百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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31 PROJECT・D4

 ビッグ・ファーストとの戦いから一週間が経った。ダレンの傷も癒え、フィリーレンの一級レジスタンス試験が改めて執り行われることとなった。

 この一週間、フィリーレン一行はレジスタンスの拠点付近で野営していた。

 

 

「フィリーレン、起きて下さい。試験の開始時刻に送れてしまいますよ」

 

 当日の朝。いつまで経っても寝袋から出て来る気配のないエルフを、クヴァルが揺さぶっている。

 

「あと半日……。」

 

 しょぼしょぼした目で、フィリーレンはもごもごと言った。

 

「仕方ないですね」

 

 クヴァルはため息をつき、機械の腕で彼女の額に触れた。ひんやりとしたその感触が、徐々に彼女の意識を強制的に目覚めさせる。

 

「やめてよお……。」

 

 

 何だかんだと不平を言いながらも、エルフの魔法使いはむっくり起き上がった。まだぼーっとしているので、メカ怪人が髪を櫛で梳いたり、結んだりするのを手伝ってやる。

 やっとこさ覚醒し、フィリーレンは「ありがとう。」と頭を下げた。

 

「自慢じゃないけど、私、朝すごく弱いんだよね。」

「弱いどころじゃない気がしますよ」

 

 クヴァルは苦笑し、「実は」と切り出した。

 

「言うべきかどうか迷っていたのですが、フィリーレンに謝らなければならないことがあります」

「夜中にジュースを飲んだこと? それとも、夜更かししたことかな。」

「違います」

 

 子供じゃあるまいし。

 

 

「あなたがビッグ・ファーストに爆裂魔法を放つほんの一瞬前に、私は気づいたのです。『待てよ? 今皆さんがドカドカと必殺技を撃ちまくっていますが、そんなことしなくても、ビッグ・ファーストの無敵能力が無効化された時点で私が彼を消滅させておけば済んだのでは?』と。無敵でさえなくなれば、ネンクロフィ由来の力で召喚も消滅も思うがままですから」

 

 そのときのことを思い出し、クヴァルが腕を軽く振る。

 

「で、サッと杖を振って、第一位が消滅するよう念じました」

「……つまり、私が爆裂魔法を使わなくても良かったということ。」

「そうなりますね、すみません」

「私はへとへとになってまであの魔法を使ったのに、露鬼だって脱いでくれたのに、実際にはビッグ・ファーストはあのとき既に消滅しかけていて、まともに当たったかどうかも分からないんだね。」

「はい」

 

 

 フィリーレンが機嫌を悪くしたのを見て取り、クヴァルは慌てて付け足した。

 

「もっとも、フィリーレンが私や露鬼を魔法で回復させてくれたからこそ、ギリギリのタイミングで『消滅させる』という選択肢が出てきたわけですが」

「ふーん。」

 

 しかし、エルフはまだご機嫌斜めだ。むっすーとした表情のまま言う。

 

「クヴァル、また誰か強そうなのを召喚してよ。出てきた瞬間に私が爆裂魔法で吹っ飛ばして、スカッとしたい。」

「もうちょっと有意義にネンクロフィの力を使えよ……」

 

 水浴びに行っていた露鬼が戻ってきて、呆れたように呟いた。それをスルーしたフィリーレンは、「ビッグ・ファーストはもう出さないで。」とクヴァルに頼んだ。

 

 

「本当は爆裂魔法が当たっていなかったかもしれないとなると、また会ったときに恥ずかしいからね。」

「何ですか、それは」

 

 第一位を召喚しない理由が「危険だから」ではなく超個人的な理由だったことに、電球頭の怪人は面食らった。

 

「言われなくても二度と出しませんよ、あんな危険な男」

 

 

 そんな雑談をしているうちにも、試験の開始時刻は近づく。

 前回、露鬼とクヴァルがダレンと交戦したのと同じ場所へ、一行は向かった。審判のお菊、試験官のダレンはもうスタンバイしている。

 約十メートルの距離を挟み、フィリーレンとダレンは草原で対峙した。

 

「双方、必要があれば変身の用意を!」

 

 お菊の声を合図に、エルフは携帯電話型のアイテムを取り出した。

 

「――超天空変身。フィーリ・フィリ・フィリ・フィリディーロ。」

 

 

 出現した魔法陣が彼女の全身を呑み込み、盾と剣を構えた赤い騎士の姿へと変貌させる。両肩には、狼の頭部を模したような装飾が付いていた。

 レジスタンス最強の男が相手となれば、出し惜しみはなし。フィリーレン自身は鎧を纏うのを好まないが、今回は特別に着ることにしたのだった。

 なお、この原典は元々ウルザード稀咲が所持していたけども、彼が呆気なく死亡し、所有者がいなくなったところをフィリーレンは中古で入手している。

 

 

「猛る烈火のエレメント。天空勇者、フィリーレン・ファイヤー。」

 

 彼女が淡々と名乗りを上げる一方で、ダレンはまだ変身を終えていなかった。

 いや、そもそもこれは変身と言えるのだろうか。どこからか現れたトレーラーの中へ乗り込み、レジスタンス構成員に手伝ってもらいながら特殊装甲服を着ている。胸には警察のマークが、肩には「D3-X」の文字が刻まれていた。

 

 

「ただの……超次元生命体だ!」

 

 唐突に叫び、装着を終えたダレンがトレーラーから飛び降りる。頑丈な青のアーマーをガシャガシャ揺らし、赤い複眼で対戦相手を見つめながら。

 

「私を警戒して戦闘用の鎧を着込んだようだが、相性が悪かったな」

 

 D3-Xはアタッシュケースを取り出した。フィリーレンは知らなかったけれど、それは暗証番号を入力することでガトリング銃へ変形するスーパーアイテムだった。

 

「その姿、近接攻撃がメインなのだろう。あいにく私は、中距離からの銃撃に適した原典を使用している。この勝負、貰った!」

 

 

 意気揚々と暗証番号を入力するダレン。しかし、アタッシュケースからは「バンゴウガチガイマス」と無機質な音声が流れるばかりであった。

 見たところ数字キーが「1」「2」「3」の三つしか付いておらず、暗証番号といってもごく簡単なものと思われる。それにもかかわらず入力をミスったダレンを、フィリーレンはおろかお菊までもが「嘘でしょ……」と言いたげに眺めていた。

 

「ええっと」

 

 焦って再入力するダレンだが、またしてもエラーが出た。

 

『バンゴウガチガイマス』

「もういい……もういいだろ!」

「こっちの台詞だよ。」

 

 D3-Xがもたもたしている隙に、フィリーレン・ファイヤーは距離を詰めた。剣を素早く振るい、一太刀浴びせる。

 

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