「レジスタンスの主戦力が人間界に行った後、お前たちがここを狙ってくるのは予想済みだ。だから、この辺で張ってたってわけさ」
ヤンデレモードへ突入し、全身から黒いトゲのようなものを生やしたヤンデレキラーが言う。
「ほう、これはこれは。ですが、たった二人で私を止められるとでも?」
「――二人ではない。四人だ!」
そこへ、さらに二つの影が馳せ参じた。
一人は、既にロシュシルバーへと変身を終えている露鬼。もう一人は、魔法の杖を携えた機械怪人、クヴァルだった。百合・BLレンジャーにもレジスタンスにも所属していない、アウトローな四人が手を組んだのである。
個々の戦闘能力は、決して戦隊にも引けを取らない。中でもヤンデレキラーは「ヤンデレモード」時に爆発的な攻撃力を発揮できる上、不死身能力を備えている。他殺願望性癖のように、敵の能力を封じられるパワーでも持っていない限り、この即席パーティーを攻略するのはかなり困難なように思えた。
「調査によるとヤンデレキラー、お前はちょっとやそっとでは死なないようですね。厄介な相手だ」
四人に包囲された濡レドランは、長槍を召喚して両手で握った。ここまで距離を詰められているのだ。ゲートを開いて逃げることすら難しい状況に陥っているというのに、余裕そうに見える。
「ですが、だからこそ……痛めつけ甲斐があるというもの!」
そう言い放ち、青い怪人は翼竜モチーフの戦士目がけて突進した。槍を渾身の力で突き出し、腹部へ深々と突き刺す。
「ハッ、効かねえよ!」
だが、ヤンデレキラーは倒れない。腹部の傷からは出血もほとんどなく、すぐに塞がってしまう。
「星を滅ぼし、明日を変えられる、絶大な力を俺は手にしているんだぜ。邪魔をするのなら、誰であろうが許さない!」
お返しだとばかり、白の戦士は濡レドランへ飛びかかった。両腕のトゲで何度も斬りつけ、ダメージを与えていく。
「くっ……」
鎧から火花を散らし、後退する濡レドラン。彼の背後へ回り込んだイセイナイトが、必殺技の「女体化ダイナミック」を放った。
「――パニッシュ!」
専用銃へ赤い弾丸のようなパーツを取り付け、緑の光弾を連射する技である。それを背中に受けた濡レドランは、前のめりに吹き飛ばされた。
命中と同時に、イセイナイトの性癖「女体化」の効果が発動する。
『私の性癖は「女体化」。その能力により、男性に攻撃をヒットさせたとき、1/2の確率で相手を女体化させることができる。もう一度同じ相手にヒットさせると元に戻るという欠点こそあれ、敵の体格を変えて、思うように戦えなくさせるのだ!』
ビッグ・ファースト戦において、彼はこのように自身の性癖を説明していた。あのときは敵が無敵能力を持っており全然効かなかったのだが、今回は別だ。はたして濡レドランは女体化し、丸みを帯びたボディーに変化してしまった。背が少し縮み、胸とお尻が心なしか膨らむ。
「おいイセイナイト、敵の造形を可愛くするな! 攻撃しづらくなるだろうが!!」
「そうだそうだ!」
決まった、と小さくガッツポーズしたイセイナイトだったけれども、露鬼とヤンデレキラーからブーイングがあったことには閉口した。
「すまない。では、もう一度攻撃を……『女体化メタリック』!」
武器をソードモードへ変形させ、強烈な一閃を浴びせる。
「ぐああっ⁉」
再び男性へ戻った濡レドランが、よろめく。反撃の隙を与えず、彼の左右からクヴァルとロシュシルバーが接近した。
「レーザープール!」
シルバーがロシュハスラーロッドを素早く振るい、緑色の光を展開。その中へ青い怪人を閉じ込め、三つの宝珠を光の中へ投じた。
「『破邪露出球』。邪気、玉砕!」
「相手の正体が分からない以上、『超次元生命体を殺す魔法』が効くかどうかは微妙ですね。ならば、これで。『杖をハンドガンに変える魔法』!」
クヴァルの援護射撃を受けつつ、露鬼が宝珠をロッドで突き、超高速で撃ち出した。
鞭状のエネルギーを振るって迎撃を試みるも、及ばず。二人の合体技をまともに喰らい、濡レドランの体は大爆発をバックに高く浮き上がった。
「……フッフッフ。そんなものですか、寄せ集めの戦士たち? 私はまだ、致命傷を負ってなどいませんよ。『彗星弾』!」
どう見ても絶体絶命なのに、まだ余裕そうな態度だ。自由落下しながらも青い光弾を連射してくる辺り、ポジティブにもほどがある。
「だったら、望み通りに殺してやるぜ!」
いい加減に引導を渡すべく、ヤンデレキラーが地面を蹴りジャンプした。降り注ぐ光弾を腕で薙ぎ払いつつ接近し、濡レドランの胸部へ、両手のトゲを思い切り突き刺す。
「お、おのれっ!」
苦しそうに呻く怪人を、ヤンデレキラーは軽く蹴り飛ばした。そのまま落下するのかと思いきや、召喚しておいたヤンデレーオーの操縦席へ、仰向けに倒れるようにして乗り込む。
「これで終わりだ。ヤンデレ必殺、『病みスティンガー』!」
翼竜とステゴサウルスが二体合体したスリムな巨大ロボが、槍を高速で投擲した。必殺の一撃は濡レドランの胴体に風穴を開け、刹那、大爆発で包む。
ビッグ・ファーストには効かなかった技だが、やはり普通の相手には刺さる。それも、相手が巨大化していないなら尚更だ。
「さすがにちょっと……」
「オーバーキルな気がしますね」
容赦ない攻撃を前に、露鬼とクヴァルは若干引いていた。
引いていたのは、間違いなく敵を倒したと思っていたからだ。
ヤンデレーオーから降りた白い戦士が、ふうと息を漏らす。
「口ほどにもなかったな。あんなのが組織のボスをやってるだなんて、信じられない。その組織、俺が乗っ取ってやろうかな」
「冗談でもそんなことを言うな」
イセイナイトにたしなめられ、頭を掻くヤンデレキラー。和やかな空気が流れたのも束の間、一同は信じられない光景を目にした。
「……クックック。すべて、計画通り」
何と、先刻起きた大爆発の中から、濡レドランが地上へ降り立ったのである。腕組みをして、芝居がかった仕草で四人の敵を眺め回した。
「よくぞ私を殺してくれましたね。礼を言いますよ、即席パーティーの諸君!」