百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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10 Blood&Wildな殺し合い

 ベルトのグリップを握り締め、ダレンは小さく自分の名を唱えた。

 

「……『ダレン』」

『Blood&Wild! W-W-W-Wild!』

 

 そして、地上波では放送されていない、番外作品の野性味あふれる戦士へ変身した。赤く生物的なデザインのアーマーには、複眼と同じく緑色の傷跡が無数に刻まれている。

 ヒレ型のカッターが腕に備わっていることを除けば、武器は持っていないようだ。超次元ライダー・ダレンアルファへと変わった彼は、お菊を庇いフレッドと向き合った。

 

 

「なるほどね。一応、それも二号戦士扱いってわけか」

 

 ふむ、と頷くフレッド。かと思うと、出し抜けにチェーンソーで斬りかかってきた。

 

「だけど、超次元ライダーであることに変わりはない。僕の優位は揺るがない!」

 

 牛モチーフの戦士の一撃が、ダレンの目を掠めた。呻き、目元を押さえて後ずさるダレンアルファ。

 

「おや、目に当たったかな。これは好都合。死にかけている対象を視認することができなければ、君の死体嗜好症は発動しないからね!」

 

 

 フレッドはニヤリと笑い、ダレンには目もくれずお菊へ向かって走った。今の状況であれば、彼女を殺してもダレンの性癖は発揮されない。超再生などのパワーを使われることなく、安全に元第二位を仕留められるはずだ。

 

「……確かに、私の性癖は使えない」

 

 しかし、彼の思惑通りにはいかなかった。複眼の色が緑から白へと変化したダレンアルファが跳躍し、フレッドの進行方向へ回り込んだのである。

 

「だが、残念だったな。この原典の戦士は原作において、盲目になりながらも周囲の音を頼りに敵を倒してきた戦績がある。視界を封じた程度で、私を止められると思うな!」

『バイオレント・ネクロスラッシュ!』

 

 

 ベルトを操作し、赤き獣は必殺技を解放した。フレッドへ突進し、すれ違いざまに腕のヒレ型カッターで斬りつける。

 

「しぶといね、君」

 

 ふてくされたようにフレッドが吐き捨てた。案の定、今の攻撃でほとんどダメージを受けていない様子である。

 

「でも、そんな初見殺しみたいな能力じゃ何度も通用しないよ。そろそろ終わりに……」

「悪い、遅くなった!」

 

 そのとき、病院の入り口から二人分の足跡が響いた。ツカサたちがもう高音ウイングスを倒したのか、とも思ったが、違う。駆けつけたのは、オメガ珈琲シルバーと超次元ライダーネトルティ来部だった。

 百合・BLレンジャーの初期メンバーが高音兄妹を相手取っている間に、ツンデレプタを撃破した彼らも名古屋から無事帰還できたのである。

 

 

「――助けに来たぜ、ダレン」

 

 珈琲サイブレードを肩に担ぎ、裕介はフレッドを睨みつけた。

 

「先輩方から事情は聞いた。あいにく、俺は超次元ライダー系の原典を持ってねえ。てめえとの相性はバッチリだ。覚悟しろよ」

「ええと、ごめん。敵勢力の下調べは十分にしたつもりだったんだけど、君の名前、ど忘れしちゃったな。何シルバーだったっけ?」

 

 とぼけた調子の牛とゾンビのライダーへ、望み通りに名乗ってやる。

 

「百合・BLレンジャーの追加戦士組、オメガ珈琲シルバーこと早川裕介だ。てめえと……殺し合いに来た!」

 

 

 超次元ライダーキラーの力が効かない相手の登場に、フレッドは徐々に焦り始めていた。もごもごと何か言いながら後ずさる彼へ、裕介は距離を詰める。

 

「どうした? 言ってたんだぜ、俺は。てめえと殺し合いに来たってな。返事がねえってことは、始めちまっていいのかよ?」

「馬鹿言わないでくれ。君と戦うのは、僕に与えられた仕事の範囲外だ!」

 

 チェーンソーを操作し、「タクティカル・ブレイク」を発動。フレッドの飛ばした斬撃は、裕介の放つ「オメガ天衝」で相殺された。否、僅かに押し負けた。

 無敵の力は戦隊には通じず、フレッドが小さく悲鳴を漏らす。

 

 

「お菊さんを連れて下がっててくれ、美明日。超次元ライダーの力を使うお前じゃ、こいつ相手だと分が悪いだろうからな」

 

 敵と対峙したまま、振り返らずにオメガ珈琲シルバーは言った。

 

「し、仕方ない。ここは撤退を……」

 

 ゲーミングキーボードみたく発行する両開きの扉を、フレッドは背後に展開した。シルバーとの交戦を避け、何が何でも逃げ延びる気らしい。

 

「――『零のたてがみ』!」

 

 けれども、彼と扉の間へ一筋の炎が放たれ、逃走を妨害した。驚いて牛モチーフの戦士が跳び退くと、ゲートも消滅する。

 

 

「遅くなってすみません、諸先輩方。俺、専用のマシンを特に持っていなくて、移動に時間がかかってしまいました」

 

 軽く頭を下げながら病院へ足を踏み入れたのは、零騎士ヒョウガだった。裕介と目で合図し、ヒョウガが後方から、裕介が前方からフレッドをじりじりと追い詰める。

 

「観念しろ、悪党。俺たちが来たからには、てめえの好きにはさせねえ!」

「すぐに殺しはしない。お前たちの組織が何を企んでいるのか、原典を解放して何がしたいのか、洗いざらい吐いてもらう!」

 

 サイブレードとゼロライアットの刃を前後から向けられ、フレッドは悔しそうに震えた。何者かと通信しているらしく、時折小声でブツブツ言っている。

 

 

「……ボス。ねえボス、早く次の援軍を寄越してよ。僕の使っている原典は、対超次元ライダー用としては唯一無二の性能だよ。僕が捕まったら困るでしょ。ねえ、早く増援を送ってよ。送ってってば⁉」

「どうやら、上司にも見放されたようだな」

 

 冷たい視線を敵に投げかけ、黒と金の騎士は言った。フレッドはツンデレプタの上司にあたるようだが、さらに上がいる。中間管理職も大変なのかもしれない。

 

 

「観念しろ。お前の負けだ」

『オール性癖・コンバイン!』『マキシマム・ゼロ・タイフーン!』

 

 長剣の柄のボタンを順に押し、零騎士最強の技を発動する。

 

「つまんねえ幕引きだぜ。……『オメガ十字衝』!」

 

 シルバーも剣を二刀へ分離し、漆黒の連撃を放った。

 

「そんな馬鹿なあああああっ⁉」

 

 

 光の刃と黒い斬撃が、前後からフレッドのアーマーを挟み込んで爆砕する。数秒後、彼は変身解除されて仰向けに倒れた。白目を剥き、気絶している。

 彼の変身が解かれたことで、お菊の胸へ加わっていた仮想の激痛も消えたようだ。まだ意識は戻っていないものの、安らかな表情になって眠っている。

 

「さてと。やることは盛りだくさんだぜ」

 

 生身に戻り、裕介は腰に手を当てた。

 

「ひとまず、目を負傷したダレンとお菊さんには手当てが必要だ。美明日には二人のことを頼む。俺と後輩は、この金髪男を縛り上げるぞ」

 




※次回の更新は1週間後の予定です。
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