百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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16 そして、神は死んだ。

 ゼニスは倒された。あとは怪我の応急処置をして、人間界へ帰るだけなのだが。

 

「なんか忘れてるような気がするのよね……」

 

 お菊に手当てを受けながらツカサが首をかしげていると、遠くから「おーい!」と声がした。ゴークイーンズとBLACON・SUNが、手を振りながら走ってくる。そういえばこいつら、バールノクスとかいうのと戦っていたんだっけ。

 

 

「私の『レッド・1000キロカロリーパンチ』をはじめ、皆で必殺技を連打して追い詰めたのですわ~!」

「令和産の原典を使う私たちの攻撃なら、バールノクスにも問題なく効きましたわ~!」

「多少反撃も受けましたが、クイーンパレットで回復したので大丈夫でしたわ~!」

「バールノクスめ、俺の『ライダー・ブラコンキック』でかっこよくとどめを差そうとしたのに、急にマネキン人形に戻ってしまうとは。許さん!」

 

 口々にやかましく喋り始めた四人に、ツカサは「ゼニスがやられたからバールノクスも消滅したんだと思うわよ」と教えてあげた。大体において、怪人が倒されたらその能力も効果を失うのが戦隊あるあるだ。そういう感じである。

 

 

「何っ! 自称「神」はもう倒されてしまったのか⁉ 許さん、いや許せる!」

 

 勝手に憤っているBLACON・SUNを、ダレンが「ちょっと手伝え」と手招きした。

 

「貴様と俺で同時にゲートを開き、手当てが終わった者から順に人間界へ帰還させる」

「うむ、分かった」

 

 既にケイイチロウら数名は、ゲートをくぐっている。黒いバッタの戦士は二つ返事で頷いた。

 久々に再開した百合・BLレンジャーとレジスタンス組だったが、早くも別れの時が近づいていた。

 

 

 一足先にドアをくぐった裕介に続こうとして、彼女はふと思いとどまった。

 

「……ねえ、ネトル」

 

 桃色の扉に手をかけ、美明日は自分の中にいる超次元生命体へ呼びかけた。

 

「もしあなたが望むなら、私と分離して、このまま超次元界へ残ってもいいのよ?」

 

 

『どのみち、以前あなたたちに倒された時点で、私は三武神の地位を剝奪されている。もう超次元界に居場所はないも同然だし、こうなったらとことん付いて行ってあげるわよ。地獄までね』

 

 

「あなたは以前ああ言っていたけれど、無貌もその支持派も壊滅した今、元三武神だったことに大きな意味があるとは思えないわ。自称『神』を倒して戦いも一段落したことだし、無理に私に付いてこなくても……」

『無理なんてしてないわよ?』

 

 気丈そうな声が、美明日にだけ聞こえる。

 

『あなたという相棒と一緒にいる方が、私は楽しいの。ただそれだけ』

「そう言うと思ったわ」

 

 ポニーテールを風になびかせ、彼女は微笑んだ。眼鏡をくいと押し上げ、扉を開く。

 

「これからもよろしくね、ネトル!」

 

 

 最後に、ツカサとカイリの番になった。

 今回の戦いは、人間界の戦隊と超次元界のレジスタンス、どちらかが欠けたら勝利を収めることはできなかったろう。ツカサはお菊と軽いハグをし、カイリはダレンと握手を交わした。

 

「ゼニスを倒すためとはいえ、裏切ったふりをしてすまなかった。また助けてもらったな。心から感謝する、百合・BLレンジャー」

 

 顔に傷を負った男が、深々と頭を下げる。

 

「これで本当にお別れね」

 

 涙ぐむお菊に、二人の戦士は首を振った。

 

 

「たとえ離れていても、あたしたちは仲間よ」

「またいつか会おうぜ! 今度はピーター師匠ともご一緒したいよな!」

 

 そして、金の装飾が付いた扉を笑顔でくぐっていく。ドアが閉じると同時にゲートは消滅し、百合・BLレンジャーは全員人間界へ戻った。

 

 

 かくして自称「神」、ゼニスは死んだ。

 超次元界にも高次元界にも人間界にも、神はいない。少なくともその一点だけは、三つの異なる世界で共通している。

 神が死に、不条理に満ちた世界で、すべての命は今日も生きていくのだった。大切な者たちと共に支え合いながら、ささやかな幸せの中で。

 

 

 ありがとう、百合レンジャー! お疲れ様、BLレンジャー! 神を名乗る強敵との戦いは、ついに終わった。今日くらいはゆっくり休んで、英気を養ってくれ!

 

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