何とかビッグ・ファーストを倒せたので、「勝利を祝して飯でも食おうか」という話になった。
電話屋から戻ってきたレジスタンス構成員を中心に、バーベキューの材料を調達。コンロなどの器具はナデシコが色々持っていたので、それを使わせてもらった。
用意が整うやいなや、皆こぞって肉や野菜を焼き始める。戦いで疲れ、もうお腹ペコペコだったのだ。
楽しいムードが漂う中、クヴァルだけがしゅんとしていた。「私はよく知らない相手に能力を使いました」と書かれたプラカードを首から下げられ、項垂れている。
「貴様のことを過度に責める気はない。今後、能力の使い方に注意してくれれば良い」
電球頭の怪人の皿へ、ダレンが玉ねぎを取り分けてやった。
「が、それはそれとして、試験は不合格にする」
「構いませんよ。むしろ、当然かと」
お返しにダレンの皿へサーモンを寄越し、クヴァルは首を縦る。
「この度は、本当に申し訳なかったです」
「ところで、私の一級レジスタンス試験はどうなるの。」
豚肉をもぐもぐしながら、フィリーレンも会話に参加した。エクスプロージョン発動直後はぐったりしていたけれど、ご飯を食べているうちに元気になったらしい。
「まだ私のHPが半分くらいしか回復していないからな。しばらく休んで、全回復してからにしてくれ」
「元第一位にとどめを差した功績を考慮して、合格にしてくれたりはしないかな。」
「……難しいかもしれない」
むふーと得意げな顔のエルフに、ダレンは少し迷ってから応じた。そもそも、あそこまで絶大な威力の技をぶつけなくとも倒せてはいただろうし。
そうこうしているうちに、誰かが馬鹿でかいハンバーグを焼き始めた。アルミホイルで包んで火を通し、炭火焼きハンバーグにするつもりのようである。フィリーレンに何か吹き込まれたのかもしれない。
「……このお肉って、どこから集めてきたの?」
当たり前のようにどんどん肉が焼かれていく光景を眺めつつ、ツカサは疑問を口にした。
「あたしたちも何度か超次元界へ突入してるけど、目にしたのは植物ばかりで、超次元生命体以外の動物は一度も見たことがないわ。けど、バーベキューでは普通に動物の肉が出てきてる。どういうことなの??」
「今私たちが食べている肉は、何年か前に発生した動物の肉を、缶詰めや干物などとして保存していたものがほとんどだよ。」
ハンバーグが焼けていく様子を見ながら、フィリーレンが答える。
「ゼニスは超次元界を造る際、人間界に生息するという『素数ゼミ』に関心を持ったんだ。で、『これなら何年かに一回だけ管理すれば良いから手間が省ける』と着想を得たらしい。超次元生命体と植物を除くすべての生き物を、数年に一回の周期でしか繁殖しないように設計したとされている。」
一応補足しておくと「素数ゼミ」とは人間界のアメリカに生息し、13年もしくは17年の周期で成虫になって大量発生する蝉のことだ。ごくまれに13年周期の蝉と17年周期の蝉の出てくる年が被ると、それはもう恐ろしいほどの数が全米を埋め尽くすんだとか。
もっとも、全米できっかり同じタイミングで成虫が出てくるわけではなく、場所によって少しずつ年がズレていたりはするらしい。13年周期の蝉で2000年と2013年に出てくるのもいれば、別の州では2001年と2014年とか。
まあともかく、超次元界の動物たちもそういう周期に従って地上へ出てくるのだそうだ。つまり、超次元界には「動物が存在しない」のではなく、「動物はいるが、繁殖する周期の年でない限りは地上へ出てこない」らしい。
「だから、ハンバーグを食べられる機会って実は結構レアなんだよね。食べられるときに食べておかないと。」
「ふ、ふうん……変わってるのね、この世界って」
そういえば、ダレンやお菊が人間界へ来たとき、人間界の食事を見てもあまり驚いた様子がなかった。「向こうには動物の肉がないのに、珍しがったりしないのかな」と思ったものだが、実際は超次元界にも肉はあったのだろう。ただ、希少価値が人間界よりもやや高めというだけで。
「世界が変わってるんじゃなくて、自称『神』が変人だったんだよ。この素晴らしい超次元界に祝福を。」
焼き上がったハンバーグを皿に取り、エルフは至福の表情でかぶりついた。
「祝勝ムードのところ悪いし、結果論かもしれないけどよ。他殺願望を召喚して第一位に勝てたんなら、虚無英雄会との決戦でも他殺願望を出しときゃ勝てたんじゃね?」
野菜をスルーして肉や海鮮ばかり食べながら、カイリが言った。
「あの性能なら、クロードにもワンチャン通用してただろ」
「それは……確かにそうだな。すまない。あのときは、咄嗟に思いつかなかった」
謝るダレンに、「まあいいけどな」と返す。
「ルーカスの残りかすみたいな奴の力を借りるのも、それはそれで癪だしよ」
食事会が終わると、百合・BLレンジャーの面々はBLACON・SUNの開いたゲートで人間界へと戻って行った。
ヤンデレキラーとイセイナイトは、バーベキューには参加していたようだがいつの間にかいなくなっていた。百合・BLレンジャーにもレジスタンスにも属さず、フィリーレンのようにレジスタンスへ入りたがってもいない、本物の一匹狼たちのことだ。また、気ままな旅にでも出たのだろう。
皆を見送った後、フィリーレンは「大変だったけど、何とかなったね。」と微笑した。
「ああ」
そう言う露鬼は、なぜか機嫌が悪そうだった。
「百合・BLレンジャーの中にも、俺と同じ『シルバー』の名を冠する者がいたな」
「ええ。確か、オメガ珈琲シルバーとか」
「少し名前が長いですね」とコメントしたクヴァルに、狼の剣士は「長さはどうでもいい」と呟く。
「色が被っているのが気に食わん。次に会ったら、どちらが真のシルバーにふさわしいか決闘で決めてやる!」
「向こうからしたら良い迷惑ですよ……」
呆れている電球頭の怪人。エルフの魔法使いは、「二人ともすっかり元気そうだね。」と言うだけに留めた。
ビッグ・ファーストの復活で予期せぬ大混乱に陥った、一級レジスタンス試験。百合・BLレンジャーの加勢やダレンの機転のおかげで、どうにか大事に至らずに済んだ。
露鬼とクヴァルは、既に不合格になっている。残るはフィリーレンのみ。ダレンの体力が回復し次第、改めて試験を受けられる運びになる。
はたして、彼女は試験に合格できるのであろうか?
フィリーレン一行の旅は、まだまだ続く。