メラ・メロンパンを味方に引き入れ、戦力は十分。そう判断したチュパカプラの濡レドランは、彼女ともう一名を伴い、人間界への侵攻に踏み切った。
ゲートが繋がった先は、横浜の繁華街。先日降り立ったのが田舎の秦野市だったから、その反動で都会を選んだのだろうか。濡レドランはさっそく、目に付いた家電量販店へかぎ爪から青い光線を撃ち込んだ。たちまち、ビルの外壁が派手に爆発する。
「……くだらん」
大慌てで逃げ惑う市民たちを睥睨し、怪人は嘆息した。
「人間どもが買い求めている電子機器など、どうせあと十年もしないうちに、ゴミのような中古価格で取り引きされるようになるに決まっている。パソコンなどは特に、古いバージョンになればなるほど無価値ですからね。それに比べて、完結から何年経とうが色褪せぬパワーを発揮する原典の、何と素晴らしいことか」
「いや、確かに古いパソコンは値下がるだろうけどよ、レトロゲームがブームになって高騰した的な例もあるから分かんないだろ」
ていうか破壊活動やめろよ、と喚いているカイリを筆頭に、病院待機組を除く百合・BLレンジャーが駆けつけた。通報を受け、文字通り(マシンで)飛んできたのだった。
「お前らLFOの狙いは、俺たちが使ってる原典だけだろ。一般人に手を出すな!」
「話が早いですね」
ゲジゲジモチーフの怪人は微笑し、後ろを振り返った。
「では戦いを始めましょう……と言いたいところですが、その前に、今日私が連れてきた期待のルーキーと、他一名をご紹介させていただこう」
「お、おう」
濡レドランの背後から姿を現したのは、金髪のガングロギャルと、鮫モチーフで陣羽織を羽織った怪人。先にギャルの方が、横☆ピースをしながら名乗った。
「あーしは、『神殺しのメラ・メロンパン』だし! よろしくだし!」
「……は?」
濡レドランのときと全く同じリアクションをする、戦隊一同。
「何だ、あの子。変な名前だけど、お笑い芸人か?」
「ぐはっ⁉」
ひとかけらの悪意もなく、ただ純粋に推測したケイイチロウの一言が、メロンパンのガラスのハートをぐさりと貫いた。ふらふら後ずさりつつ、ギャルは「ち、違うし!」と懐からドライバーとバックルを取り出す。
なお、見た目が王道な黒ギャルと化しているのは、協力する見返りとして濡レドランに援助を受けたからだと思われる。
「ミレニアムズのあーしは、自称『神』、ゼニスをも倒せる力が欲しかったんだし! だからLFOに入って、お前らをぶっ飛ばすし。変身!」
『ダークネス・ブースト! クロス・ギャール!』
黒い狐の戦士へ変わったメロンパンは、召喚した漆黒の剣を構えた。
「こちらは、ミレニアムズのメラ・メロンパンです。性癖は『黒ギャル』で、自身がギャルメイクをしているとき、ネイルアートを使った引っかき攻撃の威力がアップします。もっとも、彼女は剣主体で戦うため、それが戦闘で活かされることはまずないでしょうが」
ご丁寧に紹介してくれた濡レドランが、「では次」と鮫怪人の方を見やる。
「――地球の戦隊たちよ、貴様らと戦うのを楽しみにしていた。だが、今から行うのは、ほんのウォーミングアップ。頼むから、がっかりさせてくれるなよ?」
片目にメカニカルな眼帯を付けた怪人は、腕組みをしてこう言った。いかにも強そうで、只者ではない雰囲気を漂わせている。
「かつての次元七本槍・七の槍にして、LFO三英雄が一角、『SUNダール』参上!」
「次元七本槍??」
首をかしげているツカサたちに、ナオヤが「聞いたことがある」と囁いた。
「次元四天王の配下だった、隠密行動を得意とする特殊部隊だ。人間界の侵略にもほとんど関与せず、人も知らず世も知らず活動していたという。まさか、まだ生き残りがいたとは……」
ということは、SUNダールの正体は高次元生命体なのだろう。超次元生命体より能力的に劣るにもかかわらず、幹部ポジと思しき「三英雄」に選ばれたというのだから、その実力やいかに。
「LFOという組織は、第一に元無貌支持派、第二に高次元生命体、第三にそれ以外と、三つの派閥から成る」と濡レドラン。
「私はそれぞれの派閥に一名のリーダーを置き、管理しているのですよ。彼は、か弱い高次元生命体をまとめている三英雄です」
その台詞に小馬鹿にしたような響きを感じ取り、SUNダールはややむっとして続けた。
「名は体を表す。太陽を冠する名の通り、俺の性癖は『日焼けフェチ』だ。そして、能力は……」
腰に提げていた刀を抜き放ち、よく通る声で告げる。
「太陽光を自在に屈折させ、対象へ集中的に当てることができる。たとえるならば、巨大な虫眼鏡でも使っているかのようにな!」
刹那、一点集中された太陽光が百合・BLレンジャーを襲った。
「日焼けフェチ」と「黒ギャル」。新入りのメロンパンと手練れのSUNダールの二人を濡レドランが連れてきたのは、パワーバランスを取るためだったりするのだろうか。
似て非なる二つの性癖の使い手が結託し、正義を叩き潰そうとしている。
「怪盗チェンジ!」
「警察チェンジ!」
「『BLファイヤー』!」
「インストール! 『オメガ珈琲シルバー』!」
『超次元ライダー・ネトルティ来部!』
「騎士転生!」
咄嗟に変身し、横へ転がった戦士たち。はたしてSUNダールが狙ったのは、その中のBLファイヤーだった。集約された日光が、肩アーマーをどす黒く焼き焦がしている。
「貴様、トランガだな? 高次元生命体でありながら次元大魔王を裏切ったという、あのトランガだろう。貴様のような不届き者は、真っ先に始末してくれるわ!」
言うが早いか、鮫怪人は自身の姿を透明にして、ナオヤへ忍び寄った。戸惑う彼へ背後から斬りつけ、ダメージを与える。
「うわっ⁉」
「驚いたか。光の屈折率をいじれば、短時間なら光学迷彩の真似事も可能なのだよ」
敵の姿が見えなければ、BLファイヤー得意の凍結技も当たらない。圧倒的優位を築いて勝ち誇るSUNダールだったが、額に光線がヒットして呻く。
「――戦いに私情を持ち込むな、馬鹿め。お前はただ、私の命じた通りに戦っていればいいのだ!」