百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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9 今日の対戦は明日のレジェンド

 店を出た一行は、しばしあてもなく街をぶらついた。すぐに超次元界へ帰るのも味気なく感じるし、クヴァルや露鬼としては落ち込んでいるフィリーレンを励ましたいところだったからである。

 なお、ぶらついている間も人間たちから注目を浴びまくった。

 

 

「せっかく人間界へ来たんだ。何か美味いものでも食って帰ろう」

「魔法とは関係なかったですが、なかなか綺麗なイラストのカードたちだったではないですか。お土産に、何枚か買って帰っても良かったのでは?」

 口々に言う彼らを遮って、フィリーレンは哀愁漂う面持ちでかぶりを振った。

「二人ともありがとう。でも、よく考えると私たち、人間界で使えるお金を持っていないんだよね。」

 

 さらにしょんぼりしてしまったエルフを見て、露鬼とクヴァルはどちらからともなく「……帰ろうか」と言った。

 

 

 早々に引き上げてしまったので、フィリーレン一行は知らなかった。ホビーオンの店内奥のフリー対戦スペースでは、ちょうどゼロカードの公式大会が開催されていたことを。

 インチキをする神の親衛隊がいなくなったことで、プレイヤーたちは存分に腕を振るえるようになったのである。

 

 

「マジックカード『聖獣招待/ガンガン・ギギン』! 手札から『聖獣・ライノス』『聖獣・フェニックス』を出し、デッキにダイレクトアタック。『ロスト4』、『ロスト3』を発動するます!」

 

 今日も今日とて、ムーヴォは連勝していた。少し離れたところから、ツカサとカイリも応援している。

 

「なかなかやるなァ、嬢ちゃん。だが、おじさんも負けないぜ!」

 

 対戦相手は、立派な髭を生やした赤ら顔の親父だった。真っ昼間だというのに、酒を飲んでいるのだろうか。シャツには、ガレオン船のイラストがプリントされている。

 

 

「俺は『商人ビズネイラ』を場に出し、効果発動だ。相手のモンスター2体を選び、次の俺のターン開始時まで攻撃不可にする。もちろん、選ぶのは『聖獣・ライノス』と『聖獣・フェニックス』だぜ!」

「うむむむ……」

「まだまだ行くぞ。『女帝イリエース』、『覇王バットパス』を召喚。イリエースの効果で、墓地にあるモンスターを3枚選び、その合計値をイリエース自身のパワーにプラスするぜ! さらにバットパスの効果で、デッキの上から3枚を捨てる代わりに1ターンの間、俺のモンスターすべてのパワーを倍にする!」

 

 パワーを盛りまくる脳筋戦術を披露した親父は、ムーヴォのモンスターたちを攻撃しにかかった。次々にやられていくライノスやフェニックスたち。

 

 

「……ねえ、今、ビズネイラを出す意味あったの??」

 

 観戦していたツカサは、カイリへ囁いた。

 

「どうせイリエースとバットパスの攻撃で破壊するのなら、わざわざ攻撃不可にして動けなくする必要なくない?」

「うん、それは俺も思った。破壊か攻撃不可か、どっちかでいいよな。使わなかった方のカードは、次の自分のターン用に温存しとけばいいし。あの親父下手くそすぎだろ」

 

 

 そんな折、店のカウンターの方が何やら騒がしくなった。二人が目を向けると、白い衣装に身を包んだ銀髪ツインテールのエルフが、店員に話しかけている。

 彼女の傍らには、全身を黒い鎧で覆った剣士と、発光する電球型の頭部を持つメカ怪人が立っていた。

 

「なあ、向こうにやばいコスプレイヤーの集団がいるんだけど」

「明らかに関わったらいけない系の人たちじゃない。見ちゃダメよ、見ちゃ」

 

 ムーヴォの試合に集中しようとした二人だったが、ふと冷静になる。

 

「……待てよ。俺の今までの経験を総合するに、ああいうやばい格好の奴って大体超次元生命体か何かだった気がしてきたぞ?」

「またしても中古屋に現れるとは、超次元ライダー・ジャンクの親戚かもしれないわ。油断しないで」

「念のため、尾けてみるか」

「そうね」

 

 激戦を繰り広げている愛娘から視線を外し、カイリとツカサは忍び足で移動を開始した。店から出て行くフィリーレン一行を、こっそり尾行する。

 

 

 人間界の通貨を用意してくるのを忘れていたフィリーレンらは、いよいよやることがない。ゲートを開いて早く帰ろうということになっていた。

 何回か扉を生成しては消していると、さっそく背の高い木が向こうに見えた。クヴァルが魔法で成長させた樹木に間違いないと、フィリーレンは思った。

 

「もう繋がっちゃった。早いね。」

「いや待て、似たような高い木が何本もあるぞ」

 

 扉を抜けようとした彼女を、露鬼が制止する。彼の言う通りだった。目を凝らすと、遥か遠く霧の向こうにも、異常なほど高い木々がたくさん並んでいる。

 

 

「まさか、クヴァルの真似をして、他の魔法系の原典所持者たちがこぞって木を育てたのか⁉ 魔力の無駄遣いというか、何というか……」

「これでは、どれが私の育てた木か分からないではありませんか」

 

 呆れている二人をよそに、エルフの魔法使いは一本の木をすっと指差した。

 

「――私には分かるよ。あの一番高いやつが、クヴァルの育てた木だ。」

「なぜ分かる?」

 

 露鬼が不思議そうに問う。

 

 

「千年前のこととはいえ、クヴァルは実力派の魔法使いとして名が通っていたんだ。そこら辺の新米魔法使いよりも、高い木を育てたに決まっているよ。」

 自信満々で、フィリーレンは我先にとゲートをくぐった。

「仲間になったばかりの私のことを、そこまで高く評価してくれていたなんて……! フィリーレン、少し見直しましたよ」

 

 感極まったのか、目元を押さえながらメカ怪人もそれに続いた。

 

「フン、どうだか」

 

 やや遅れて、狼の剣士も扉を抜ける。桃色のゲートは閉じ、間もなく消滅した。

 

 

「今あの人たち、ゲートをくぐったわよね……?」

 

 尾行を続けていた二人が、ぽかんと口を開けている。

 

「やっぱり、やばいコスプレイヤーじゃなくて超次元生命体だったか。奴ら、一体何をしに来たんだ? 観光??」

「そんなことある??」

 

 観光目的で、中古のカード屋さんに来る超次元生命体がどこにいるというのだ。いや、まあ、対物性愛を持つ超次元ライダー・ジャンクみたいなのがまた湧かないとも限らないけども。

 

 

「初めて日本観光をするとなったら、東京、大阪、京都辺りがメジャーじゃない? 普通、こんな郊外のカードショップに来るかしら」

「おい、名古屋も入れてあげろよ。裕介と美明日が聞いたら怒るぜ」

「話逸らさないでくれる⁉」

 

 名古屋を入れるかどうかはともかく、とツカサは腕組みをした。なお、オメガ珈琲の本店に行ってみたい気はしなくもない。

 

「少なくとも、侵略目的ではなさそうね。何だったのかしら」

 

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