何はともあれ、アメリカを襲った高次元生命体・ブラコンレンジャーは倒された。最初こそ大魔王に騙されていたロリーニンジャーも、今ではリボンダーマンたちと共に戦う戦士として立派に成長しつつある。
「そうだ。四人揃ったということで、あっしらも戦隊チームを結成しやせんか? OPの歌詞は『ハット、ハット、ハットマ~ン! レッツゴー飛び出せ!』ってえのはどうでしょう?」
「戦隊をやるなら、あと一人必要だろう。それに、OPには俺だけでなく、全員の名前を入れるべきだ」
「四人揃っただって? 僕が君たちと手を組むのは今日限りだよ。次に会うときは敵同士だ」
ハットマンが歌詞に難色を示したかと思えば、チョーカーがそそくさと立ち去る。本格的なチーム結成の日は、まだまだ遠そうだ。
「前途多難でございやすね」
落ち込んだキンジの肩を、ピーターが優しく叩く。
「諦めず、気長にやっていこう。この国のヒーローは僕たちだけじゃない。アイロンマンさんとか、各地で人知れず平和を守っている人たちが大勢いるんだ。僕たちに力を貸してくれる人も、いつか現れるはずだよ」
「そうでやすね。何だか元気が出てきやした。シェギナベイベにやってやりやしょう!」
夕日が照らすニューヨークの街並みの中を、キンジとピーターは肩を組んで仲良く歩いていった――「結局、ブラコンレンジャーってどこにもブラコンっぽい要素なかったな」と思いながら。
アメリカの平和は、君たちに任せたぞ。戦え、リボンダーマン! 頑張れ、ロリーニンジャー! 並びに、アメリカの全てのスーパーヒーローたち!
高次元生命体の脅威から、地球の平和を守ってくれ!
「見つけやしたよ、高次元生命体!」
天を仰ぎ、キンジが声を張り上げた。
「現れたな、ロリーニンジャー!」
対して、ビルの屋上に佇んでいた青年は「トウッ!」と叫び、落下防止柵を乗り越えて跳んだ。落下する途中で彼の体は光に包まれ、バッタの特徴をそなえた緑色の戦士へ変身する。
「俺はブラコンレンジャーの息子。次元ライダー・BLACON(ブラコン)! R・X!」
拳を握って腕を振り、名乗りポーズまで決めた。
「父の仇、今日ここで討たせてもらう。そしてこの俺が、新たなる次元四天王の一角となるのだ!」
「あっしはおねロリの星・ロリーニンジャー。アメリカの平和を乱す奴には、容赦しやせんよ!」
負けじとキンジも変身を遂げた。ハンバーガーを一口齧ると、カウボーイ風の金のアーマーが装着される。
BLACONは腰のベルトから出現させた光の剣「リボルブラコン」で、ロリーニンジャーは専用武器「ロリーソードガン」のソードモードで激しく斬り合った。刃と刃がぶつかり、火花が飛び散る。しかし、BLACONの方がパワーは上。徐々にロリーニンジャーは劣勢になっていった。
「とどめだ。『リボル・ブラコン・クラッシュ』!」
屋上の淵まで追い詰められたキンジへ、BLACONがジャンプして斬りかかる。絶体絶命のピンチに思われたが、ロリーニンジャーはそれを間一髪でかわし、懐から三枚のメダルを取り出した。
「……グランマが言っていやした。病は飯から。食べるという字は、『人が良くなる』と書くと。あっしの真の力、今こそお見せしやしょう!」
「何をぶつぶつ言っている」
技を回避されても、BLACONはさほど焦っていなかった。敵へ振り向き、リボルブラコンを構えて突進する。
「貴様の『リボチコンボ』の戦闘データは、既に俺の手の中にある。今さら足掻いても無駄だ!」
「それはどうでございやしょう?」
不思議なことが起こった。キンジ・オネガワが手にした三枚のメダルが突如紫色に変化し、活き活きとそのエネルギーを発動させたのである。
キンジは今日、日本料理店へ行ってトンカツ定食を頼み、その後でスイーツ店を二軒ほど巡ってきた。彼の食した美味しい食べ物の力が、一時的にメダルの中に宿ったのだ。
メダルをバックルに装填し、スキャナーで読み込む。
『プリン! トンカツ! ティラミス! プ・ト・ティラ~の定食~!』
意味不明なサウンドと共に、ロリーニンジャーの装甲にプリンとトンカツとティラミスを模した可愛らしいパーツが追加された。さらに、どこからか斧型の武器を召喚して右手に構え、振り下ろされたリボルブラコンを軽々と受け止めた。
「馬鹿な。どこにこんな力が⁉」
「生きるってェのは、他の誰かの命を喰らうってことでございやす。食のありがたみを知らない輩に、あっしは絶対に負けやせんよ!」
ここからはロリーニンジャーの猛反撃が始まった。忍者激推し刀をも召喚し、斧と日本刀の二刀流(?)でBLACONに連続攻撃を叩き込む。最後は必殺技「激推し・ウイニングおねスター」を発動し、風を纏った一閃を見舞ってBLACONを大爆発させた。
「忍ばず、ヒーハー!」
取材ヘリに気づいたキンジは、カメラに軽く手を振ってから歩き去っていった。
『ここまで、ニューヨークからの中継でお送りしました。続きましては各地の天気予報です』
どうやらニュースの時間は終わったらしい。会議室に備え付けのテレビを消し、ケイイチロウは少し疲れた目を揉んだ。
「アメリカにも頼もしいヒーローがいるようだな。共に高次元生命体と戦う、心強い仲間だ」
「そうね」
中継されていたバトルシーンには色々とツッコミどころも多かったのだが、ツカサは指摘せずにただ相槌を打った。というか、もうどこからツッコめばいいのか分からない。何故食べ物の力がメダルに宿るのか。そもそも、あのメダルは何なのか。
「四天王のなりそこないみたいな奴らまで送り込んできて、まるで在庫一掃セールですね。大魔王もいよいよ手詰まりなんじゃないですか」
サクヤも楽観的な意見を口にする。
「ああ。魔王との決戦の日は近いだろう」
ケイイチロウは大きく頷き、ふと表情を曇らせた。
「しかし戦いが終われば、BL警察の特殊部隊はもう必要なくなるかもしれないな。俺たち三人のチームが解散される可能性は決して低くない。……何か、戦隊としてやり残していることはないだろうか?」
「あっ、そうだ! エンディングでダンスを踊ってないですよ!」
サクヤが元気よく手を挙げる。
「やっぱり、戦隊ヒーローといえばダンスでしょう。どんなにストーリーがシリアスで重苦しい雰囲気でも、番組の最後では敵も味方も笑顔で踊ってる。その安心感は何物にも代えがたいです!」
「言われてみればそうだな。よし、踊ろう」
「ちょっと、ケイイチロウ⁉ あんた、疲れてるんじゃないの?」
BL1号が秒で許可してしまったので、ツカサはぎょっとした。最終決戦を控えているのに皆でダンスの練習をしようだなんて、いくらなんでも馬鹿げている。
「疲れてはないさ。さあ、まずはエアロビクスから始めるぞ! どうせやるなら、素人の自己流の創作ダンスではなく、プロの講師をお招きしてもいいな」
「じゃあ、僕は踊る曲を選んでおきますね!」
ケイイチロウもサクヤもノリノリで、とんとん拍子にことが進んでいく。ツカサはただ、唖然としてそれを見守った。
「……ということがあったのよ」
品川駅から歩いてすぐのところにある焼き鳥屋で、ツカサはビール片手に仕事の愚痴を吐き出していた。
「しかも、エアロビクスやらコサックダンスやらを散々やらされた挙句、ケイイチロウの出した結論は『よく考えたらエンディングダンスのない戦隊もあるし、別に踊らなくても良いじゃないか』なのよ。あたしたちの努力は何だったのって感じ」
「お巡りさんもお巡りさんで大変なんだな」
つくね串を食べつつ、合間でカイリは感想を述べた。
「ところで、ちょっと俺の愚痴も聞いてくれよ。この間、すごい体験をしてさ」
「へえ。聞かせてよ」
「高校の部活の後輩で、今でも多少付き合いのある奴がいるんだけど……」
後輩――話によると、カイリより二歳下の女性――と二人で飲んだときは、もつ鍋が有名な店に行ったらしい。今日ツカサと来ている焼き鳥屋よりも庶民的な雰囲気で、値段も安い。カップルがデートに使うような店ではないのは確かだった。
そもそもなぜ二人で飲むことになったのかというと、オタクトークをするためである。カイリも後輩も「オトメの王国」という百合マンガの大ファンで、登場するカップルの解釈がことごとく一致、意気投合し、どちらからともなく「飲みながらじっくり話そうじゃないの」と提案していた。
店にいる間は、マンガについて語り合うばかりだった。けれども店を出ると、酔っぱらってしまったのだろうか、急に後輩が思わせぶりな態度をとってきた。カイリの腕を取って「先輩、エスコートして下さいよぉ」と甘えたり、「私、彼氏いないんですよぉ」と囁いてみたり。距離感がいつもより随分近かった。
「まさかあんた、後輩に手を出したんじゃ」
「ンなわけないだろ。俺にはな、早く家に帰って深夜アニメを録画する義務があるんだ。女に現を抜かしている暇はない!」
とにかく聞け、とカイリは続ける。
深夜アニメを見たかったので、その夜のカイリは後輩を適当にあしらって帰った。が、し後日「『オトメの王国』最新話の展開について議論したい」と思い立ち、もう一度飲みに誘ってみたという。悪酔いした後輩に振り回されたときのことは、「俺も酔っ払っちゃってよく覚えてないんだよねーアハハ」と誤魔化すつもりだった。
すると、きっぱりと断られてしまった。
「ごめんなさい。私、恋人がいるので、こう何度もサシ飲みをするのはちょっと。恋人に心配をかけたくないですし……」
今回、ご迷惑をおかけした作品
・仮面ライダーカブト
・仮面ライダーBLACK RX
・オトメの帝国