怪盗戦隊百合レンジャーと、警察戦隊BLレンジャーの抗争から半年が過ぎた。百合エックス、BLエックスの活躍によって両勢力の大激突は未然に防がれ、和解に向け、百合とBL両方を認め合おうという動きも見られ始めた。
両勢力の平和の象徴として造られた街、メビウスタウン。そこでは百合とBLの薄い本が大量に売られていて、人々は皆お気に入りの同人誌を買ってニコニコしていた。
しかし、その平和を打ち砕かんとする者たちがいた。彼らの名は東京卍帝国。突如、第三勢力として百合派とBL派に宣戦布告した!
「メビウスタウン、潰すぞ〜!」
「うおおおおーっ!」
ブロンブロン、と大型バイクの排気音を轟かせ、いかつい男たちがメビウスタウンに殺到した。
カラフルなパワードスーツに身を包んだ彼らは、普通の人間を遥かに超えるパワーを発揮できる。アメコミのスーパーヒーローみたいな怪力で、不良たちはさっそく好き放題に暴れ始めた。
「喰らえ、核弾頭キック!」
東京卍帝国のリーダー、マイティーが蹴りを放つ。その蹴りの軌道に合わせて、身につけた赤いパワードスーツが強烈な衝撃波を生成する。不可視の衝撃が高層ビルを木っ端微塵に粉砕し、手下たちは歓声を上げた。
「さすがは無敵のマイティー!」
「野郎ども、俺たちも行くぞ!」
緑色の鎧を着たサブリーダーのドラゲン、黄色の鎧で切込隊長のパージンに率いられ、不良たちは進撃した。
手に取っていた同人誌を放り投げ、人々が逃げ惑う。平和だった街に、悲鳴が響いた。
「待てっ!」
だが、悪党の破壊行為を黙って見過ごす者はいない。駆けつけたカイリとツカサが、不良グループの前に立ちはだかった。
「国際警察の権限において、実力を行使する。警察チェンジ!」
「俺も怪盗として、貴重なコレクションを破壊されるわけにはいかないんでね。怪盗チェンジ!」
BLエックス、百合エックスにそれぞれ変身し、東京卍帝国に銃を向けた。
「誰だ? お前ら」
リーダーのマイティーが二人を睨む。小柄なのにもかかわらず、ものすごい威圧感だ。
「孤高に煌めく怪盗。百合エックス!」
「気高く輝く警察官。BLエックス!」
銀と金の強化服を装着した戦士が、名乗りを上げる。彼らこそが百合派とBL派の争いを鎮静化させ、平和な世界を実現した怪盗と警察だった。
だからこそ、再び戦いを起こそうとする卍帝国を許せなかった。
「なんかかっこいいな! ゲンちん、俺たちもやろうぜ!」
しかし、マイティーは名乗りを見ても怯まず、むしろワクワクしている様子だった。パワードスーツの背についたマントをなびかせ、即興で自らも名乗りを上げる。
「燃える炎のエレメント。赤の魔法使い、卍レッド!」
即興とは思えないほどキレが良くて、ツカサとカイリはぽかんとしてしまった。ドラゲン、パージン、さらに他の幹部もそれに倣った。
「唸る大地のエレメント。緑の魔法使い、卍グリーン!」
「走る雷のエレメント。黄色の魔法使い、卍イエロー」
「揺蕩う水のエレメント。青の魔法使い……」
と、そこまで名乗ったところで、ひょろっとして弱そうな不良が止めに入った。
「マイティー君、その辺でやめてほしいっす! 根拠は言えないんすけど、なんか著作権的にやばい気がするんすよ! 完全に魔法戦隊マジレ○ジャーのパクリじゃないっすか!」
「なンだよ、タケちゃん。根拠言えてるじゃねえか。一つのセリフの中で矛盾するなよ。てか、魔法戦隊って何? タイムリープを繰り返してる主人公キャラみたいなこと言って止めないでくんね?」
「いや、でもさ……」
「俺がやると言ったらやる! 俺がルールだ! 分かったか、アサルトウルフ!」
「俺の名前は武一だよ⁉︎ アサルトウルフって誰⁉︎」
「……えーい、お前らいい加減にしろ!」
いつまでも茶番が続きそうな気配がしたので、カイリが苛立ちを隠さずに言った。
「お前ら、一体何がしたいんだよ! せっかく百合派とBL派の抗争が収まりかけていたのに、何でこんなひどいことをするんだ。メビウスタウンがめちゃくちゃじゃないか!」
「決まってるだろ。お前らが平和な世界を作っちまったからだよ」
リーダーに代わり、ドラゲンが答えた。龍の刺青に弁髪という出で立ちの、かなり怖そうな男だ。
「レアな同人誌ってのは高額で取引できる。しかも、犯罪行為に当たらない。クスリや暴力や女を使わなくたって効率的に稼げると気づいたとき、俺たち東京卍帝国はただの不良グループじゃなくなったのさ。特殊な機械で人々の記憶を書き換え、百合派とBL派の対立を煽ることでたっぷり儲けさせてもらった。そのビジネスモデルを壊されちゃ、商売上がったりなんだよ」
「それじゃ、すべての黒幕はあんたたちだったのね」
ツカサの手は、怒りでわなわなと震えていた。
「お金を稼ぐためだけに皆の記憶を弄ぶなんて、絶対に許せない。あんたたちのせいで、あたしやカイリ、他の大勢の人たちの人生はめちゃくちゃにされたのよ!」
「んなもん知るかよ。俺、馬鹿だから分かんねえ」
パージンが呟くと、笑いが起こった。彼らを見回し、マイティーが遠い目をして言う。
「卍帝国も、最初はこんな感じじゃなかったのになあ……。今日は来てないけど、ウルザード稀咲が加入した辺りから、何だかおかしなことになっちまった」
「マイティー君、あの、根拠は言えないんすけど、そいつが怪しいと思うっす!」
「しつこいぞ、タケちゃん」
コホン、と咳払いをして、小柄なリーダーは仕切り直した。
「とにかく、だ。俺たちが稼ぐためには、どうしても百合派とBL派の対立が必要なんだ。邪魔をするのなら、容赦なく叩き潰す!」
そして部下へ振り返り、号令をかける。
「お前ら、ひよってる奴いねえよなあ? 巨大ロボで一気に踏み潰すぞ!」
「オッス!」
ガラケーに似た形状のアイテムを取り出した不良たちは、テンキーを押してコードを入力、さらに口上でも合体コマンドを唱えた。
「我ら、卍帝国の王となれ! 卍合体! 卍・ジルマ・卍・ジンガ!」
フェニックス、ガルーダ、マーメイド、フェアリー、タウロス……出現した五体のモンスターが一つに合体し、帽子を被った魔法使いのような姿のロボットが完成する。背からは翼が生え、手には大きな剣を構えている。見るからに強そうだ。
「完成! 卍キング、ナンバーワン!」
「ど、どうするんだよ、ツカサ⁉︎ あんなでかい奴、倒しようがないぞ!」
「そんなこと言われたって」
あわあわと顔を見合わせる二人を、卍キングが踏み潰そうとする。
「待たせたな、カイリ!」
「もう大丈夫だ、ツカサ!」
そこに三機の戦闘機が現れ、卍キングにビームの集中砲火を浴びせた。さらに、パトカーに似た形状の三台の巨大マシンも駆けつけ、体当たりで卍キングを怯ませる。
「その声は、百合ブルーとBL一号。まさか、例のマシンが完成したのか⁉︎」
「そのまさかだ。こんなこともあろうかと、用意しておいたのさ!」
元々、この巨大マシンは百合派とBL派が互いを潰すための最終兵器として開発を進めていたものだ。だが、戦いが終わった今、マシンは正義のための戦力として生まれ変わったのである!
「カイリ、ツカサ、お前たちに負けて目が覚めたよ。俺たちの百合やBLへの情熱を、こんな不良たちの金儲けに利用されてたまるか!」
「今こそ怪盗と警察、二つのチームの力を合わせるときよ!」
BL二号、百合イエローも叫ぶ。
「……よし。よく分からんが、俺たちも合体して対抗するぞ!」
「ええ。やってやろうじゃない!」
ツカサとカイリは頷き合い、自らもマシンに乗り込んだ。操縦席でレバーを操作し、合体フォーメーションを開始する。戦闘機とマシンが合体して、人型の巨大ロボとなる。
「勝利を奪い取ろうぜ! 完成、百合カイザー!」
「正義を掴み取ろうぜ! 完成、BLカイザー!」
二体のロボが顕現したのを見て、卍キングを操縦しているマイティーたちは動揺し始めた。さっきまでは優勢だったはずなのに、今では何だか逆転されかけている気がする。
「どうするよ、マイティー。二対一になっちまったぞ」
「むしろ燃えてきたぜ。熱いな〜、これ! このままイケイケドンドンだ!」
剣を構え、卍キングが二大ロボに斬りかかった。それをかわし、BLカイザーが左腕のトリガーキャノンを連射。百合カイザーも右腕のガトリング砲をぶっ放し、卍キングに大ダメージを与えた。しかし卍キングも引かず、果敢に剣を振り回す。
百合派とBL派の対立は、一旦終わった。だが今度は、それを裏で操っていた東京卍帝国が敵として立ちはだかった。
マジレ○ジャー改め卍レンジャーと、怪盗と警察の戦いは苛烈を極めている。はたして、勝つのはどちらなのか。そして、卍帝国を変えてしまったという「ウルザード稀咲」とは何者なのか?
まだまだ謎は尽きない。頑張れ、百合レンジャー! 戦え、BLレンジャー!
百合とBLを愛する、すべての人たちのために!
今回、ご迷惑をおかけした作品
・東京リベンジャーズ
・マジレンジャー
・仮面ライダーゼロワン
・ニンニンジャー