奇妙なことに、彼は姿形が変わっていた。銀の鎧の代わりに、ゲジゲジを連想させるような、茶色く生物的なデザインのアーマーを纏っている。両腕には長いかぎ爪が備わっていた。
「何だ、その姿は⁉」
身構えた露鬼に、新生濡レドランはもったいぶるように言った。
「私の原典にはいくつかの能力がありますが、そのうちの一つを教えて差し上げましょう。『倒されるたびに、名前と姿を変えて復活する』というものです。ま、復活できる回数に限りはあるようですがね。今の私の名は……『チュパカプラの濡レドラン』!」
「迂闊だったか」
舌打ちし、シルバーがロッドを強く握る。
「思えば俺たちは、お前の原典や性癖の能力を全く知らなかった。そういう相手へ、むやみに攻撃を仕掛けるべきではなかったんだ。中には他殺願望や死体嗜好症のように、自分や他者が瀕死状態になることで初めて効果を発動するタイプのものもあるからな」
「かと言って、レジスタンスを見殺しにするのも違うでしょう。最善を尽くしたと思いますよ、私たちは」
彼を励ますように言い、ハンドガンを電磁レイピアへ変化させるクヴァル。
「……くだらねえな」
二人がチュパカプラの濡レドランを警戒する一方、ヤンデレキラーはいまだ状況を楽観していた。
「倒されるたびに、名前と姿を変えて復活するだと? しかも、復活回数に制限あり? そんなの、俺の不死身の力の完全下位互換でしかないだろ。俺はそもそも、一度だって死にはしないんだからな!」
何度でもあの世へ送ってやるぜ、と笑い、濡レドランへ突進。先ほどと同じく、両腕のトゲで果敢に攻め立てるバトルスタイルを取った。
だが、ゲジゲジのような茶色い装甲により、濡レドランは防御力を増していた。ヤンデレモードの猛攻を受けてもそこまで怯んだ様子はなく、逆にかぎ爪で何度かカウンターを決めた。片腕でトゲを受け止めつつ、もう片方の腕でパンチや斬撃を叩き込む、といった風である。
「馬鹿め。姿が変わったということは、能力も変わったということ。さっきと同じ戦術が通用すると思ったら、大間違いですよ」
四度目の斬撃を浴びせ、ヤンデレキラーを後退させたのち、彼は嘲笑した。
「まだ分かっていないようですね。先ほどの戦いで、私はわざとやられたのですよ。あえて全能力を引き出さず、一方的にお前たちの必殺技を受けて散ったのです。第二形態である『チュパカプラの濡レドラン』へ移行し、その力で、お前たちを完膚なきまでに叩きのめすためにね!」
「な、何をっ⁉」
動揺する四人を横目に、茶色い怪人は地面へ右手を突いた。すると、円筒形の箱が出現する。
「冥途の土産に、良いことを教えてあげましょう。これは『Ⅼサイズの箱』と言って、対象を内部に吸い込んで封印する力を持っています。いくつかある私の形態のうち、この形態でしか使えないアイテムです」
「……ま、まさか!」
普段は落ち着き払っているイセイナイトまでもが、取り乱していた。皆余裕を失っていて、Ⅼサイズの箱とかいう変なネーミングに誰もツッコまない。
「そう、そのまさかです。不死身能力を持つヤンデレキラーが出てきたのを見たとき既に、私はこの箱を使ってお前たちを封印する作戦を立てていた。いくら不死でも、封印してしまえば問題ありませんからね。お前たちはずっと、私の掌の上で踊らされていたのだよ!」
「……まずい。逃げるぞ!」
露鬼が狼モチーフの銀色のバイク、ロシュローダーを召喚して跨った。クヴァルを二人乗りさせ、慌ててこの場から離れようとする。
イセイナイトも自身をライオン型メカモンスターへ変形させ、ヤンデレキラーも再度巨大ロボへ乗り込んだ。
「無駄な足掻きはやめてもらいましょうか。どうせ、私からは逃げられないのですからね!」
チュパカプラの濡レドランが、Ⅼサイズの箱の蓋を開いた。箱から放たれる凄まじい吸引力が、全力で撤退を決行したにもかかわらず、四人の戦士を一気に引き寄せる。
「うわああああーっ⁉」
ほんの一、二秒のうちに、四人は箱の中へ吸い込まれていた。どういう原理なのだろうか、露鬼のバイクやヤンデレーオーなど、巨大なサイズのものも超圧縮して吸い込んでしまった。
「――封印、完了」
Ⅼサイズの箱へ元通りに蓋をして、濡レドランは満足げに息を吐き出した。
「レジスタンスの構成員などは、いつでも始末できる。まずはこの箱を、戦隊どもに見つからない場所へ保管しておかなくては。封印を解かれるようなことがあれば大変ですからね」
そう独り言ち、ゲートをくぐって姿を消した。