百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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23 大暴れ!復活のビッグ・ファースト

 カードゲームで例えよう。

「このカードが場に出たときに○○する」と書いてあるカードが二枚同時に場に出たとき、どちらのカードの効果から発動すべきだろうか。答えは、「そのカードを使っているプレイヤーが好きに決められる」だ。

 ゲームによっては、まず一枚目のカードの効果を使い、その結果出てくる他のカードの効果の解決を延々と行い、ようやく二枚目のカードの効果の解決に取りかかるというような処理も許される。いわゆる「ループデッキ」を使うときにも、こういうのが大事だったりする。

 

 異能バトルにおいては、もっと単純だ。矛盾する内容の能力がぶつかり合った場合、より強い方の能力が優先される。そしてもちろん、ビッグ・ファーストより強い者は存在しない。

「あらゆる攻撃や能力が効かない」第一位の力と「コピー体を使役し、好きなタイミングで消滅させられる」クヴァルの力では、前者が優先されたというわけだった。

 

 

 ビッグ・ファーストが制御不能になったのを見て取り、お菊は焦って叫んだ。

 

「試験は中止! 皆で第一位を止めるのよ!!」

 

 なお、彼女もレジスタンスの面々も、電球頭の怪人が第一位を召喚してしまったことについて責めようとはしなかった。

 理由は二つある。一つ目。クヴァル本人もまさかこうなるとは思っていなかったこと。二つ目。虚無英雄会のグリイザとの決戦で、ダレンが「ジゲン・ライド」でルーカスやビッグ・ファーストの召喚をためらったときのような葛藤は、クヴァルには起こり得るはずもなかったこと。千年もの間ゼニスの体内にいた彼は、情報に疎い。

 

 

(……一体、どうすれば良いのだ)

 

 ゼロコンマ一秒にも満たない僅かな時間の中で、ダレンは必死で知恵を絞った。ふらふらと立ち上がり、木の幹に寄りかかる。

 

(ビッグ・ファーストは最強だ。百合・BLレンジャーの誰も、奴には歯が立たなかった。ルーカスの「他殺願望」で無敵の力を無効化する以外に、攻略法はなかった)

 

「ジゲン・ライド」を活用することも考えたが、すぐにボツにした。

 

(……が、かといってここでルーカスを召喚してビッグ・ファーストと戦わせれば、それこそ収集がつかなくなる。最悪、ルーカスも「他殺願望」の力で私のコントロールを外れ、好き放題に暴れるだろう。ゼニスが造った残留思念体でさえ厄介だったのに、完全なコピーが出てきたら誰にも止められない)

 

 

 召喚したルーカスが素直に言うことを聞き、第一位を倒してくれたらまだ良い。一番まずいのは、第一位を倒す前にルーカスも制御不能になり、二人揃って大暴れするケースだ。

 勝っても最悪、負けても最悪。そんな大博打、誰が好んで打つものか。

 

(やはり、今ある戦力だけでどうにかするしかない!)

 

「ダレンリバイブ・剛烈」へチェンジした戦士は、痛む体に鞭打って走り出した。

 

 

「しぶとい奴め」

 

 再起したダレンに気づき、迎撃しようとするビッグ・ファースト。けれども、次に彼へ挑戦したのはダレンではなかった。

 

「……お前の使っている原典に、巨大ロボは登場しないそうだな。つまりお前には、俺のロシュハンターへ対抗する術がない!」

 

 三体合体のロボへ乗り込んだロシュシルバーが、第一位目がけて大剣を振り上げたのである。

 シルバーへ変身した状態で操縦している影響か、ロボ頭部の狼の顎が開き、その中から黄色い目が覗いている。ロシュハンター・イビルからロシュハンター・ジャスティスへ変化したのだ。

 

 

「『露鬼突貫・リボルバーファントム』!」

 

 大剣をドリルのように回転させ、敵へ突進、粉砕する必殺技だ。ロシュハンター・ジャスティス渾身の一撃を、第一位は「フン、この程度か!」と、バトンで軽く受け流してみせた。

 

「何か勘違いしているようだな。俺が巨大戦力を使わないのは、そもそも使う必要がないからだ。『ビッグ・ファーストボンバー』!」

 

 バズーカ砲をその場でササッと組み立て、ロボへ向けて砲弾を発射した。

 このバズーカは発射の瞬間、相手の心の中に、その者が最も恐怖する対象を浮かび上がらせる。したがって回避は不可能に近く、威力もお台場のロボット像を木っ端微塵にするくらいには強烈だ。

 

 

「ぐああっ……」

 

 やはり露鬼もかわせず、ロシュハンター胸部に被弾してしまった。爆発が起き、数歩後退する。

 

「だったら一か八か、これでどうだ。『ロシュハンター・ブルームーン』!」

 

 ロボットの全身の装甲が青色に変わり、パワーアップを遂げた。

 

「この形態は、原典の第40話にだけ登場している。消耗が激しいというデメリットこそあれ、通常の十倍の力を発揮して敵を撃破した実績付きでな。原作で無敗ということなら、青き月のエネルギーを浴びたロシュハンターも負けはしない!」

 

 露鬼の雄叫びに呼応するように、ロシュハンター・ブルームーンも力強く駆けた。胸部のワニの口を大きく開き、第一位へ破壊光線を撃ち出す。

 

 

「『月下彷徨・ブルームーンローシュ』!」

「『ビッグ・ファーストボンバー』、再発射!」

 

 両者ともに攻撃を撃ち合った。が、数秒後、力なく崩れ落ちたのはロシュハンターの方であった。

 

「馬鹿め。出番自体がたった一話しかない形態の、何が無敗だ。そんなものは所詮、初登場補正の域を出ていない。何度も出番があった上で一度も苦戦していない、この俺の原典には遠く及ばん!」

 

 煽られまくっているけれども、露鬼の返答はない。おそらくは操縦席の中で気を失っているのだろう。

 また一人戦力が削られたのを見て、お菊は「こうなったら出し惜しみはなしよ」と呟いた。

 

 

「ピーターのお下がりっぽい強化形態を使うのは、あまり気が進まなかったんだけど……今は私個人の好みをこじらせてる場合じゃないわ! 変身!」

『デリート・アップ! UNKNOWN! UNLEST! UNLIMITED! アメリカン・ファイター! オーバーリボンズ!』

『オオクワガタ! リボンズ・レクイエム!』

 

 クワガタのスタンプで変身した直後、オオクワガタのスタンプで金色の装備を追加。頭に王冠を被り、手には長剣を握り、全身のアーマーがゴールドに彩られていく。クワガタづくしの、リボンズ(お菊ver)の現状での最強フォームだ。

 

 

「私も援護するよ。」

『エクスプロージョン・ナウ!』

 

 後方から魔法で爆撃を行うフィリーレン。そのフォローを受けながら、オーバーリボンズ(キングオーバーリボンズとでも言うべきだろうか)とダレンリバイブは第一位へ果敢に立ち向かった。

 

「俺たちも戦います!」

 

 レジスタンス構成員も加勢しようとしたが、ダレンは振り返らずに「来るな!」と止めた。

 

「第一位の強さは異次元だ。貴様らが戦えば、確実に殺される。周辺住民を避難させ、これ以上被害を拡大させないことだけを考えろ!」

「はっ、はい!!」

 

 恐怖に縮み上がりそうになりながら、男たちは敬礼した。急いで散開し、指示通りに動き始める。

 

 

『リボンズ・フィニッシュ!』

『一撃・ダレンバースト!』

 

 オーバーリボンズがクワガタの顎型をした金色の、ダレンリバイブが橙色の破壊エネルギーを脚部に集め、ダブルライダーキックを繰り出した。

 

「効かないと言っている!」

 

 バトンを横へ振るい、ビッグ・ファーストはそれを難なく弾き飛ばした。

 

 

「俺が使用している原典の戦士は、作中無敗を誇る。苦戦したことすらない。ゆえに俺は最強なのだ。それに比べて、お前たちはどうだ? 使っている原典の戦士は、作品内で何度も無様な敗北を喫しているではないか。実に貧弱だ!」

「確かに、私たちの原典は無敗じゃないわ。でも……」

 

 着地したお菊が、闘志をみなぎらせる。

 

「私たちが力を借りている戦士たちは、何度負けたってその度に立ち上がってきた。立ち上がる度に強くなってきた! 私は、彼らが弱かっただなんて決して思わない。負けたことのないあなたには、分からないかもしれないけどね!」

「負けたことがないというのは、厳密には違う」

 

 マスクの下で一瞬、渋面を作る第一位。

 

 

「俺が経験した唯一の敗北は、ルーカスに原典の力を無効化されたときのものだ。だが、これだけ俺が暴れても奴が出てこないところを見るに――ルーカスもまた俺と同様、予想だにしない原因で既に倒されているのだろう?」

 

 この男、ただの戦闘狂ではなく、意外と頭も回るのが厄介である。

 

「ルーカスさえいなければ、俺を止められる者は超次元界に存在しない。俺の不敗神話は、今度こそ永遠に続くのだ! ハーッハッハッハ!」

 

 高笑いするビッグ・ファーストに反論できるだけの材料を、ダレンらは持ち合わせていなかった。

 口の中いっぱいに、苦い絶望の味が広がるのを感じた。

 




※次回の更新は1週間後の予定です。
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