百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

342 / 394
14 輝く明日へお見舞いパワー

 まあそんなわけで、ダレンとお菊の病室にはゴークイーンズたちが追加された。三人とも、首から下を包帯でぐるぐる巻きにされている。俗に「ニチアサ巻き」と呼ばれる、あの何とも形容しがたい妙な巻き方だった。

 なお、ダレンは「私以外は全員女性の病室だが、これで良いのだろうか」と思わなくもなかったが、誰も何も言わないので黙っておくことにした。個室を与えられても、それはそれで寂しい。

 

 

「屈辱ですわ~!」

 

 お菊と二人だったときは比較的静かだった病室も、三人組がやってきたことで随分と賑やかになっている。

 

「敵にやられただけならまだしも、やられ方が『巨大化した敵に踏まれた』なのが絶妙にダサくて嫌ですわ~! 怒りの導火線を燃やしますわ~!」

「危険の意味なんて、忘れましたわ~! 何かを言う前に、ぶつかりますわ~!」

 

 レッド、イエロー、ブルー・クイーンは、口々に悔しがった。

 

 

「こんにちは。」

 

 と、病室のドアが開かれ、エルフの魔法使いが入ってきた。片手には、果物が山盛りに入った籠を提げている。

 籠の中に収まっているのは、みかん、バナナ、ぶどう、メロン、苺、スイカといったラインナップだった。なぜか隅の方に、松ぼっくりやドングリ、クルミも入っている。お見舞いにしては、なかなか独創的なフルーツの選び方である。

 否、彼女が選んだと言うより、最初からそういう内容のセット販売だったのだろう。籠に貼ってあるシールによると、商品名は「フルーツバスケット・極み」のようだ。「大・大・大・大・大特価!!」と、でかい値下げシールも貼られていた。

 

 

「BLACON・SUNにゲートを開けてもらって、お見舞いに来たよ。ダレン、お菊。あと、よく知らない人たち。」

「よく知らないとは失礼な! 私たちは、かの有名な特命女王戦隊・ゴークイーンズSなのですわ~!」

「そうなんだね。」

 

 表情を変えずに応じたフィリーレンは、あまり興味がなさそうだった。ベッド脇に「はい、これ。」と果物の籠を置き、五人を見回す。

 

「さっき百合・BLレンジャーの人たちにも会って、状況を聞いたよ。もし迷惑じゃなかったら、しばらくの間、私にダレンたちの護衛をさせてもらえないかな。」

「護衛か……」

 

 考えてもみなかったと言うように、傷を持つ男は呟いた。

 

 

「私がダレンたちを身辺警護すれば、百合・BLレンジャーはこっちに戦力を割かなくて良くなるでしょ。その方が、彼らも戦いに専念できると思ってね。」

「確かに、フィリーレンには対超次元ライダー用の原典が効きにくい。今後、もしまた濡レドランが同じ原典で仕掛けてきたとしても、貴様がいれば問題なく対処できるだろう。何より、一度は私を下したほどの実力者だしな」

「それほどでもないよ。」

 

 とは言うものの、魔法使いはむふーと得意げになっていた。分かりやすい奴である。

 

 

「でも、護衛をしてもらうとして、どこで寝泊まりするつもりなの?」

 

 お菊が尋ねた。

 

「近くのホテルに泊まろうと思ってるよ。」

「……ちなみに、人間界の通貨は持ってる?」

「ううん。」

 

 首を振るフィリーレン。何とこのエルフ、カードショップを訪れた一件から何も学習していなかった。

 

「仕方ないわね、ほらこれ」

「ありがとう。大事に使うね。」

 

 お菊が財布から取り出した数枚の万札を、魔法使いは恭しく受け取った。何だか、お母さんから小遣いを貰う子供みたいになっている――二人の年齢的には、むしろフィリーレンの方がお母さんどころかお婆ちゃんなのだけれども。

 

 

 来客は、フィリーレン一人ではなかった。

 

「お菊さん! 大丈夫だったかい⁉」

 

 勢いよくドアを開けて滑り込んできたのは、ピーター・バーガー青年だった。どうやら、見舞いのためだけに来日してくれたらしい。

 

「……あっ、どうも。初めまして」

 

 フィリーレンやゴークイーンズなど、あまり絡みのない顔ぶれもいたため、軽く自己紹介することも忘れない。

 

「来てくれたのね、ピーター。ありがとう。私なら何とか大丈夫よ」

 

 彼女は微笑み、それから布団の内側で何やらゴソゴソやり始めた。

 

「あなたのことだから、いつか見舞いに来るんじゃないかと思ってたの。そのときに渡そうと思っていたものがあるわ」

 

 

 お菊が布団から出したのは、彼女が普段使用しているオリジナルのリボンズドライバー。さらに、自身の持つ全スタンプであった。そんな大事なものを布団の中にしまうな。

 

「こんなことを頼むのは、勝手だと思われるかもしれないけど。私の代わりに戦ってほしい」

「えっ⁉ でも、こんなにたくさん貰っても、僕一人じゃ使い切れないし……」

 

 言い澱み、一旦は断ろうとしたピーター。しかしその瞬間、彼の脳裏をアメリカのヒーローたちの顔がよぎった。

 ハットマンをはじめ、ピーターの祖国では数多くのヒーローが活躍している。帰国後、彼らのうち誰かにドライバーとスタンプを渡し、一緒に戦ってもらうというのはどうだろう。

 元々、オリジナルのリボンズドライバーは、米国在住のアイロンマンことトニー・スタートがピーター用に開発したものだ。それをアメリカのヒーローが使うことが別段おかしなわけではないし、むしろ(色々な理由があるとはいえ)今お菊が持っている方がおかしい。

 

 

「……いや、やっぱり受け取るよ。このベルトと、お菊さんの気持ち」

 

 青年は歯を見せて笑った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定