百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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13 利用し尽くして捨ててやった!

 二大ロボから降り立ったシルバーたちを、「お疲れ」と労うカイリたち。濡レドランによる口封じで取り調べは中断されたものの、巨大化に伴う被害を最小限に抑え、迅速にフレッドを排除できたのは大きい。

 

「まあ、取り調べは今度でもいいだろ。別の奴を捕まえてきてさ」

 

「でも、そいつも巨大化させられちゃったら意味ないじゃない。ていうか、建物を頻繁に壊されても困るわよ」

 取調室を中心とする区画が崩壊してしまった本部を見つめ、ツカサはため息をついた。修繕費用はいくらくらいかかるだろうか。

 

 

「――お初にお目にかかります、百合・BLレンジャー」

 

 

 声を掛けられるまで、一同は彼の存在に気づいていなかった。フレッドを倒したことで騒動は終わったものと思い込み、すっかり安堵していたのだ。

 付近のマンションの屋上から、怪人は青い一対の眼で戦隊たちを見下ろしていた。青い皮膚に銀の鎧。蝉を思わせる彼の外見は、まさしく先刻、フレッドが説明した通りであった。

 

「私は『彗星の濡レドラン』。何、本日はちょっとした宣戦布告に来たまでです。以後、お見知りおきを」

 

 意外とイケボだな、とツカサは場違いな感想を抱いた。

 

 

「噂をすれば、ボスのお出ましかよ。自分の部下が死んだってのにずいぶん冷静だな、オイ」

 

 百合エックスにこう言われ、濡レドランは低く笑った。

 

「フレッドなど、利用し尽くして捨ててやった。所詮、彼はただの雑魚。用があるのは、彼に貸していた対超次元ライダー用の原典だけですよ」

 

 懐から取り出したカードファイルから、怪人は一枚の白いカードを引き抜いた。それを虚空へかざすと、フレッドの死に伴って所持者がいなくなった原典のパワーが、カードへ吸収されていく。

 

「これで良し、と」

 

 原典さえ無事ならば、部下の命はどうだっていいらしい。とんでもないパワハラ上司である。イケボだけど性格はやばいわね、とツカサはやや場違いな感想を抱いた。

 

 

「端的に言って、彼は頭が悪かった。だから、最後の最後まで理解していなかったのです。……やれやれ、私が何の見返りもなく、新型ゲートの力を分け与えていると思ったら大間違いですよ。あれは非常に高スペックな代わりに、使用者の現在位置を常に私が把握できるようになっているんです。裏切ったり、敵に捕まって自白を強要されたりしたら、すぐ分かります」

 

 人間界でいうところのGPS機能みたいなものか。濡レドランはフレッドが捕まったことをその機能で察し、あの妙な虫を使って口封じにかかったのだろう。

 

「いい性格してやがるぜ」

 

 カイリは舌打ちした。

 

「けど、残念だったな。ツンデレプタに高音ウイングスにフレッド。計四人も部下を投入したのに、百合・BLレンジャーの誰も仕留めきれなくてよ。ダレンとお菊だってピンピンしてるぜ。ゴークイーンズの治癒能力でも使えば、あとはもう一発で……」

「ゴークイーンズ? 助けに来やしませんよ、そんな連中は」

 

 

 見なさい、と怪人は遥か遠くを指差した。さっき、巨大化したフレッドが歩き回っていた辺りだった。

 

「あっ!! ゴークイーンズ⁉」

 

 牛モチーフの戦士に踏みつけられたのだろう。深く抉れたアスファルトの上に、泡を吹いて三人の女王は倒れていた。いつも身に着けているサングラスが、粉々に割れている。

 彼女たちの近くには、あちこちがひしゃげたママチャリが散乱していた。たぶん、ママチャリでBL警察本部へ向かう途中だったのだろう。

 

「道路交通法が厳しいからあまりバイクに乗れない」的な昨今の特撮あるあるではなく、シンプルに専用マシンもないし予算もないから自転車で移動していたのだ。頑丈なマシンに乗っていれば怪我も軽く済んだろうに、さすがに気の毒になる。以前にも話が持ち上がったことはあったが、早急にゴークイーンズへ専用マシンを用意してあげた方が良さそうだ――まあ、その前にまずは手当てが必要だけれども。

 

 

「実を言うと、フレッドはLFO上層部についてほとんど何の情報も持っていませんでした。したがって、口封じしなくてもさほど問題はなかったのですが、ついでに敵戦力を削げるとなれば話は別。あの女たちがBL警察本部へ近づいたタイミングで巨大化させ、巻き添えにしてやりましたよ」

 

 クックッ、と意地悪く微笑む濡レドラン。

 

「四人も部下を投入して、誰も仕留めきれなかった? いえ、十分な戦果ですよ、百合エックス。レジスタンスの主戦力である二人を戦闘不能へ追い込み、回復要員のゴークイーンズにも重傷を負わせたのですから。対してこちらは、原典さえ回収できれば、戦闘員などいくらでも替えが効きますしね」

 

 

 怪人の背後に、ゲーミングキーボードみたく発行する新型ゲートが出現した。それを通り抜け、LFOのボスは悠然と戦場から立ち去ろうとする。

 

「ちょっと、待ちなさいよ!」

 

 切羽詰まった調子で、ツカサが叫んだ。

 

「あんた一体、何が目的なわけ? 原典を解放して、集めた原典を使って何かするつもり?」

「――お前たちはすぐにくたばる身。知る必要はありません」

 

 冷徹な台詞だけを残して、濡レドランは人間界から消えた。

 

 

 Liberation from Origin、「LFO」との戦いは、開幕から非常に厳しい状況となった。敵の一般戦闘員は見事撃退した一方で、ダレンとお菊、ゴークイーンズが戦闘不能に陥ったからである。

 戦え、百合レンジャー! 頑張れ、BLレンジャー! 濡レドラン率いる恐怖の軍団に、屈してはならない!

 

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