「口ほどにもない奴らよ」
立ち去りかけたブラコンレンジャーだったが、何かを直感的に悟ったのか、足を止めた。恐る恐る振り返り、爆風の中に目を凝らす。
黒い風が晴れた先に見えたのは、ロリーニンジャーとリボンダーマンの亡骸ではなかった。爆発の瞬間、二人を守った者たちがいたのである。
「ば、馬鹿な。ハットマンとチョーカーだと⁉」
黒い仮面と帽子を纏った男が、左に。道化師のようなメイクを施した白塗りの顔に、首筋にチョーカーの目立つ男が右に立ち、放たれたビームを弾き飛ばしたのだった。
「アメイジング! まさか実在していたなんて。今度は、映画の俳優さんじゃないですよね?」
テンション高めのリボンダーマンの問いに、ハットマンが頷く。
「ああ。本物さ」
「チョーカーさんは悪役だと思ってやしたが、なぜ助けてくれたんでございやしょう?」
「この街を牛耳るのは僕だ。だから、ブラコン野郎の好きにはさせない。今回だけは、君たちと手を組むことにしたってわけだ」
尋ねたロリーニンジャーの方を見ようともせず、チョーカーは実に美味そうに煙草を吸った。
「こいつには、ちょっとした温もりもハグも与えない。全力で潰す」
「何人が束になろうが、ただの人間が我ら高次元生命体に勝てると思うな!」
敵が増えても諦めるつもりはないようで、ブラコンレンジャーは両手からエネルギー弾を発射してきた。四人はバラバラの方向へ跳んで回避し、反撃に出る。
チョーカーが機関銃をぶっ放し、ロリーニンジャーが「ライトニング・ロリスター」でソードガンから雷撃を撃ち出す。さらにリボンダーマンはリボンで相手の拘束を試み、ハットマンは敵に接近してパンチを繰り出した。
「無駄だ。こんなこともあろうかと、アメコミ系ヒーローの能力はすべて記憶済み。攻略法は頭に入っている!」
だが、そのことごとくをブラコンレンジャーは耐え凌いでのけた。さほど怯んだ素振りも見せずに拘束を解き、妄想剣でハットマンに斬りつけ、チョーカーにビームをお見舞いした。
「くっ」
「こいつ、意外とやるね」
二人は一旦後退した。先輩方を庇うべく、ロリーニンジャーとリボンダーマンが前に出る。
四人で総攻撃を仕掛けても、ブラコンレンジャーには打撃を与えられていなかった。さすが、次元四天王の座を狙っているだけのことはある。
だが、感心している場合ではない。このままでは全滅である。
「おい」
不意に、チョーカーがロリーニンジャーへ振り向いた。
「リボンダーマンの噂は時々聞いていたが、君のことは知らなかった。君は何者だ?」
「申し遅れやした。あっしはおねロリの星・ロリーニンジャー! 百合の中でも、とりわけおねロリを愛してやまない男でございやす!」
「なるほど、よく分からない。要するに、新時代の――ニューエイジのヒーローというわけだな?」
百合を愛するという点において、ロリーニンジャーは日本の百合レンジャーの亜種のような存在である。百合レンジャーが結成されたのは割と最近のことだし、新時代といえば新時代かもしれない。
「僕とハットマンは、君よりも長くアメリカで活躍している。年齢こそ若いが、リボンダーマンも既に一人前のヒーローとして活躍中だ。……ブラコン野郎は、『アメコミ系ヒーローの能力はすべて記憶済み』と言っていた。ニューエイジの君なら、奴の意表を突いて勝機をつかめるかもしれない」
道化師衣装の袖から、チョーカーは一枚のメダルを取り出した。
「ニューエイジ、これを使え! 僕の力を君に託す!」
「……え、えーと、このメダルは何でございやしょう?」
「いいから早く!」
続けてバックルを取り出したチョーカーは、それをロリーニンジャーの腰に装着させた。バックルの右端に自身のメダルを装填し、仲間たちをも促す。
「さあ、君たちもロリーニンジャーへ力を集中させるんだ!」
「お、おう」
チョーカー以外は皆困惑気味だったが、他に打開策があるわけでもないので彼に従う。渡されたメダルに力を注入して、ロリーニンジャーのバックルへと装填した。
「あとは変身するだけだ。これでバックル内のメダルをスキャンしてくれ!」
「わ、分かりやした」
スキャナーでメダルを読み込むと、刹那、ロリーニンジャーの体が光に包まれた。三人の仲間の力を一時的に預かり、おねロリの戦士はさらなるパワーアップを遂げた。
『リボン! 帽子! チョーカー! リ・ボ・チ! リボチ、リ・ボ・チ!』
と同時に、バックルから変な歌が流れた。ロリーニンジャーの頭部に黒い帽子が、首にチョーカーが装着され、両手両足を赤いリボンが覆っていく。
「何だか、にぎやかな変身プロセスでございやすねね」
「歌は気にしないでくれ」
それより、とチョーカーは微笑した。もっとも、常に奇妙な笑顔を浮かべているせいで、表情の変化はごく僅かなものだったが。
「ブラコン野郎に、生よりも硬貨(高価)な死を与えてやれ」
キンジには何が何だか分からなかったが、おそらくこういうことだ。ジョークを言う際に、あるいは戦闘を行う際に、チョーカーは日頃からコイン型のアイテムを使っていた。そのコインは実は普通の硬貨ではなく、自分の能力を他人に移し替えるような、特殊な機能を持っていたのだろう。
ブラコンレンジャー襲来でアメリカ全体に危機が迫る中、チョーカーはコイン型アイテムで同志に力を貸すことを決めたのだ。
ハットマン、チョーカー、リボンダーマン。三人の力は今ロリーニンジャーに宿り、四人の力を結集させた奇跡のフォームチェンジが完了したのである。
けれども、それは諸刃の剣。ロリーニンジャーに力を集中させた状態で彼が倒されれば、他の三人もやられる。アメリカの未来は、キンジの肩にかかっていた。
「面白い。一人ずつ倒す手間が省けたというものだ!」
高らかに笑い、ブラコンレンジャーが短剣を手に向かってくる。対して、ロリーニンジャーは片手をさっと振った。手首から伸びたリボンが敵の足首を縛り、自由を奪う。
ブラコンレンジャーはすぐさまリボンを引きちぎって逃れようとしたが、鋼鉄以上の強度を誇るリボンはびくともしない。
「あり得ない。さっきまでとはまるで違う」
「当然でございやす。全員が共倒れになるリスクを背負った反面、あっしらが団結したパワーは段違い! 楽して助かる命がないのは、どこも一緒でやすぜ!」
隙を逃さず、ロリーニンジャーが攻勢に出た。ソードガンとチョーカーの機関銃を構え、二丁の銃が火を噴く。無数の弾丸が命中し、ついにブラコンレンジャーの鎧に亀裂を走らせた。
「ぐああっ。こ、こうなれば破れかぶれ……」
よろめきかけた体に鞭打ち、緑と金の戦士が再び突進する。
「どのみち、貴様らを倒せなければ俺の命はない。接近戦に持ち込み、たとえ刺し違えてでも仕留めてやる!」
すると、ロリーニンジャーは意外な行動に出た。両手に持った銃を放り捨て、ただ拳のみを武器としてブラコンレンジャーを迎え撃ったのだ。
「手が届くのに、手を伸ばさなかったら死ぬほど後悔する。それが嫌だから、手を伸ばすんでございやす! ヒーハー!」
次に発動するのは、ハットマンの優れた身体能力。右、左とテンポよくパンチの嵐を叩き込み、ブラコンレンジャーを殴り飛ばした。
「ふ、ふざけるな。『手を伸ばす』って、普通は助けるって意味だろう。何で殴るんだよ⁉」
「答えは簡単。ブラコン坊ちゃんを成敗して、この街の人々を助けるためでございやしょう。――来い、『忍者激推し刀』!」
とどめの一撃を放つべく、ロリーニンジャーは真っ赤な刀身を持つ剣を虚空から召喚した。刀に全エネルギーを集中させ、稲妻のようなオーラを纏う。
「これで終わりにしやしょう。『激推し・ライトニングおねスター』!」
忍者激推し刀を天に掲げ、落雷を降り注がせる。電撃で怯んだブラコンレンジャーへ高速移動で接近し、ロリーニンジャーはすれ違いざまに一太刀を浴びせた。
「……だ、大魔王様、万歳~!」
断末魔の叫びを上げて、高次元生命体が大爆発の中に散っていく。炎をバックに、豪快にギターをかき鳴らすキンジの姿は、確かにニューエイジの戦士のようだった。
「え、待って、そんなに強力な必殺武器を隠してたの? 僕たちがメダルで力を貸し与えたのは何だったんだ……」
「最初からその剣を使っておけば、全部あっさり解決していたのでは……?」
呆然としているチョーカーとリボンダーマンに、キンジは変身を解いて照れくさそうに笑った。
「いやあ、申し訳ございやせん。かねてから、ピーター坊ちゃんが百合・BLレンジャーに与えたという『推し推し砲』を接近戦用に改造できないかと考えてやしてね。刀型の武器としてデザインしたものを大魔王討伐のために持っていたんでやすが、あっしとしたことが、今の今まで使うのを忘れておりやした!」
「ニューエイジの戦士らしい、型破りだが面白い発想だな。気に入った」
ハットマンが笑みを浮かべた。
「これからも力を合わせて戦おう。よろしくな、ロリーニンジャー」
「こちらこそ、よろしくお願いしやす!」
今回、ご迷惑をおかけした作品
・仮面ライダーオーズ