百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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15 濡レドランを迎撃せよ!

 泊まるホテルを探すというフィリーレンとピーターは、連れだって病院を後にした。その約十分後、本日最後の来客がやってくる。

 

「……誰だ? 貴様ら」

 

 見知らぬ男たち三人の姿をぼんやりと捉えて、ダレンはベッドの上で身構えた。といっても、まだ視力が全快していないため、明後日の方向を向いてファイティングポーズを取ったのだけれども。

 

「あ、あの、ゴークイーンズのMの方です。初期はタイツマンとか名乗ってました」

 

 そう、彼らである。途中から三人揃わなくなって二人になり、ついには一人になり、挙句の果てにゴークイーンズだけがフィーチャーされて男どもは出番ゼロみたいな回も多々あった、彼らである。黒タイツ姿でないと、誰なのか全く分からなかった。

 

 

「つまらないものですが、良ければどうぞ!」

 

 タイツマンらが差し出した果物籠には、ザクロとブラッドオレンジ、レモンが入っていた。こちらもフィリーレンのものと同様セット販売だったらしく、「狂い咲き&インクレディブル」と書いてある。2割引きのシール付きだ。

 

「いやザクロとブラッドオレンジはともかく、レモンは単品で食べるの難しくないかしら⁉ 何なの? 唐揚げにでもかけろってこと??」

 

 首を捻っているお菊をよそに、男たちは女王の元へ駆け寄った。ベッド脇に跪き、首を垂れる。

 

 

「ご無事で何よりです、我らが女王」

「ですが、その怪我ではしばらくは戦線復帰は厳しいでしょうね……」

「何ともおいたわしい……」

「なら、さっきのピーター青年みたく、あなたたちが代わりに戦えば良いのですわ~!」

 

 底抜けに明るい声を出して、レッド・クイーンは布団の中から変身用ブレスを取り出した。この病室の患者は、皆布団の中に物を隠す習性があるらしい。

 

「真のSMプレイは、SとMの立場逆転すら可能にしますわ~!」

「これまでは私たちがSでしたが、怪我が治るまではあなたたちがSになって、人に隠れて悪を斬ってほしいですわ~!」

 

 ブルーとイエローも、たちまち乗り気になった。

 

 

「し、しかし、女王をM扱いするなど恐れ多いですし……」

 

 下僕たちは渋ったが、女王たちの熱意に押されては断りづらい。散々迷った末、「では、試しに変身してみましょう」とアイテムを手にした。

 

「――レッツ、モーフィン!」

 

 光に包まれた三人は数秒後、真っ黒なアーマーを纏っていた。サングラス型のアイレンズを持ち、これといって余計な装飾が付いていない、シンプルかつヒロイックな形態である。

 

『トランスポート!』

 

 胸のハーネス型ベルトを軽く叩くと、専用武器が召喚される仕組みになっている。が、なぜか出てきたのは、デジタル一眼レフカメラと双眼鏡だった。これでどうやって戦えって言うんだ。

 

 

「……」

 

 手の中に出現したカメラと双眼鏡を眺め、沈黙する下僕たち。もしかしたら、どこかスイッチを押したら武器に変形するのかもしれない。どこにスイッチがあるのかは分からないけども。

 

「やっぱり、違う」

 

 やがて、下僕のうち一人――かつてビート・タイツを名乗った男がこぼした。

 

「女王たちがゴークイーンズへ変身したときは、もっとSMプレイっぽい衣装だった。武器だって、こんなデジカメとかじゃなかった。鞭を召喚していたはずです」

「それは、あなたたちがまだSの道を極めていないからですわ~! ゆっくりと時間をかけて鍛えれば、いつかきっと私たちのようになれますわ~!」

 

「……いえ、違うんです」と、元スタッグ・タイツ。

 

 

「やはり、我々の本質はM。Sになることはできない。ゴークイーンズはあなたたちしかいない。あなたたちが最高にSだからこそ、我らはどこまでもMになれる。それは、これからも決して変わりません」

「だから、早くお怪我を治して下さい」

 

 ビートでもスタッグでもない、最後の一人も真剣な表情で言う。

 

「ゴークイーンズに変身する資格があるのは、世界でたった三人だけ。我らが女王だけです。この変身アイテムは、お返しします」

「「「げ、下僕たち~!!!」」」

 

 忠誠心の厚いタイツマン一同に感極まったのか、彼女たちは目を潤ませて叫んだ。皆で肩を抱き合い、おいおいと涙を流す。何とも暑苦しい連中である。

 

 

 タイツマンたちも帰って行った頃には、日は没していた。

 静かになった室内で、フィリーレンらがくれた果物をつまむ。そうしながら、ダレンはお菊に小声で言った。

 

「レジスタンスのメンバーが、原典のイメージ付与を快く思っていないことは承知している。リボンズドライバーを使って間接的に原典のパワーを引き出すことはあっても、自らの肉体へ直接原典を取り込む者がいないように、無貌が死んだ今でも基本方針は変わっていないのだろう」

「どうしたのよ、急に」

 

 籠の中に転がっているどんぐりを見つめ、お菊が返す。

 

 

「だが、現状のままではダメだ。リボンズドライバーの力では対抗しきれない敵も増えつつある。レジスタンスも装備を一新し、戦力アップを図るべきだ。――たとえ、その結果として、方針を曲げることになったとしても」

「……考えておくわ」

 

 お菊は唇を噛んだ。

 彼女は今、部下がフレッドの手にかかったときのことを想起していた。考えようによっては、彼が死んだのは量産型リボンズドライバーの性能が低かったからとも言える。もっと強力な装備を使っていれば、力及ばず倒れることもなかったかもしれないのだ。

 こうして、静かに夜は更けていった。

 

 

 

 人間界では負傷したヒーローたちが手当てを受け、ベルトを譲渡したり敵への対策を練ったりしている頃。超次元界にも動きがあった。

 

「フィリーレンが人間界へ渡ったことで、守りを固めたつもりなのでしょうが……ぬかりましたね、百合・BLレンジャー。超次元界の方は隙だらけですよ」

 

 カラフルに光る扉を抜け、濡レドランが小高い丘へ降り立ったのである。彼が見下ろすのは、テントを張って野営しているレジスタンス組織、イーシュ・バール。

 

「BLACON・SUNと雑魚戦闘員しか残っていないレジスタンスなど、もはや対超次元ライダー用の原典を使うまでもない。この『彗星の濡レドラン』が、直々に叩き潰してあげましょう!」

 

 

 青い皮膚に銀の鎧の怪人は、ニヤリと笑って丘から飛び降りようとした。しかし、彼の頬を光の矢が掠める。続けて、光線も。

 

「誰が隙だらけだって?」

「ここからは、私たちのターンだ!」

 

 羽ペンのような形の短剣を構えたヤンデレキラーと、専用銃を敵へ向けたイセイナイトが、濡レドランの行く手に立ち塞がったのである。

 




※次回の更新は1週間後の予定です。
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