フィリーレンとクヴァルは飛行魔法を使って、露鬼は召喚した巨大ロボに乗って、超次元界中央部へ向かった。無論、レジスタンス組織「イーシュ・バール」の拠点へ辿り着くためである。
背の低い草木が生い茂る中、ぽつりぽつりとテントが見えてきた。この付近で野営しているのだろう。
「……な、何だあ⁉」
狼、ワニ、ハンマーヘッドシャーク型モンスター三体が合体した露鬼のロボ、「ロシュハンター」を見て、レジスタンス構成員は慌てた。
「敵襲か?」
「ロボの肩の辺りに、エルフと怪人が浮かんでるぞ。奴らも仲間のようだ」
「――まあ、落ち着け。俺たちに敵意はない」
ロシュハンターを合体解除した露鬼が、操縦部から飛び降りる。フィリーレン、クヴァルも徐々に高度を下げ、大地を踏みしめた。
「ここはレジスタンスの拠点で合っているか? 連れがレジスタンスに加入したいというので、はるばる連れてきたんだが」
「合っている。上に連絡を取るから、少し待ってくれ」
男たちのうち一人が頷き、通信機に向かって早口で語りかけた。一分もしないうちに貴族専用のゲートが開き、そこからダレンとお菊が現れる。
「あら、あなたは」
フィリーレンと面識のあるお菊は、目を見開いた。
「久しぶりだね。レジスタンスに入りたくなったから、追いかけてきたよ。」
エルフの魔法使いが微笑む。
「嬉しいわ! それで、ええと、そちらの方々は……?」
「俺は露鬼。今はフィリーレンの護衛役をしている」
「私はクヴァ……じゃなくて、ヴァルクです。単なる付き添いですが、どうぞよろしく」
危うく本名を言いそうになって、クヴァルはわざとらしく咳き込んだ。
彼は以前、錯乱して暴れたところをお菊に一瞬見られている。顔が割れている以上、バレたら面倒な事態に発展しかねない。そこで今回は「クヴァル」を並び変えただけの偽名「ヴァルク」を使い、またフィリーレンに認識阻害の魔法をかけてもらって、外見を誤魔化している。今のクヴァルは、レジスタンスの者たちからは眼鏡をかけた温厚そうな僧侶に見えているはずだ。
「なるほどね」
和服美人は腕組みをした。
「気持ちは嬉しいんだけど、レジスタンスには誰でも入れるわけじゃないのよ。入団テストがあるから」
「それに合格すれば、入れてもらえるんだね。」
「ええ。『一級レジスタンス試験』に受かればね!」
フィリーレンら一行の脳裏をよぎったのは、「何をもって一級というランクを付けているんだろう?」という疑問だった。
「一級というと何だかレベルが高そうだけど、他の等級の試験はないの。」
「うーん、今のところはないわね?」
じゃあ何で一級って付けたんだよ、と誰かがツッコミを入れる前に、お菊は説明した。
「元々は誰でも歓迎してたんだけど、加入希望者が多くなりすぎちゃってね。最近は制限を設けて、能力が認められた人だけを仲間にしているの。それっぽい名前の試験を作ってね」
「そうなんだ。試験内容はどんな感じなの。」
「いたってシンプルよ」
顔に傷跡を持つ男を、お菊がちらりと見る。
「ダレンと一対一で戦って、ある程度のダメージを与えることができたら合格!」
彼の噂は聞いていた。
レジスタンスの現状最高戦力だとか、百合・BLレンジャーとも互角に渡り合えるとか、一度はあのルーカスを追い詰めたとか。その最高戦力とのタイマンが試験内容とは、なかなか思い切ったことをする。そんなに加入者を絞りたくなったのか、レジスタンス。
「面白そうだね。」
はたしてフィリーレンは、いつも通り無表情で答えた。
「今から試験を受けてもいいかな。」
「いいわよ」
即答したお菊を、ダレンが苦笑しながら小突く。
「なぜ貴様が答えるんだ。実際に戦うのは私だろうに」
そうは言いつつも、まんざらでもなさそうなダレン。すぐにでもバトルが始まりそうな予感がしたが、露鬼が二人の間へ割って入った。
「待て。最初に試験を受けるのは、この俺だ」
「貴様もレジスタンスに入りたいのか?」
「さあな」
ダレンに問われ、剣士は曖昧に返した。
実のところ、彼にはレジスタンスに興味などない。けれども、フィリーレンをここまで送り届けてきたのも、この世の何もかもは露鬼にとって退屈凌ぎに過ぎない。せっかくだからレジスタンス最強の戦士と一勝負して、もう少し退屈を紛らわしたかったのだ。
それに、仮に試験に受かったとしても、加入を蹴ることは可能だろう。露鬼にとってこの試験、得るものはあっても失うものは何もない。
「私も受けてみたいですね」
ヴァルク、もといクヴァルも挙手した。
彼がフィリーレンに同行した目的は、ゼニスを倒した者たちと会い、自称「神」が死んだ実感を得ることだ。ゼニスの造った兵を蹴散らしたというダレンと戦えば、その実感はより強固なものになると確信していた。
「じゃあ、私は最後でいいや。二人とも、お先にどうぞ。」
呆気なく引き下がったフィリーレンは、むふーと人の悪い笑みを浮かべる。
「順番が最後だと、ダレンが消耗している隙を突ける可能性がなくはないからね。」
「理由がせこいですね……」
電球頭の怪人が、困ったように笑う。
かくして、一級レジスタンス試験は開幕したのだった。
今回、ご迷惑をおかけした作品
・「シン・ウルトラマン」