「ああ、すまない。けれど、他に話せるようなことがあまりないんだよね。性癖や原典の詳しい能力については、LFOのメンバーでさえも知らない。分かっているのは、原典解放を謳いながらも、自分でも多数の原典をストックしていることと、出自を問わず多くの者をLFOへスカウトしているということだけさ」
「……何というか、きな臭いな」
「実際、濡レドランのことを怪しんでいる構成員は多いよ。でも僕たちとボスの利害が一致しているのも事実だし、あえて探ろうとする人は見たことがないね」
と、フレッドは椅子の背もたれへ体重を預け、表情を緩ませた。
「ねえ、お腹が減ってきたんだけど。カツ丼とか用意してくれないのかな」
レジスタンス構成員を惨殺しておいて、何がカツ丼だ。殺された彼は、もう二度とご飯を食べることは叶わないというのに。一同は、彼の要求をガン無視することにした。
あえて「お前がやったんだろ……お前がやったんだろ!!」「カツ丼食えよ…カツ丼食えよ!!」と叫んで、カツ丼を食わせまくるという嫌がらせをする手もなくはない。が、予算がかかるのでやめた。ついでにページも無駄になりそうなので!
「お前たちが使っている、妙な光り方をするゲート。あんなものを生成する能力は、高次元生命体や超次元生命体にはないはずだ。あれはボスの差し金か?」
「察しがいいね」
カツ丼が出てこなかったことにはさほどがっかりしていない様子で、フレッドは応じた。
「元々、超次元生命体の貴族専用ゲートにしたって、生まれたときから得ている力ではない。一部の貴族が造り出した、いわば後付けの能力だ。それと同じように、ボスが開発した新しいゲートの構築能力を分けていただいたのさ。戦いに役立つようにってね」
自分で編み出した力でもないくせに、いちいち偉そうな奴である。高性能なゲートを作った濡レドランは優秀だが、フレッドは別に優秀ではない。
あれだろうか。ハイスペックな機器を使っていると、自分もハイスペックな人間になったと錯覚しちゃうタイプなのだろうか。すごいのは機械であって、使い手ではありません!
「新型ゲートの開発までやってのけるなんて、その濡レドランってボスが何者なのか、ますます気になるわね」
ようやくカイリとの漫才に区切りをつけたツカサが、尋問に戻ってきた。
「超次元生命体なの、高次元生命体なの? それとも、別の何か?」
「それは――」
金髪碧眼の青年が口を開きかけたとき、ジリリリリ、と建物内に警報が響き渡った。
「……どうしたのかしら?」
美明日が眉をひそめた直後、取調室の小窓を突き破り、大量の虫が侵入してきた。どうやら警報が鳴ったのは、無数の虫がBL警察本部の建物へ飛び込んできたからのようである。
その虫たちは、奇妙な姿をしていた。蝙蝠に似ているけども、目が一つしかない。頭が異様に大きく、歪なフォルムである。
「な、何だ⁉」
慌ててVSチューナーを取り出し、まあまあでかいサイズの虫たちを撃ち落とそうとするケイイチロウたち。しかし、変な虫が狙うのは百合・BLレンジャーではなかった。戦隊には目もくれず、フレッドに向かって真っすぐ飛ぶ。
「……やめてくれ。お願いだよ、ボス。勘弁してくれ!」
椅子に縛りつけられている青年は逃げることもできず、ただ恐怖に目を見開き、悲鳴を上げるばかりであった。
「やめろ、やめてくれ。うわあああっ⁉」
虫たちは無慈悲にもフレッドへ接近すると、その体の各所へと嚙みついた。巨大化エネルギーを注入し、哀れな高次元生命体を強制的に巨大化させる。巨大化と同時に、フィーバーゾンビフォーム(フェチ神)への変身も完了していた。
身長五十メートル弱まで巨大化したため、当然ながら取調室は完全に崩壊。拘束も解かれ、フレッドは自由を取り戻していた。にもかかわらず、彼は仮面の下で絶望した表情を浮かべている。
「濡レドランめ。僕を強制巨大化させて暴れさせ、百合・BLレンジャーに倒させることで、口封じしようというつもりだな。クソッ、ボスにさえも見捨てられるなんて……」
否、見捨てられたのはずっと前だ。窮地に陥っても援軍を寄越さなかった時点で、ボスは「フレッドの利用価値はその程度だ」と判断したに違いない。ただ、フレッド自身が負けを認めたくないだけである。
「こうなれば、人間界も道連れだ。君たちも僕と一緒に、地獄へ落ちろ!」
吐き捨て、牛とゾンビモチーフの戦士は歩き出した。目指すは、ダレンとお菊が入院している病院。BL警察本部のすぐ近くだ。超次元ライダー殺しの力を使って、あの二人だけでも仕留めてやるつもりだった。
「させねえよ!」
だが、瓦礫の中から這い出したヒーローが、それを許さない。
フレッドが巨大化して建物が崩れた瞬間、百合・BLレンジャーは変身アイテムを操作していた。全員、無傷で瓦礫の山から脱出する。
「こんな奴、先輩方の手を煩わせるまでもねえ。俺たちで行くぞ、美明日!」
「ええ、早川君!」
オメガ珈琲シルバーと超次元ライダー来部は、それぞれ珈琲ライナーと来部ファイヤーへ乗り込んだ。黒いボディーに緑の脚部を持つ、来部ボクサーへと合体する。
「俺も行きます。騎獣合身!」
超次元界から牛型の巨大モンスターを召喚し、零騎士も巨大化。二体合体してゼロタウラスとなり、ツインゼロソードを構えた。
「……う、嘘だ。この僕が、最後の足搔きすらできずにやられるのか⁉」
戦隊のロボットに対しては、対超次元ライダー用の力は効かない。来部ボクサーのパンチ連打やゼロタウラスの斬撃を浴びせられ、フレッドは防戦一方だった。
「悪いな。一気に決めさせてもらうぜ」
「白黒つけるわよ!」
「自分に溺れる者は、いずれ闇に落ちる!」
来部ボクサーとゼロタウラスが、同時にジャンプした。両者ともに空中で高速の横回転を行いながら、標的へ突っ込んでいく。一分間に三千発のスピードパンチで叩きのめす大技と、黒い稲妻を纏った槍の一閃が連続でヒットした。
「『来部パンチャー』!」
「『野牛零断』!」
「嘘だあああああっ⁉」
断末魔の悲鳴を上げ、超次元ライダーフレッド・フィーバーゾンビフォーム(フェチ神)は呆気なく爆発四散した。今度こそ本当に、跡形も残らずに散った。
今回、ご迷惑をおかけした作品
・ポプテピピック