百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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33 また会ったときに恥ずかしいから

 銃へさらなるカードを装填し、引き金を引く。ダレンの背後に八人の戦士たちが同時召喚され、フィリーレンへ目を向けた。

 ある者は、先刻ダレンが装着したD3-Xに似た、黒い装甲に青い目の戦士「D4」だった。またある者は、中華風なドラゴンモチーフの真っ黒な戦士。その他、Ωみたいな記号が顔に付いている者、胸にAの文字が刻まれている者、歌舞伎役者みたいな者、金色でコーカサスオオカブトモチーフの者、身長が三メートルくらいある者、骸骨みたいな外見で帽子を被った者など個性豊かである。

 

 

「――喰らえ」

 

 フィリーレンへ銃口を向け、ダレンが必殺の破壊光線を射出した。それと同時に、八人の戦士も必殺技を繰り出す。

 ミサイルランチャーをぶっ放すD4。他の者たちもライダーキックを放ったり、光を帯びた剣から衝撃波を飛ばしたり、太鼓型のエネルギー波を浴びせたりと大忙しだ。

 

「……光に覆われし漆黒よ。」

 

 対するフィリーレンは、剣と盾を地面に置いた。本来の自分の武器である魔法の杖を構え、詠唱を開始する。

 

「夜を纏いし爆炎よ。」

 

 

 発動するのは、ビッグ・ファーストにも使った全身全霊の爆裂魔法。あのときと違って露鬼の露出によるサポートこそ受けていないが、それでも威力は申し分ない。

 

「以下省略。」

 

 さらに、フィリーレンは他の原典を併用して詠唱を省けるため、敵は魔法が放たれるタイミングを直前まで悟れないというおまけ付きだ。はたして、ダレンと八人の攻撃が当たる寸前で、爆裂魔法は発動した。

 

『エクスプロージョン・ナウ!』

 

 ダレン率いる軍勢の総攻撃と、巨大な爆発が激突する。両者ともに最強クラスの技を使った反動で、大地はグラグラと揺れた。

 

 

(……やったか?)

 

 辺り一面に土煙が立ち込める中、ダレンはゆらりと立ち上がった。全身がひどく痛むが、試験終了まであと少しの辛抱だ。

 

(いや、あまり楽観はできないか)

 

さっきの衝撃で変身は強制解除され、「ジゲン・ライド」で呼び出した傀儡たちも消滅させられてしまっている。しかし、戦っている当事者の感触として、「威力で爆裂魔法に劣ってはいない」という自負があった。各人の持つすべてを出し切った結果、両者はほぼ互角に渡り合っていた。

 

 

(しかし、私の必殺技が決定打になっていなかったとしても、向こうも無事では済まないはず。フィリーレンが体勢を立て直してくる前にこちらから攻撃を仕掛けられれば、勝利は私のものだ)

「――『フェイタル・フィリ・ブレイド』。」

 

 そのときだった。土煙を切り裂き、フィリーレンが迫ってきたのは。

 どういう仕掛けなのか、所々が破損していた赤い鎧が修復されていく。あまり消耗しているようにも見えない。新たにもう一本の剣を召喚し、彼女は二刀流で鋭い斬撃を放った。

 

 

「何⁉」

 

 不意を突かれたダレンは、咄嗟に対強敵用の原典を選択。「ライダー! ダレン!」と音声が流れ、バイクモチーフの白い超次元ライダーへ変わった。バイクの前輪のような形の銃兼打撃武器を召喚し、斬撃を受け止める。

 けれども威力を殺し切れず、後方へ吹き飛ばされてしまった。呼吸を荒くし、問う。

 

「なぜだ。先刻、お互いの技の威力は互角だったはず。なぜ貴様だけがピンピンしている?」

「『HPを半分くらいまで回復させる魔法』だよ。」

 

 あっけらかんとした口調で、フィリーレン・ファイヤーは種明かしをした。

 

「あれ、自分に対して使うこともできるんだよね。知らなかったでしょ。」

 

 

 仮面の下でむふーと笑っているであろう彼女に、ダレンは「おのれ」と憤った。サイドカーのような形状の小型アイテムをベルトに装填し、赤い装甲とタイヤ型パーツを纏った強化形態になる。

 

「だが、私の原典は強敵相手でも粘れることを忘れるな!」

『必殺・フルスロットル!』『デッドヒート!』

 

 そのままベルトを操作し、必殺キックを発動。赤いタイヤ状のエフェクトを伴った跳び蹴りを繰り出した。

 

「『スコポフィリ・ストームスラッシュ』。」

 

 フィリーレン・ファイヤーも、炎の竜巻と共に斬撃を放つ。二人の技は激しくぶつかり合い、またしても衝撃で双方を吹き飛ばして変身解除させた。

 

 

「くっ……」

 

 ベルトが腰から弾き飛ばされ、ダレンは無防備になった。

 だが、フィリーレンは先刻同様に回復してくるに違いない。その前にベルトを拾い上げ、再変身すれば迎撃可能だと考え、ダレンは手を伸ばした。

 

「させないよ。」

 

 そこを、飛行魔法を使ったフィリーレンが強襲。一気に距離を詰めると、杖の先端をダレンの喉元へ突きつけ、「動けば撃つ」と暗黙のうちに示した。

 

 

「……見事だ。私の負けのようだな、フィリーレン」

 

 ややあって、顔に傷を持つ男は力なく両手を下ろした。

 

「変身アイテムを介さなければ力を発揮できない私とは違い、アニメ・漫画系の原典をベースにしている貴様は、生身の状態でもこうして攻撃を仕掛けることができる。しかも、体にダメージが残っていても、負荷をかけず楽に移動できる飛行魔法なら関係ないことも計算に入れていたな」

 

 

「HPを半分くらいまで回復させる魔法」も確かに便利だが、相手にも体勢を立て直す時間を与えてしまうのがデメリットといえばデメリットかもしれない。飛行魔法によって体への負荷をかけずに素早く移動し、先手必勝を狙うのが本来なら最善。

 フィリーレンは、あえて最初に回復魔法を使うところを見せた。そして「次も回復してくる可能性が高い」と思わせておいて、本命の飛行魔法による強襲を行った。敵ながらハイレベルな戦術である。

 単に戦闘力が高いだけでなく、咄嗟の判断にも優れ、頭脳プレーもこなす。素晴らしいの一言に尽きる戦い方だった。

 

 

「完敗だ。私もどうやら、全盛期を過ぎたらしい」

 

 ダレンが苦笑し、間もなくお菊が試験終了を告げた。

 かくして、フィリーレンは一級レジスタンス試験に合格した。晴れてレジスタンスの一員になる資格を得たのである。

 

 

「やりましたね、フィリーレン」

 

 クヴァルと露鬼が大喜びで駆け寄ってきて、仲間を労う。

 

「神を倒したというダレン。そして、そのダレンに勝利したフィリーレン……。時代は確実に、前へ進んでいる。ゼニスよ、自称『神』よ、あなたは本当に倒されたのですね。過去の存在となったのですね」

 

 ダレンらレジスタンスと会っただけでなく、フィリーレンが彼らに決闘で勝利したことも相まって、クヴァルの実感はますます深まった。もう、ゼニスの復活を信じて錯乱することもないだろう。

 

 

「お前をレジスタンスの拠点まで送り届けた甲斐があったってもんだ。よくやったな、フィリーレン」

 

 狼の剣士は何度も頷き、エルフの魔法使いの頭をわしゃわしゃ撫でた。

 

「……しかし、これで俺たち三人、各々の目的は果たしたことになるな。今まではお互いの利害が一致していたゆえに行動を共にしていたが、もはや一緒に旅をする理由はなくなった。そろそろ、このパーティーも解散する時間だ」

「ずいぶんあっさり別れますね」

 

 クヴァルが肩をすくめる。

 

 

「まあ、またどこかで会うこともあるでしょう。お二人とも、どうぞお元気で」

「うん。でも、長々とした別れの言葉は言わないでおくよ。」

 

 なぜなら、と続けようとしたフィリーレンを遮り、二人が口を揃えて言った。

 

「また会ったときに恥ずかしいから、ですか?」

「また会ったときに恥ずかしいから、だろう?」

「そうだね。」

 

 三人は微笑みを浮かべた。

 そしてクヴァルと露鬼は帰路につき、フィリーレンはレジスタンスと共に残った。

 

 

 

 いつの日か、彼女たちはこの旅路を懐かしむことになるのだろう。

 フィリーレンがカードの山に埋まって「暗いよ~‼ 怖いよ~‼」と叫んだり、クヴァルが二日酔いで動けなかったり、露鬼が月夜に一人優雅に笛を吹いたりしていた、楽しい旅の記憶を。

 あるいは、共に歩んだ旅路を辿ることもあるかもしれない。

 

 

 こうして、奇妙な縁で出会った三人の旅は、一度終わりを迎えた。

 物語は終わり、勇者は束の間の眠りにつくのである。

 




今回をもちまして、「葬送のフィリーレン」編は完結となります。

次回から新章に入り、「Liberation From Origin」編が始まる予定です。来週の更新をお待ち下さい。
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