「『スコポフィリ・ストームスラッシュ』。」
「くっ……」
フィリーレン・ファイヤーが繰り出した、熱風を伴う強烈な一閃。それを肩に喰らい、フレッドは数メートルも後退した。
「やはり君には、超次元ライダーをぶっ潰す力は効かないようだね。ならば!」
金と紫のバックルをドライバーから一旦外し、銀色のものに換装。黒いアーマー素体が剥き出しになったシンプルな外見になる代わりに、一本の長剣が召喚された。
「フンッ!」
その剣で自分自身を斬りつけることで、エネルギーをチャージ。剣に取りつけられていたもう一対のバックルを外して、ドライバーへセットする。
『TWIN SET!』『TAKE OFF COMPLETE! JET AND CANNON!』
戦闘機のように銀色の重厚な鎧を纏い、超次元ライダーフレッド・コマンドフォームへの変身が完了した。肩にはビーム砲のような武装も備わっている。
フレッドは背中のジェットエンジンを最大出力にし、地面から浮き上がった。剣を構えて高速で低空飛行し、フィリーレンへ迫る。
「『スコポフィリシュート』。」
「無駄だよ」
盾から連続射出された光弾を難なくかわし、肉薄。すれ違いざまに鋭い一閃を浴びせた。エルフの魔法使いが怯み、一瞬隙が生じたのを見て、フレッドは人の悪い笑みを浮かべる。
といっても、この機に乗じてフィリーレンへ猛攻を浴びせようとか考えたわけではない。フィリーレンの方が長く生きているし、多様な原典をストックしている。一筋縄ではいかない相手ゆえ、本気で倒したいのなら対策を練ってからの方が良い。
それこそ、対超次元ライダーの力でレジスタンスを圧倒した今回のように。
「君と戦うのはまた今度にしよう。さようなら、千年以上生きているお婆ちゃん」
フレッドは減速しつつ、前方へ例のゲーミングっぽい発光をするゲートを展開した。両開きの扉を押し開け、素早く中へ潜り込む。
彼の姿が見えなくなり、扉が閉じると同時に、ゲートは自動的に消滅した。
「……私のことをお婆ちゃん呼ばわりした報いは、必ず受けさせるよ。」
変身解除したフィリーレンは、仲間を痛めつけられた恨みもさることながら、今しがた受けた耐え難い侮辱にむすっと頬を膨らませた。
ツカサとカイリが敵と交戦開始し、残されたダレンはお菊を抱いて待合室に座っていた。
皆必死に戦っているというのに、今自分にできることがほとんど何もないのが歯がゆい。ケイイチロウやサクヤ、トウマやウミカはまだ関東へ戻っていないのだろうか。ナオヤ、裕介、美明日、ヒョウガの追加戦士組も、到着していないようだ。
今はただ、ツカサたちの勝利を祈るしかない――と思った矢先、見覚えのあるゲートが待合室に出現した。カラフルに光るそれは勢いよく開き、中から戦闘機をイメージしたような銀色の戦士が歩み出る。高音ウイングスに続き、また飛行機っぽい見た目の敵の登場である。
「人間界へ逃げれば大丈夫だとでも思ったかい? ダレン」
「その声……フレッドか⁉」
お菊を待合室の椅子へそっと寝かせ、ダレンは彼女を庇うように立ち上がった。
「Liberation from Origin、『LFO』と言ったな。貴様らの組織のメンバーは、超次元生命体でいうところの貴族専用ゲートのようなものを生成できるのか」
「うん。けど、君たちと一緒にされるのは心外だな。僕らの異界への門は、君たちのものよりも短時間で生成可能だ。平民用ゲートのようなランダム性もなくて、きわめて高精度で目的地に繋がるよ。平たく言うと上位互換ってこと」
フレッドは銀のバックルを外し、再び金と紫のものへ取り替えた。
『ZOMBIE! HIT!』『FEVER ZOMBIE!』
フィーバーゾンビフォーム(フェチ神)へ再変身し、チェーンソーを右手で構える。
「今度こそ君を殺す。そのためにも、もう殺す順番は間違えないよ。まずは女を完全に殺し切り、次に君の番だ。彼女の体を、君が欲情することすらできなくなるほどぐちゃぐちゃに、滅茶苦茶に切り刻んであげるよ。君の性癖を封じた上で、君を殺す」
「……お菊には手を出すな」
ダレンが奥歯を嚙みしめる。銃型のアイテムへカードを装填し、全身にカードが刺さったようなデザインの青い戦士へ変わった。
「貴様はライダー相手なら最強なようだが、これならばどうだ!」
『ジゲン・ライド! 他殺願望!』
ルーカスと同じ性癖を宿す紫色の戦士が召喚され、ダレンとお菊の前に立つ。
「あー、はいはい。超次元ライダー他殺願望ね」
秘密兵器的存在が出てきたにもかかわらず、フレッドは興味なさげなリアクションを取った。
「残念だったね。それも研究済みだよ」
チェーンソーを振り回し、彼は他殺願望へ突進した。胴へ何度か斬りつけてダメージを与えると、チェーンソーのカバーを上にスライドさせる。
『ポイズン・チャージ!』『タクティカル・ブレイク!』
他殺願望の頭部のアンテナのようなパーツを掴み、体を引き寄せて逃げられなくする。その上で、超至近距離からチェーンソーで一撃。複雑な形状のドライバーを両断してみせた。
『The power unit has been broken down……』
超次元ライダー他殺願望の動きは徐々に鈍り、ふらふらと後ずさった。
「簡単だよ。殺さなければ良いだけだ。タネが分かれば、どうということはない」
さあ次は君の番だ、とでも言いたげに、フレッドはダレンへチェーンソーの先端を向けた。
「……そうか。そういうことか」
ようやく、ダレンは悟った。高音ウイングスがツカサたちの足止めを引き受けたのは、何もお菊に治療を受けさせないためだけではない。フレッドがダレンを追って人間界へ来るまでの間、戦隊を引きつけておくためでもあったのだ。