの子供服をオンハウスで買ったときも、安さに驚いたっけ。

 

 

「そして第三に、選択肢の幅広さが挙げられるな。たとえば新品屋さんでは、『そのアパレルブランドで』『現在販売中のもの』しか買えない。したがって、何店舗か巡って色々見比べることも多いぜ」

「ふーん……」

 

 適当に相槌を打つ。

 選択肢の幅広さ。どこかで聞いたことがある話だと思ったら、何かのバラエティー番組で芸能人が古着についてトークしていたときの、あれだ。あれの受け売りじゃん。一週間くらい前だろうか、リビングで家族三人でテレビを見ていたときに、カイリがやけに熱心にメモを取っていたのを覚えている。……え? もしや、カイリが古着にはまったのって、あのときから? 恐ろしく最近だった。

 

 

 本当にこいつ、知識が豊富なように見えて実はめちゃくちゃ浅かったり、知識があっても全然活かせてなかったりすることが多いのよね。ハードオンのジャンクコーナーでもそうだったし。べ、別に、一緒にいて楽しいから許せるけど!

 

「ところが古着屋には、色んな人が色んな年代に買った服が、あちこちから集まっている。今までに発売された、あらゆるアパレルブランドの服を購入可能なんだ。そう考えると、なんかすごく素敵じゃねえか? ロマンがあるっていうかさ」

「そうね。で、あんた自身はどうなのよ。どういう古着を買ってるわけ?」

 

 はたして一週間でどれくらいの知識を身につけているのかと思いながら、ツカサは尋ねてみた。

 

 

「んー、まあ、半額セールになってるところを物色して、よく分からないアパレルのパッと見で良さげな服を買ってる感じかな。一着あたり千円くらいで」

「予想通りすぎた⁉」

 

 激安価格だとは思うけれど、本当にそれで良いのかと心配になるレベルである。もうちょっとメーカーについて調べてから買うべきではなかろうか。半額セールになっているものって、季節外れだから安いのもそこそこ多いと聞くし。

 

 

「でも、最安で千円前後から個性的な古着コーデが始められるって考えたら超お得だろ? しかも、環境にも優しいときてる」

「まあ、その点は同意するわ」

「正式にツカサと付き合う前のデートで、着て行く服に悩んで前日に古着屋へ駆け込んだのも、今となっては良い思い出だぜ。あの頃は今よりも金がなかったからな」

「……え、ちょっと待って。あれ古着だったの?? 今暴露しても何もいいことなさそうな情報を、急に暴露するのやめなさいよ⁉」

 

 

 と、仲睦まじく(?)じゃれ合っていたとき、目の前に「どこへでも行けるドア」が出現したのだった。

 

「ゴホン。お取込み中ごめんなさいね」

 

 リボンズドライバーを腰に巻いたままのお菊が、扉を開けて出てきた。気まずいのか、咳払いしている。

 

「事情は後で説明するわ。力を貸してもらえないかしら?」

 




※次回の更新は1週間後の予定です。
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