『ご存知の通り、私の名はウルフ・J・ギンブリー。その名に冠する「ウルフ」、すなわち狼に関する原典の力を、私はすべて行使することができる。これこそが、無貌様より授かった大いなる力。あなたのような俗物では一生かかっても到達しえない領域に、私はいるのですよ』
無貌の配下だったウルフ・J・ギンブリーも、この原典の力を部分的に引き出してはいた。けれども、彼は武器を召喚していただけだ。本来の姿へ変身し、より使いこなしているのは露鬼の方だろう。
「『レーザープール』!」
専用武器「ロシュハスラーロッド」を召喚したシルバーは、それをブレイクモードへと変形。ビリヤードのキューを思わせる形状にし、素早く薙いだ。緑色の光のボードが展開され、ネンクロフィをその中に閉じ込めて動けなくする。
「……クソッ、これじゃあ右手で触れることすらできねえじゃねえかよ。出せ。ここから出せっ!」
「お前のような邪悪は、速攻で葬るに限る。その厄介な能力は使わせない。『破邪露出球』!」
光のボードの上に、クヴァルとの巨大戦でも使用した三つの宝珠を並べるロシュシルバー。ブレイクモードのロッドで、宝珠を力強く突いた。
「――邪気、玉砕」
弾けた三色の宝珠が、勢いよく海賊怪人へ炸裂する。
鎧や服を脱いでいるところをフィリーレンに見られたため、露鬼の性癖のパワーは存分に引き出されている。威力が限界突破した一撃を受け、ネンクロフィとその周囲は大爆発に包まれた。
「て、てめえ……」
しぶとくもまだ生きていた青い怪人は、ふらふらと後ずさる。
「悔しいが、ここは退かせてもらうぜ」
「逃がさん」
が、シルバーの方が一枚上手だった。大ジャンプしてネンクロフィの行く手に回り込むと、さらにもう一度跳ぶ。空中で前転し、サーベルモードにしたロシュハスラーロッドで、強力な一閃を見舞った。
「『銀狼露出斬り』!」
「ぐあああああっ⁉」
右腕を切断され、あまりの痛みにのたうち回る海賊怪人。六つの眼には、涙さえ浮かべている。
もはや、右手で妙な能力を使うことは物理的にできなくなってしまった。完全に勝機を失ったネンクロフィは、血が噴き出ている腕を押さえて、無様にも命乞いを始めた。
「頼む、命だけは。命だけは助けてくれ!」
彼の前に、フィリーレンが無表情で進み出る。
「痛いでしょ。苦しいでしょ。」
左手にはめた指輪を、腰に現れたドライバーへかざした。
「君が今まで殺してきた超次元生命体も、同じように感じていたはずだよ。」
『エクスプロージョン・ナウ!』
発生した爆発の中へ、容赦なく叩き込まれるネンクロフィ。発動速度が上がったフィリーレンの魔法から、逃れる術はなかった。
とどめにもう一発魔法をお見舞いしてやろうかと思った折、彼方から黒い光線が飛来する。
「――『超次元生命体を殺す魔法』!」
遅れて駆けつけたクヴァルの放った必殺の一撃が、怪人の心臓を貫いた。彼の魔法は千年前のものだが、防御術式さえ使われなければ、今でもそこそこの威力の「一般攻撃魔法」として通用するのだ。
今度こそ本当に、ネンクロフィは息絶えた。
「来るのが遅いよ。」
「すみません。酔いが覚めるのに、少々時間がかかりまして」
フィリーレンに責められ、メカ怪人は頭を掻いた。
「まあでも、とどめは私が差しましたから、戦利品としてネンクロフィの腕を頂けないでしょうか?」
「図々しいなこいつ……」
美味しいところだけ持って行きやがって、と露鬼は呆れていた。今はもう、いつもの黒い鎧姿に戻っている。
「腕なんか貰って、どうするつもりだ?」
「私の右腕に移植します。ほら、私の体ってハーフメカニカルですから、その辺は割と自由にできるんです。それにネンクロフィの能力を受け継ぐことができれば、このパーティーの戦力は大幅アップしますよ」
確かに、クヴァルがフィリーレンや露鬼の記憶を呼んでコピー体をバンバン召喚できるようになれば、ほぼ無限の兵力を得たも同じだ。とても魅力的な提案だけれど、懸念点もある。
「ネンクロフィの異常性癖も受け継いでしまうかもしれないよ。大丈夫なの。」
「何、飼い慣らしてみせますよ。私は元々ノーマル性癖でしたから、死体嗜好症でも何でも、多少持っていた方が便利かもしれない」
するとネンクロフィの腕が光に包まれ、クヴァルの右手と融合した。新しくなった右手は、前よりも青みがかっている。
かくして、三人は初めて一緒に戦い、悪を討った。戦いの後は村人たちから感謝され、たくさん食事を振る舞われた。
性癖の相性が抜群だと判明した、フィリーレンと露鬼。ネンクロフィの腕を移植して、地味にパワーアップを遂げたクヴァル。
彼らの旅は、これからも続く。続くったら、続く!