店の営業をアルバイトに任せて巨大マシンへ乗り込み、あっという間に名古屋へ現着。
「来たな、オメガ珈琲シルバー。超次元ライダー来部!」
オメガ珈琲本店の駐車場で待ち構えていたのは、カマキリの特徴を備えた怪人であった。マグマのように赤く硬い皮膚が全身を覆い、両腕には手の代わりに鋭い鎌がある。上半身には、銀色の鎧のようなものも装着していた。
「てめえが流星のツンデレプタだな」
マシンから降り立った二人は、既に基本形態への変身を終えている。裕介は珈琲ブレイザーを、美明日は来部ガンをカマキリ怪人へ向け、じりじりと距離を詰めた。
ツンデレプタの右腕は、久保社長の首根っこを掴んでいる。社長は大怪我こそしていないけれど、顔に複数のあざがあった。
「社長を離せ。抵抗するのなら、ネトルの精神干渉でてめえの動きをコントロールして、強制的に離してもらうことになるぜ」
「……フン、いいだろう」
やけにあっさりと、怪人は社長を解放した。突き飛ばすようにして、駐車場の隅へ追いやる。
裕介が軽く脅したからとはいえ、意外な行動だった。精神干渉が使える相手では不利だと踏んだのだろうか。それとも、人質作戦ではなく真剣勝負の方が好みなのか。
裕介たちへ小さく頭を下げ、急いでこの場を離れる久保社長。その姿を見送りつつ、シルバーはツンデレプタに言った。
「俺たちが神奈川へ引っ越したのを知らなかったってことは、やっぱり人間界の住人じゃねえな。どうせまた超次元生命体なんだろうが、懲りない連中だぜ」
「超次元生命体? クックッ、違うな」
カマキリに似た大きな眼でヒーローたちを眺め、怪人が失笑する。
「違う……? じゃあ、何者なんだよ」
「お前たちが知る必要はない」
言い放ち、ツンデレプタは両腕の鎌を振り上げ、二人へ突進した。
「その名の通り、俺の性癖は『ツンデレ』だ。通常は『ツン』モードで攻撃力が上がるが、たまに『デレ』モードに突入して防御力がダウンする、ランダム性の高い性癖だ。さあ、俺のツンデレを攻略してみせろ!」
あまり使い勝手の良さそうな能力には思えない。人質をあっさり解放したことといい、こいつ、本当に自分たちを倒す気あるんだろうか。
念のため先輩方にも応援要請を出してから来たけれど、その必要はなかったかもしれない。
「『BANG・解』。『喫茶斬月』!」
「『大紅蓮NTR丸』!」
同時に「BANG・解」し、裕介は刀身が黒く染まった珈琲サイブレードで、美明日はNTRブレードで鎌を受け止めた。
「俺もツンデレは嫌いじゃねえけどよ」
怪人を睨みつけ、シルバーは告げた。
「女の子ならともかく、男のツンデレはちょっとキモい気がするぜ?」
「黙れ!」
一旦バックステップで距離を取ると、ツンデレプタは「流星弾!」と叫び、隕石のような見た目の破壊光弾を次々と発射してきた。
「今の俺は『ツン』モード、攻撃力はマックスだ。お前たちごとき、すぐに粉砕してくれる!」
ツンデレプタが百合・BLレンジャーのうち二名を交戦を始めて、間もなくのことだった。
超次元界にて、今日も今日とて植林に勤しむレジスタンスたち。彼らの前に突如、カラフルに輝く扉が出現した。
「な、何だ、あれは……?」
「貴族専用ゲートとも違う、別のゲートだと⁉」
超次元生命体が使うゲート、「どこにでも行けるドア」ないし「本当にどこにでも行けるドア」には共通点がある。金の装飾の有無という差こそあれ、桃色のドア一枚から成るのは同じなのだ。
しかし、今回のゲートは異質だった。まず、扉が両開きで、正方形に近い形をしている。通常ならば、縦に長細い長方形のはずなのだが。
さらに、装飾がない代わりに、非常にカラフルな発光パターンをしていた。まるでゲーミングキーボードか何かのようだ。
「――ここがレジスタンスの拠点か。案外、殺風景なところだね」
開いた扉から出てきたのは、金髪碧眼かつ長身のイケメンだった。若い男性の見た目だが、髪を肩くらいまで伸ばしているのはあまり今風ではない。
「誰だ、お前は!」
レジスタンスの構成員に取り囲まれる青年。けれども彼は、男たちの腰に巻かれているのが量産型のリボンズドライバーなのを見て取り、ほくそ笑んだ。
「君たちが相手じゃ、準備運動にもならないよ。ボスはどこにいるのかな? さっさと倒して帰りたいんだけど」
「何をっ!」
「馬鹿にしやがって!」
一斉にスタンプをベルトへ押印し、本家リボンズより簡易的なアーマーの戦士へ変わるレジスタンスたち。
『RISE! RAGE! REQUIEM! アメリカン・ファイター!』
日本刀に似た武器を構え、男たちは侵入者を包囲した。
「ボスを倒したいとか言ったな。何者か知らないが、まずは俺たちが相手になってやる」
「……だからさあ」
金髪碧眼の若者は、オーバーリアクション気味にため息をついた。いつの間にか、彼の腰にもドライバーが装着されている。
「聞こえなかったのかな? 準備運動にもならないって」
『SET! FEVER!』
ドライバーの左右に、スロット付きの金色のバックルと、骨のような模様のある紫色のバックルを装填。片手を掲げるポーズをして、青年は呟いた。
「変身」
『ZOMBIE! HIT!』『FEVER ZOMBIE!』