一戦目。ダレンVS露鬼。
両者は十メートルほどの距離を挟み、草原で対峙していた。
「遠慮はいらない。貴様の全力をぶつけてみせろ」
ダレンはそう告げ、どこからか飛来したクワガタムシ型のメカを掴んだ。腰のベルトに装填すると、重厚なアーマーが装着されていく。
「フン。最初からそのつもりだ!」
三日月型の大剣を構え、狼の剣士が吠えた。剣を素早く振るい、斬撃を飛ばす。
一方、ダレンはベルトに収まっているクワガタムシの角部分を操作した。全身を覆うアーマーが少しずつ浮き上がり、その内側に隠されていた別のアーマーを垣間見させる。
「――『キャストオフ』」
浮き上がっていたアーマーが弾け飛び、露鬼の斬撃を防いだ。
『チェンジ・スタッグビートル!』
顔の両側から長い角が立ち上がり、二段階目の変身が完了する。青くシャープな鎧を纏った、赤い複眼の戦士に変わった。
マジェスティ状態になれないとはいえ、ダレンはほぼ全ての歴代二号戦士の原典を操れる。その力の一端が、解き放たれた。
「『クロックアップ』」
クワガタの戦士は、ベルト側面を軽く手で叩いた。刹那、彼の時間が加速され、超高速移動がスタートする。目にも止まらぬ速さで突進したダレンは、手にした二刀で露鬼を連続で斬りつけた。
「くっ……」
ならば、と露鬼も黒い鎧を脱ぎ捨て、素顔を晒した。携帯電話型アイテムを手にし、「サモン・スピリットオブジアース!」と叫ぶ。
「閃烈の銀狼。ロシュシルバー!」
こちらもフォームチェンジし、いきなり必殺技を発動。ロシュハスラーロッドをブレイクオードに変え、横薙ぎに振るった。緑色の光が広がり、高速移動していたダレンをその中に捕らえて動けなくする。
「『破邪露出球』。邪気、玉砕!」
力を込め、三つの宝珠をロッドで突く。勢いよく弾き飛ばされた宝珠が、ダレンへと高速で迫った。
「どうだ。身動きが取れなくては、自慢のスピードも活かせまい。万が一脱出できたとしても、高速射出される俺の必殺技からは逃れられん。俺の勝ちだ!」
「――違うな」
あろうことか、ダレンは変身を解除した。不敵に笑い、錠前型の新たなアイテムをベルトにセットする。
「私が屈しない限り、貴様が勝ったことにはならない!」
洋風の変身待機音が流れ、彼の頭上にバナナ型の鎧が召喚された。
「バナナ⁉ バナ、バナナ??」
「ダレンだ!」
困惑するロシュシルバーと、妙にきっぱり言い切るレジスタンス最強の男。
『ダレン・アームズ!』『ナイト・オブ・ネクロフィリア~!』
バナナ型鎧がダレンの頭に合体し、展開して全身を覆う。タイミング良く装着されたそれが、宝珠の激突から彼を守ってくれた。
緑の光の拘束が解け、自由になったダレン。専用武器のスピアーを構え、ベルトを操作した。刀のような形状のレバーを、一回倒す。
「今から私が、本当の強さというものを見せてやろう」
『ダレン・スカッシュ!』
スピアーの先端から放たれたバナナ型の破壊エネルギーが、シルバーを軽く吹き飛ばした。
「ぐあっ⁉」
「力とは、強さの証を立てるもの。貴様に足りないのは、その覚悟だ」
彼が体勢を立て直す暇を与えず、ベルトの錠前型アイテムを交換する。「デザイア・フォービドゥン・性癖~!」と音声が流れ、今度はリンゴを模した赤いアーマーを装着した。盾と片手剣を使用する、外伝限定の強化フォームである。
この形態には副作用がある。どこからか湧いてきた植物が、ダレンの全身を覆い尽くそうとした。が、彼はパワーをみなぎらせ、それらをことごとく吹き飛ばす。
「妻を、家族を、仲間をルーカスに殺され……私は、どんな痛みにも耐えてきた。この程度の痛み、どうということはない!」
『ダレン・スパーキング!』
レバーを三回倒し、必殺キックを発動。ダレンは高く跳び上がり、リンゴ型のエネルギーを帯びた右足をロシュシルバーへ叩き込んだ。
「ハアッ!」
大きく吹っ飛ばされたシルバーが、木の幹へ強く背中を打ちつける。ややあって、木にもたれかかるようにずるずると倒れ込んだ。同時に変身解除し、またもや素顔を露出させる。
「俺の負けだ。どうやらこの世界には、まだまだ強い者たちがいるらしい」
草むらへ仰向けに寝転んだ露鬼は、清々しく笑っていた。
最高の退屈凌ぎだった。いや、暇つぶしどころか、彼には目標ができた。「もっと強くなる」「強さを極める」という目標だ。
「……お前は、本当に強いな」
寝転んだまま、ダレンを一瞥する。いかつい外見の男が、ふっと笑ったように見えた。
一戦目。ダレンの勝利。露鬼、不合格。