「ハアッ!」
「くっ……ま、負けないにゃ!」
ゼロタウラスに斬りつけられ、キャサベリオンは後退した。
「これでも喰らうにゃん。『デストキャサリンファイヤー・逆噴射』!」
鉄人の胸のハッチが開き、超高熱の火炎が放たれる。対するヒョウガは槍型の武器、ツインゼロソードを構えて高速回転した。そのあまりの速さに風が巻き起こり、炎を寄せつけずに吹き飛ばす。
「そんな馬鹿にゃあ⁉」
「――終わりだ。『野牛零断』!」
勢いを殺さず、キャサベリオンへ回転突進するゼロタウラス。すれ違いざまに必殺の一撃を浴びせ、ズンと大地を踏みしめて停止した。
ヒョウガの「年上好き」性癖は、年上と戦う場合、相手との年齢差に応じて彼自身の攻撃力と防御力をアップさせる。ダレンと同世代の超次元生命体であるキャサリンに対してもそれは有効で、実力以上の力を発揮して圧倒していた。
クロードとの戦いで、ダレンは自分の年齢が六百歳だとしれっと明かしている。キャサリンも同じくらい生きているのだろうか――女性に年齢を聞くのは失礼なので、聞かなかったけども。
「にゃああああ~っ!」
胴を切り裂かれた鉄人が、崩れ落ちながら爆発する。マジキャサリンも操縦席から投げ出され、危なっかしい着地を決めた。
と、そこに、変身解除したダレンがつかつかと歩み寄る。
彼の手には、ゲームカセットのような形状の変身アイテムが握られていた。原作では「覚悟を決めないと使えない」設定のそれを、腰のドライバーへセットする。
「本物のキャサリンは、今も私の心の中で生き続けている。私に……切れないものはない!」
『辿る歴史! 目覚める騎士! ダレン・レガシー!』
白い鎧の聖騎士へ変身したダレンは、ベルトのレバーを開閉して必殺技を発動した。
『ダレン・クリティカルストライク!』
背中から純白の翼を広げ、飛翔。右足に青と白の破壊エネルギーを溜め、急降下してライダーキックを繰り出した。
マジキャサリンはランプ型銃による射撃で迎え撃とうとしたが、キックの威力の前に弾が蹴り飛ばされてしまった。ならば、とランプを擦って弾丸の軌道を変え、ダレンの脚部ではなく上半身を狙うも、魔法の力が込められた聖騎士のマントがそれを阻む。
「だったら、『キャサリン・シャイニングアタック』だにゃ!」
やけになった彼女は、ランプから白猫の精霊を高速射出する大技を使った。おそらく、相打ち覚悟でのことだったろう。けれどもダレンは、空中で体を軽くひねって回避した。そのまま肉薄し、キャサリンの腹部へキックを叩き込む。
「……さよならだ。キャサリン」
羽の舞い散るエフェクトとともに、残留思念ごと受肉体を粉砕する。
再び変身を解いたダレンは、目を潤ませていた。
さて、そんなわけでキャサリンの残留思念を撃破したヒョウガとダレンは、皆と合流しに向かったのだが。
「先輩方、今の状況を教えて下さい!」
「端的に言うと、また自称『神』がなんか作り始めた」
うんざりしたようにカイリが答える。彼の視線の先では、新たに出現したマネキン人形に残留思念が注ぎ込まれている最中であった。
「なあ。お前、自分で戦おうって発想はねえのかよ?」
「――ない」
光球は即答した。
「超次元生命体が他の生物より優れているのは、自らの形や特性を自由に変えられるからだ。特定の原典や性癖のイメージに縛られ、ワンパターンな姿にしかなれなくなった時点で、その者は超次元生命体としての優位性を、可能性を失ってしまう。私はそれを恐れているだけだ。無限に等しい数の原典へアクセスできるとはいえ、一旦戦い始めれば、使い勝手の良い数種類に頼ってしまいそうだからな」
「もっともらしいこと言ってるけどよ、今のお前のクソデカミラーボールみたいな格好もなかなかダサいと思うぜ。ワンパターンだし」
「な、何を言うか!!」
どうやら逆鱗に触れてしまったようだ。案外、自分でも気にしていたのかもしれない。
「この無礼な輩を捻り潰してしまえ、BARLNOCX(バールノクス)!」
「……了解だ」
マネキン人形が変化し、アーティスト風の男になった。よく通る、聞き取りやすい声をしている。
「いや、あんた誰よ」
見覚えのない男の登場にツッコむツカサ。彼は手の中の時計型アイテムを弄びながら、「分からないのも無理はない」と言った。
「俺は、次元ライダーBLACON・RXの人間態だからな」
「BLACON・RXって確か、ロリーニンジャーだった頃のルーカスがアメリカで二回くらい戦ってたやつ? 何で今更そんなのが⁉」
「平成という道を、俺が綺麗に舗装し直してやるぜ」
「話聞きなさいよ!!」
ツカサをガン無視し、BLACON・RXの人間態はベルトに時計型アイテムをセットした。ベルトを回転させ、「変身」と静かに告げる。
『超次元ライダー! BARLNOCX(バールノクス)~!』