「問答無用!」
分譲ブラックは斧型の武器、「分譲チェンジアックス」を召喚して斬りかかってきた。咄嗟に左右へ跳び、難を逃れる二人。
「仕方ねえ。行くぞ、美明日!」
「正当防衛というわけね。了解よ!」
裕介が携帯型アイテムを取り出し、美明日は腰のベルトへスタンプを押印する。
「インストール! 『オメガ珈琲シルバー』!」
『パーフェクト・アップ! 超次元ライダー・ネトルティ来部!』
銀色の戦士と、メタリックホワイトにところどころ黒のラインが入った戦士に変わった。二人を見て、分譲ブラックが怯んだように後ずさる。
「ば、馬鹿な。百合・BLレンジャーのうち、よりによって名古屋在住の奴らだと⁉ なぜこんなところに?」
「だから家探しに来たって言ってんだろうが⁉ 一旦話聞けよお前」
裕介は簡潔に話した。仕事の都合で、神奈川の湘南エリアへ転勤になりそうなこと。そのため、恋人と二人で住めそうな分譲賃貸を探していることを。
「ふむ、なるほど。事情は分かった。許すか許さないかは別として」
「めんどくせえ奴だな……。で、お前は何者なんだよ。虚無英雄会の残党か?」
「フッフッフ。あんな奴らと一緒にするな。俺は元無貌支持派の超次元生命体だ」
分譲ブラックは胸を張った。
無貌支持派の第一~五位は百合・BLレンジャーやルーカスが、六~十位はピーターとお菊に倒されている。が、逆に言えば、十位より下の序列の者はまだ地味に生き残っていたというわけだった。
もっとも、六~十位がリボンズ&リボンダーマン(あの時点では、ピーターはまだオーバーリボンズへの変身能力を得ていない)のタッグにあっさり敗れていることを考えると、十位以下が大した脅威にならなさそうなのは明らかなのだけども。
「ちなみに序列は?」
「聞いて驚け! ズバリ、第四十八位だ!!」
「悪い意味で驚いたぜ⁉ 思ったより低いなオイ」
なお、分譲ブラックが使っている原典がシリーズ第四十八作目であることは、序列と関係あるのかどうか不明である。
「それで、何で元無貌支持派がこんなところで不動産屋をやってるんだよ」
「実は、ビッグ・ファーストがルーカスに倒されたのにショックを受けてな。一時的に戦意喪失してしまったのだ。適当にゲートを開き、たまたま繋がった湘南エリアへふらっとやって来た」
まあ、気持ちは分からなくもない。組織のトップでさえも敵わない強大な敵が現れたとなれば、分譲ブラックのような下級構成員の士気は間違いなく下がる。このまま組織に尽くし、必死に戦ったとしても、犬死にするのがオチだと悟るからだ。
「そうしたら、意外とこの街が気に入ってしまってな。人間界の珈琲という飲み物にもはまったので、自家焙煎珈琲の店を営みながら住み着いている」
「もしかして、マップのストリートビューに映ってたのってお前の店だったりする……?」
「ストリートビューのことは知らんが、店の経営が軌道に乗って以来、不動産の管理にも手を出している。不動産の中でも特に、通常の賃貸とは一線を画す分譲賃貸に惚れ込んだ。今では、このエリアの分譲賃貸物件は全部、俺の支配下というわけだ!」
野望のスケールが大きいのか小さいのか分かりづらい奴だった。要するに、こいつはカフェの経営と不動産業をやっている自営業主で、世界征服みたいな大それたことを考えてはいない。目的は単なる事業拡大に過ぎず、自分のテリトリーに土足で踏み込む輩には容赦しない。
裕介は美明日に「どうする?」と囁いた。
「少なくとも、むやみやたらに人へ危害を加えるタイプではなさそうだぜ。人間社会にも馴染んでいるように見える。倒すべきかどうか悩むな」
「けど、さっきは私たちを攻撃しようとしたじゃない。問答無用だとか言って」
「今思うと、あれは俺も悪かった。電話がダメならメールでもファックスでも何でも、他の連絡手段を試した方が良かったんじゃねえか」
「あのね、早川君。『正当な理由があれば問答無用で人を攻撃して良い』と思ってる時点で、そいつは普通じゃないのよ」
「正論すぎる⁉」
腑抜けになっても、元無貌支持派ということか。
小声で相談している裕介をビシッと指差し、分譲ブラックは「おい、そこのお前!」と叫んだ。
「俺の自己紹介はこれくらいで良いだろう。アポイントメントなしの訪問者は、誰であろうが叩き潰す。今までだってそうしてきた。特にそっちの、オメガ珈琲の回し者は、徹底的に痛めつけてやる!」
これまでにも同様の被害者がいるのか。ますます許せない。
それにしても、なぜ裕介を目の仇にするのか。