一応補足すると、フィリーレンの説明には少しばかりずるい部分がある。というのも、フィリーレンが戦ったという「超次元界の平和を乱す者」が、この場にいるクヴァル自身だったことについては触れていないからだ。しかし、仮にそれを正直に話したとしてもますます信用してもらえなくなるだけだったろうし、早く信頼を得るための方法としては妥当だろう。
クヴァルもそうしたフィリーレンの意図を察し、お菊のコピーが何か余計なことを言う前にさっと消滅させたのである。
はたしてカイリたちは顔を見合わせ、皆口々に「そういうことなら大丈夫か」というような趣旨のことを呟いた。
「お菊さんたちに会ったら、よろしく伝えといてくれよな」
「任せといて。」
晴れて百合・BLレンジャーから信頼されたフィリーレン一行は、ようやくゲート生成を再開。やがてバオバブの木のすぐ近くに繋がり、手を振って扉をくぐる。
「ありがとう。またね。」
終始、三人は笑顔だった。
「涙の別れなんて、私たちには似合わない。だって、また会ったときに恥ずかしいからね。」
「何なの、それは??」
さっき出会ったばかりなのに、やけに大げさな別れの挨拶である。ツカサは首を傾げた。
ゲートが閉じ、完全に人間界から遮断されたのを確認してから、狼の剣士は大きく息を吐き出した。
「あとは、クヴァルが改心したことをレジスタンスの連中が認めてくれるかどうかだな。お菊って奴は、錯乱していたときのクヴァルの顔を見ているんだろう?」
「そうだね。もし危なくなったら、最悪、私が認識阻害系の魔法を使ってその場を誤魔化すよ。」
レジスタンスへ加入したいというのは、あくまでフィリーレン個人の希望だ。露鬼は暇を持て余して彼女の護衛を引き受けただけだし、クヴァルはゼニスを倒した者たちに会ってゼニスの死を受け入れたいだけ。つまり、クヴァルは必ずしもレジスタンスへ素顔を晒す必要はないのだった。
「朱に交われば赤くなる魔法」以外にも、認識阻害の魔法は色々ある。豊富なコレクションを持つフィリーレンにはお茶の子さいさいだ。
「私のせいで気を遣わせてしまって、何だか申し訳ない」
しおらしくなったメカ怪人を、エルフは「何言ってるの。」と励ました。
「クヴァルの能力がなければ、私たちはレジスタンスの拠点の場所を突き止められなかった。この三人のうち誰か一人でも欠けたら、私たちの旅は目的地へ辿り着けないんだよ」
「そう言っていただけるとありがたいですね」
ふと、クヴァルは視線を自分の右腕へ落とす。
「ネンクロフィの腕。千年前にこの力でコピー兵を大量に出せていれば、あるいはゼニスと互角にやり合えたかもしれない……と考えていましたが、案外、聞き込みに役立てた方が便利かもしれません。今回のように」
そして杖を振り、眼前のバオバブの木を消した。
「さっき会った人間たち、百合・BLレンジャーと言いましたか。互いに助け合って一つの目標を達成するという意味では、私たちも何だか『戦隊』のようですね」
「おう……と言いたいところだが、クヴァルは怪人面だし、フィリーレンに至っては変身ヒーローっぽい姿になったところを見たことがないぜ」
三日月型の大剣を肩に担ぎ、露鬼が笑う。その気になれば鎧を脱ぎ、ロシュシルバーへ変身できるゆえの発言だった。なお、本人は鎧の姿の方が気に入っているらしい。
「ふふん。私だって、変身しようと思えばできるんだよ。」
『ドライバーオン・ナウ!』
エルフはむふーと笑み、右手に指輪を装着した。指輪のパワーで、手の形を模したドライバーを腰に出現させ、そこに指輪をかざす。
『スコポフィリ・タッチヘンシン♪ スコポフィリ・タッチヘンシン♪』
「変身。」
『チェンジ・ナウ!』
輝きに包まれて変身を遂げようとした彼女を、二人は慌てて「変身待機音が絶妙にダサいから、やっぱり変身しないでくれ!!」と止めにかかった。
かくして、フィリーレン一行はついにレジスタンスの拠点の場所を掴んだ。お菊やダレンは、彼らと合流したときどんなリアクションを示すのだろうか。
それはまた、別のお話。奇妙な三人の旅は、まだまだ続く。