百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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15 ポンコツで良いじゃないか

「何なんだよお前。まさか、オメガ珈琲のアンチなのか?」

「そのまさかだ!」

 

 感情が高ぶったらしく、タイヤ人間はまくし立てた。

 

「俺は名前の通り、『ブラック』コーヒーを愛している。珈琲はブラックしか勝たんとさえ思っている。カフェラテやらウインナーコーヒーやらその他諸々、色々なドリンクを提供するオメガ珈琲は、俺に言わせれば邪道だ!」

「その理論でいくと、世の中のほとんどのカフェはアウトだろ……とりあえず、ス○バとド○ールとル○アールとサ○マルクカフェと、ありとあらゆる喫茶店に謝った方がいいぞ?」

「だが俺は謝らない。謝罪するようなことなどした覚えがないし、許しを請う気などない!」

 

 呆れた。何て頑固な奴だ。

 

 

「とにかく、俺はオメガ珈琲アンチだ。お前らを倒すついでに、オメガ珈琲シルバーを会社の宣伝役の座から引きずり下ろしてやる。大体、シルバーとかいう中途半端な色で、喫茶店の看板を背負うんじゃない! 珈琲と言えばブラックだろう!」

「ンなこと知らねえよ。気づいたら銀色の格好に変身してたんだから仕方ねえだろうが」

「黙れ!」

 

 とにかく人の話を聞かない超次元生命体だった。分譲ブラックは斧を振り上げ、裕介へ突進した。対するシルバーは、珈琲ブレイザーで迎え撃つ。

 

「俺のスピード攻撃に、オメガ珈琲の回し者ごときがついてこれるかな?」

 

 

 ブラックの両肩や脚部に、車のタイヤ状のエフェクトが出現した。同時にそれは、爆発的な加速力を生む。

 スピード任せで勢いよく放たれた斬撃を、オメガ珈琲シルバーはかろうじてブレイザーの刃で受け止めた。しかし衝撃は殺し切れず、不動産屋の入口ドアを突き破って外へ飛び出す。美明日も後を追った。

 

「どうだ、オメガ珈琲シルバー。俺はノーマル性癖しか持っていないし、序列も第四十八位で微妙だが、攻撃の速さだけは誰にも負けん!」

「てめえ……」

 

 銀のマスクの下で、裕介は分譲ブラックを睨みつけた。

 

「舐めてんのか?」

「……何だと?」

 

 

 斧と剣が激しくぶつかり合い、火花を散らしている。タイヤ状のエフェクトによって推進力が加わっている分、形勢はブラック有利なはず。にもかかわらず、シルバーは啖呵を切ってみせた。

 

「てめえは今、俺と互角にやり合えているつもりかもしれねえが、俺はまだ『BANG・解』していない。通常フォームのまま出方を窺ってる奴を追い詰めたからって、あまり調子に乗ってもらっちゃ困るぜ」

「な、何を言うか!」

 

 動揺を押し隠すように、分譲ブラックは斧へさらに力を込めた。が、今度は裕介の方が早かった。珈琲サイブレードを召喚した彼は、「珈珈弾」を放って分譲ブラックを後退させたのだった。

 

 

「――それと、もう一つ。てめえはクソみたいな理由でオメガ珈琲を憎むあまり、俺の相方の存在を完全に忘れていたよな。たぶん、それが敗因になるぜ」

「おわっ⁉」

 

 いつの間にか、ブラックの背後へ回り込んでいたらしい。

 ネトルティ来部の足元から闇のオーラが溢れ、タイヤ人間へと伸びた。闇がアーマーへ触れるやいなや、ネトルのNTR性癖の効果で精神干渉が始まる。

 

「私、最近のマイブームはウインナーコーヒーなの。ネトルはロイヤルミルクティーも好きみたい。悪いけど、ブラックコーヒー信者のあなたの言い分には賛同できないわ」

 

 

 体の自由を奪われ、硬直した分譲ブラック。隙だらけになった彼へ、裕介は光弾を撃ち込みながら接近した。

 

「『ブレイザー・珈琲インパクト』!」

 

 距離を詰めるとともに、ソードモードへ変形させた珈琲ブレイザーで袈裟懸けに一閃する。タイヤ人間は悲鳴を上げて吹き飛ばされた。

 

「……お、おのれ~。人間風情が、この俺の趣味嗜好をとやかく言うな! 所詮人間など、超次元生命体の足元にも及ばない脆弱な種族のくせに!」

 

 なおもぶつくさ言いながら立ち上がろうとする悪を前に、二人の若い戦士は並び立った。目で頷き合い、同時に剣を掲げる。

 

 

「『BANG・解』。『喫茶斬月』!」

「『大紅蓮NTR丸』!」

 

 珈琲サイブレードの刃が、漆黒に染まる。ネトルティ来部の背に、氷でできた竜の翼が備わった。

 

「確かに、俺たち人間の寿命は短い。だがたとえ死んでも、人の言葉も願いも勇気も、残った者の中で生きている。お前に見下される覚えはない!」

「分譲ブラック。自分勝手な考えに基づいて人々へ暴力を振るうあなたを、許すわけにはいかないわ。あなたに慈悲は与えない!」

 

 美明日がNTRブレードを振るうと、氷柱が撃ち出された。分譲ブラックの手足に命中すると同時に大きな氷の塊へ変化し、身動きを取れなくする。

 

 

「ま、まだだ!」

 

 渾身の力を振り絞り、氷の拘束を引きちぎったタイヤ人間。斧に付いているボタンを連打し、必殺技を発動した。

 

「こんなところで終わってたまるか。俺はいずれ、神奈川全土の分譲賃貸を支配するのだ!」

『家賃爆上げクラッシュ!』

 

 光を帯びて眩しく輝いている斧を振り回し、分譲ブラックは猛スピードで突進した。足にタイヤ状エフェクトを発生させ、レーシングカーのごとき速さで向かってくる。

 

 

「分譲賃貸ってのは、家賃が高めなんだろ。お前みたいな奴に、これ以上値上げされたらたまらねえんだよ。『オメガ天衝』!」

「湘南の不動産は、私たちが守る!」

『ネトルティ・パーフェクトフィナーレ!』 

 

 シルバーの放った黒く巨大な斬撃が、ブラックを必殺技を真正面から打ち破って炸裂する。間髪入れず、破壊エネルギーを纏ったネトルティ来部の跳び蹴りが決まった。「BANG・解」で出現した氷の翼と、元々備わっているマントとを広げ、分譲ブラックを凌ぐ速度でライダーキックを浴びせる。

 

 

「こ、今回はあっさりやられたが、やるときはやる俺なんだぜ~⁉ 懲りないんだぜ、めげないんだぜ! ポンコツで良いじゃないか!」

 

 全身のアーマーからスパークをまき散らしながら、分譲ブラックは負け惜しみを言って大爆発した。

 

 

 変身解除した裕介と美明日は、やれやれと顔を見合わせた。

 

「……よく考えると、初めての同棲でいきなり分譲賃貸はハードル高かったかもしれないわね。まずは普通の賃貸で探してみる?」

 

「そうだな。家賃だって安いに越したことはねえ。高い防音物件に住んでても、結局は住人の質次第だったりするしな」

 

 二人は苦笑し、当初の方針をちょっと変えつつ、家探しを続けたのだった。

 

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