「お前がどんな姿に変わろうと、俺たちが必ず倒す!」
先陣を切ったのはヒョウガだった。銀色の魔人へ突進し、黒い稲妻を纏った袈裟懸け斬りを繰り出す。
「『零の衝撃』!」
「年上好き」性癖の効果で破壊力を極限まで高めた、必殺の一撃。しかしゼニスは、それを右腕の刃で軽々と受け止めてみせた。
「何っ⁉」
ノーダメージなのはさすがに予想外で、狼狽するヒョウガ。
「零騎士。今の君の力は、確かに過去最大なのだろうな。だが、だからといって私に勝てるわけではない!」
ゼニスは左腕を素早く振るい、斬撃を飛ばした。防御しようとしたヒョウガだったが間に合わず、胸部に炸裂。装甲から火花を散らしながら、軽く吹き飛ばされてしまった。
「だったら、あたしたちが相手よ。エマージェンシー、百合・BLレンジャー! VS・スワットモード、オン!」
後輩をカバーするように、ツカサたちも前に出た。防弾ベストと大型マシンガン「VSリボルバー」を身につけて強化変身し、さらに百合とBLの性癖を発揮すべく、同性のペアを作る。
ツカサはウミカと、ケイイチロウはサクヤと、トウマはカイリと組んだ。一人余ったナオヤは、ヒョウガのサポートへ向かう。
「二人とも、これを! ってウミカはウミカは懐かしのあれを渡してみたり!」
そして裕介、美明日のノーマル性癖組はペアになるのではなく、代わりにウミカから渡されたスタンプ型アイテムでフォームチェンジを行った。これを使うのは、ルーカスとの最終決戦以来。まさかまた出番があるとは、本人たちも思っていなかった。
「行くぜ、美明日」
「サクッと大事に一気に決めるわ!」
オメガ珈琲シルバーとネトルティ来部の姿が重なるようにして、頭部がシルバー、胴が来部、脚部はネトルというカオスな形態へと変わっていく。
『トルネード・アップ!』『三位一体! 俺たち戦隊! 湧き上がる嵐は無限大! 超次元ライダー・百合嵐!』
同性とペアを組んだことにより、性癖のパワーは発動済みだ。白い光に包まれ、戦隊の力が倍増している。何ならテンション爆上げでブンブンしているくらいである。
「連続攻撃で畳みかけるわよ。――ストライク・アウト!」
ツカサらが、リボルバーによる破壊光弾の一斉射撃を行った。
「合点承知だぜ! 『百合拳・ソニックハンマー』!」
ブレス型の追加装備を得たカイリは、ゼニスへ接近して強烈なパンチを放つ。
「『BL・ベガスラッシュ』!」
BLファイヤーは剣の刀身に竜巻を宿し、一閃。
『百合嵐! Go! Go!』『トリニティ・アップ!』『必殺! オメガ&ジャスティス&ダークネス・フィニッシュ!』
最後に超次元ライダー百合嵐も、シルバー、来部、ネトル三人の幻影を纏った跳び蹴りを放った。
「……何をやろうとも無駄だ」
かつてルーカスをも葬った、最強の必殺技連打。そのことごとくを魔人は容易く突破した。
彼の広げた翼から、大量の光弾がばら撒かれる。「ストライク・アウト」による破壊光弾は、ゼニスの光弾の爆撃で呆気なく相殺されてしまった。カイリの拳も、ナオヤの一閃も、百合嵐のライダーキックも、連鎖的に広がっていく爆撃に阻まれて魔人に届かない。
「一に百を掛けても、千には及ばない。それと同じだ」
爆風が吹き荒れ、地表を炎が這いまわる中、ゼニスは翼をはためかせて舞い上がった。
「諸君がどれだけパワーアップしようとも、私との力の差は埋まらない。神の力を思い知るがいい!」
刹那、先刻の数倍の量の光弾をゼニスは宙に浮かべた。あまりに圧倒的で、無限に等しい量の破壊エネルギーだった。
「……神の裁きだ」
その台詞を言い終わらないうちに、大量の光弾が直線的な軌道を描いて百合・BLレンジャー目がけて降り注ぐ。眩しくも恐ろしい制裁は、下から眺めていると、まるで満天の星空がそのまま地上に落ちてきたかのようだった。
「「どわ~~っ⁉」」
為す術もなく、戦隊たちは光弾の雨の直撃を喰らった。雨が止むのと同時、変身を強制解除されて倒れる。皆、満身創痍であった。
「つ、強すぎるぜ……」
「ヒョウガくんの『年上好き』性癖でも、あたしたちの百合とBLの性癖でも勝てないだなんて……」
カイリもツカサも、肩で息をしている。現状の最高戦力で挑んでもなお全く歯が立たず、絶望的な状況だった。
ルーカスやクロードとの決戦において、彼らは性癖の真のパワーでバフをかけまくって勝利を掴み取ってきた。けれども、バフをかけて勝てるのは実力が近い相手だけ。桁違いの強さを誇るゼニスに対しては、もはやいかなる強化を使っても追いつくことができない。
「万策尽きたようだな」
静かに大地へ降り立ち、銀色の魔人は百合・BLレンジャーを見回して意地悪く笑った。
「そろそろ引導を渡してやろう。諸君らを滅ぼし、私は世界の再創造を実行するのだ!」
右腕の刃が光を帯びた。腕を勢いよく振り上げ、斬撃を飛ばそうとする。
「――何?」
が、ゼニスの動きはそこで不自然に止まった。ボールを手から離す直前の野球のピッチャーみたいだった。
見れば、彼の体内から白い輝きが漏れ出ている。輝きはせわしなく動き回り、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしていた。光球の姿のとき、穿たれた穴から覗いた光によく似ている。
生きながらえるため、自称「神」が定期的に取り込んでいた超次元生命体たちだ。彼らは今、宿主へ反逆している。必死に魔人の動きを止め、百合・BLレンジャーのために隙を作ろうとしていた。
「球体時の私の体表が攻撃を受けて破壊されたとき、意識が目覚め、自我を取り戻したというのか? だが、なぜ私に逆らう⁉ なぜ、神であり創造主であるこの私に!」
今回、ご迷惑をおかけした作品
・ブンブンジャー
※次回の更新は1週間後の予定です。