各部にトゲのようなパーツが備わった、バッファローモチーフの紫色の戦士へと変わった。頭部には金色の立派な角が伸び、背中にも同じく金色のマントが装着されている。
「僕の名はフレッド。そしてこの形態は、超次元ライダーフレッド・フィーバーゾンビフォーム(フェチ神)さ」
左手からはオレンジ色の長い爪が伸び、右手にはチェーンソー型の武装を握っている。
「何がフェチ神だ、ふざけるな!」
スタンプ操作で必殺技を発動したレジスタンスらが、エネルギーを帯びた刀で次々と斬りかかってくる。見事なその連撃を、フレッドはチェーンソーで迎え撃った。
「残念だったね。さすがに相性が悪すぎるよ」
仮面の下で微笑み、ノーガードで刀に斬られる。しかしどういうわけか、フレッドには何のダメージも与えられていないようだった。動揺して隙だらけのレジスタンスたちへ、彼はチェーンソーを思い切り薙ぎ払う。
「僕が使っている原典には、『すべての超次元ライダーをぶっ潰す力』がある。ライダー系の原典を所持する君たちの攻撃は、僕には一切通用しない!」
勝ち誇り、チェーンソーのカバーを上にスライドさせるフレッド。「ポイズン・チャージ!」「タクティカル・ブレイク!」と音声が流れた。紫色の斬撃を同心円状に飛ばし、辺り一帯に大爆発を起こす。
たった一撃で、フレッドはその場にいたレジスタンスの構成員全員を変身解除させてしまった。超次元ライダーが相手ならビッグ・ファーストと同等の力を発揮する彼は、鬼神のごとき強さだった。
「『オメガ天衝』!」
「ぐっ……」
シルバーの飛ばした黒い斬撃が破壊光弾を粉砕し、その奥に立つ怪人へとクリティカルヒットする。ツンデレプタは無様にアスファルトの上を転がった。だが、その口元は笑っている。
二対一という数的有利に加え、力量的にも裕介たちの方が明らかに上だ。どう見ても劣勢に立たされているにもかかわらず、カマキリ怪人はニヤニヤしていた。
「何がおかしい」
攻撃の手を止め、裕介は尋ねた。
「てめえ、悔しいとか思わねえのか。人質まで取って俺たちを誘い出しておいて、ストレート負けしかけてるのによ」
「そうよ」
NTRブレードを一振りし、冷気を飛ばしてツンデレプタの脚部を凍らせてから、美明日も頷く。なお、基本フォームのまま「BANG・解」を使っているのは割とレアかもしれない。
「言っちゃ悪いけど、あなたの能力にはこれといった特色がないわね。ただ、近接戦闘も遠距離攻撃も平均以上にこなせるだけ。その程度の実力で百合・BLレンジャーに挑もうだなんて、思い上がりも甚だしいわ」
「……その女の言う通り、俺の使用する原典は『序盤で退場した幹部怪人』という微妙なランクのものだ。性癖だって特別なものではない」
カマキリ怪人は鎌で氷を力任せに砕き、ふらつきながら立ち上がった。
彼の顔から、笑みは依然として消えていない。それどころか、ますます深まっている。
「だが、それで良いのだよ」
「どういう意味だ」
「愚かだな。まだ分からないのか、オメガ珈琲シルバー!」
両腕を大きく広げ、ツンデレプタは心底嬉しそうに声を張った。
「俺の役目は、百合・BLレンジャーの注意を引きつけること。そして、その役目は既に十分果たされている。今頃、俺の上司が超次元界で目的を果たしている頃だろうさ!」
「何っ⁉」
まずいことになった。裕介が先輩方に応援要請を出してしまった以上、人間界のヒーローはほぼ全員、ここ名古屋へ集まるはずである。今すぐに超次元界へ応援を送るのは、不可能だ。
「ならば、自分たちだけでも超次元界へ向かおう……とでも考えたか?」
お見通しだと言わんばかりに、ツンデレプタは二人を見回した。
「さっき見せたように、俺は隕石型光弾を広範囲へ発射できる。俺を放置すれば、名古屋はすぐに焼け野原になるぞ?」
「……クソッ」
逡巡の後、オメガ珈琲シルバーは剣を強く握り直した。
「分かった。望み通り、てめえを倒す。超次元界に行くのはそれからだ!」
ダレンやBLACON・SUNのように貴族専用ゲートを開ける者と、通信機で連絡が取れれば話は早い。もし連絡がつかなかった場合は、ネトルに美明日から一度分離してもらって、彼女の開く通常ゲートで行くしかないだろう――後者の方法では、相当時間がかかると予想されるけれども。
「てめえの上司の目的が何なのかってことは、どうせ教えてくれねえんだろ。速攻でケリをつけてやる」
「教えたところで、お前のような若造には理解できないだろうがな。『超流星弾』!」
強化版の光弾を放つと同時に、ツンデレプタは小声で言った。
「――ま、原典の解放、とだけ言っておこう」
「あなた、何をしているの⁉」
倒れ伏しているレジスタンス構成員をなぶっている戦士を発見し、お菊は悲鳴を上げた。
「やあ。調べによると、君がレジスタンスのリーダー格だね」
フレッドはにこりと笑い、雑魚を踏みつけるのをやめた。
「初めまして、僕はフレッド。君たち超次元生命体がほぼ独占している原典を、解放しに来た」
「原典の解放? 私の部下を痛めつけることと、それがどう関係あるっていうのよ!」
「大ありだよ」
一番近くに倒れていた構成員へ、フレッドは出し抜けに振り向いた。お菊が「あっ」と叫ぶ間もなく、牛モチーフの戦士はチェーンソーで、構成員の腰のベルトを切断する。それに飽き足らず、無慈悲に回転を続ける刃を胸元へ突き立てた。
赤い血が、噴水のように勢いよく迸る。構成員は束の間激痛に悶えたが、すぐに動かなくなった。
「こうやってベルトを破壊し、使用者を殺せば、彼が使っていた原典には所有者がいなくなる。分かるかい? これが僕たちの目指す、『原典の解放』だよ」
人の命を奪うことに、フレッドは何の躊躇もない。
「中古なら使いやすいだとか何とか言って、君たち超次元生命体は原典をたくさん集めることに固執する傾向がある。ほら、最近レジスタンスに加入した魔法使いもその気があるじゃないか。ああいうのを野放しにしておくと、原典が可哀想だろ? だから僕たちは、原典を解放してあげることに決めたのさ」