「それにしても、これからどうしやしょう。旅費はかさみやすが、もう一度日本へ戻って魔王と戦いやすか?」
「いや、日本のことは日本のヒーローに任せて大丈夫じゃないかな。……あれ以来、カイリたちと定期的に連絡を取っているんだけど、次元四天王という敵幹部を全員撃破するところまで行ったらしい。彼らならきっと、大魔王にも勝てるさ。僕たちはアメリカの平和を守ることに徹しよう」
自然公園をぶらぶらと散歩しながら、二人は今後の展望を語り合っていた。
「ただ、最近はニューヨークの街も平和そのものでね。今日なんか、強盗犯を捕まえようとしたら映画の撮影だった」
「何も起こらないってえのは良いことでやすが、平和と退屈は紙一重なのかもしれやせんねえ」
「でも、油断はできないよ。大体の物事は、『上手くいっている』と思って慢心したときに上手くいかなくなるんだ」
すると突然、二人の背後で爆発音が轟いた。驚いてキンジが飛び退く。
「な、何でやすか⁉」
「見つけたぞ、ロリーニンジャー!」
緑のパワードスーツの上に金のプロテクターを装着した戦士が、爆炎の中をこちらへ近づいてくる。さっきの爆発は、彼が攻撃を行ったことによるもののようだった。公園内の芝生が、広範囲にわたって焼き焦げている。
「あっしに何の用でございやしょう。次元四天王は全滅したと聞いていやすが、また妙なのが現れやしたね」
「俺は次元四天王の意志を継ぐ者、高次元生命体・ブラコ。またの名を『ブラコンレンジャー』だ。ロリーニンジャー、貴様を処刑する!」
言うが早いか、ブラコンレンジャーは笛と短剣が一体化したような形状の武器「妄想剣」を構えて斬りかかってきた。
「貴様のことは監視させてもらっていた。大魔王様の思惑通りに動かぬのなら、もう貴様を見逃しておく道理はない。リボンダーマンもろとも、この俺が地獄に送ってやる!」
「あいにく、ここはあっしの死に場所じゃございやせん!」
息の合った動きで、キンジとピーターは後ろへ跳んでかわした。小高い丘のようになった場所に立ち、二人がポーズを取る。
「たった今、決めたところでございやす。アメリカの平和を守るため、坊ちゃんと一緒に戦うと。――ロリコンチェンジ!」
どこからか取り出したハンバーガーを、キンジが一口齧った。その動作が能力発動のトリガーとなり、カウボーイ風の装飾が施された金色のアーマーが装着される。
同時に、ピーターもリボンダーマンのスーツを装着し終えていた。
「それじゃあ名乗るとしやしょうか!」
一度やってみたかったんでございやす、とキンジは嬉しそうに言ってギター型武器をかき鳴らす。ピーターも頷き、前傾姿勢を取り、片手を地につけて堂々と名乗った。
「おねロリの星! ロリーニンジャー!」
「あるときは、推しと推しを結ぶ赤い糸。またあるときは、悪を縛る赤い罠。天国からの使者、リボンダーマン!」
「忍びなれどもパーリナイ!」
「リボンをつけて返そう。君たちに受けた屈辱をな!」
最後にビシッとブラコンレンジャーを指差して決めると、相手は何やら苛立った様子だった。
「屈辱も何も、俺はまだお前たちに攻撃を仕掛けたばかりだろう。同じ決め台詞を色んな場面で使い回すから、そういう矛盾が生まれるのだ」
「細かいことは気にしやさんな。さあ、行きやすよ!」
ついに、アメリカを守るために二人のヒーローが立ち上がった。ロリーニンジャーとリボンダーマン、そしてブラコンレンジャーが激突する!
「おねマジック!」の電子音声とともに、ロリーニンジャーがソードガンのダイヤルを回して技を放った。なお、リボンダーマンから『初手から必殺技を使う回は大体負けるから要注意』と言われたことは忘れているようだ。
「『ウイニング・おねスター』!」
ソードモードにしたギターを横薙ぎに振り、竜巻とともに斬撃を飛ばす。リボンダーマンは手首から伸ばしたリボンでブラコンレンジャーの足首を縛り、回避不可能な状態に持ち込んだ。
「甘い!」
しかし、ロリーニンジャーの必殺技を受けてもなお、ブラコンレンジャーの鎧には傷一つつかなかった。
「所詮、俺と貴様らでは背負っているものが違う!」
攻撃をものともせずに突進し、近距離から短剣「妄想剣」で斬りつける。かなりの威力に、二人は十メートル以上も吹き飛ばされてしまった。
焦げた芝生に倒れた戦士たちを、ブラコンレンジャーが鼻で笑う。
「お前たちの始末に成功すれば。大魔王様は俺を次元四天王へ昇格して下さる。だが、万が一失敗した場合――タイムリミットの三十時間以内に貴様らを倒せなかった場合、俺は大魔王様自らの手で処刑されることとなる」
分かるか、と緑と金の戦士は吠えた。
「俺は自らの命を賭して戦っている。貴様らのような生温い奴らとは、覚悟が違うのだ!」
「舐められたものでございやすね」
「同感だよ」
「……行きやしょう、ピーター坊ちゃん。このまま奴を出世させたら、ヒーローの名が廃るってもんでございやす!」
「おう!」
二人のヒーローがふらふらと立ち上がる。彼らの闘志は、まだ真っ赤に燃え盛っていた。
やがて体勢を立て直したリボンダーマンとロリーニンジャーが、倒すべき敵をきっと睨みつけた。
「ブラコンレンジャー。確かに君は、タイムリミットを設定することで、自らの死を覚悟して戦いに臨んでいるのかもしれない。でも、命を賭けているのは僕たちも同じだ。ニューヨークの平和を守るため、僕たちは必死に戦っている!」
「それに、あっしらには背負っているものがありやす。ブラコン坊ちゃんのように、勝利に見返りを求めたりはしやせん!」
「……何だと?」
まだ戦う力を残していたことが信じられないのか、ブラコンレンジャーがたじろいだ。
「僕たちは、自らの命を賭けて戦っているだけじゃない。この街に生きる人々、すべての命を背負って戦っているんだ。それに危害を及ぼそうとする悪は、僕たちが絶対に許さない!」
立身出世のために自分の命を危険にさらしているブラコンレンジャーと、市民を守るために命を賭けている二人とでは根本が違うということか。ド正論をぶつけられて、緑の戦士は数秒間だけ口ごもっていた。
「ふ、フン、下らんな。口では何とでも言える。貴様らが何を背負おうが、何のために戦おうが、戦場では力こそ全て。俺の強さには及ばない!」
ブラコンレンジャーは妄想剣を薙ぎ、その刃からビームを放った。
「これで終わりだ、アメリカのヒーローども!」
たちまち、二人の姿は爆発に包まれた。