BLファイヤーばかり狙いおって、と苛立ちを見せる濡レドラン。光線は彼が放ったものであった。
「高次元生命体の分際で、あまり調子に乗らないでいただきたい」
「……了解した」
ぐっと堪え、SUNダールが不承不承頷く。ナオヤを執拗に狙うのはやめ、他の百合・BLレンジャーへと向き直った。
「では、改めて。次元忍法・『自在縄』!」
すると、鮫怪人の手から無数の光の縄が伸びた。それはカイリたちの体を縛り、強い力で空中へ持ち上げる。
「おわ~っ⁉」
「先輩方!」
ナオヤとヒョウガだけが、SUNダールの毒牙から逃れていた。諸先輩方を助けに行こうとした零騎士の行く手を、しかし、メロンパンが遮る。
「させないし!」
バックルに手を触れ、彼女は何やら不思議なパワーを発動した。
「濡レドラン様があーしにこの原典を授けたのは、零騎士ヒョウガ、あんたを確実に足止めするためだったんだし!」
「……俺を、足止め?」
ヒョウガは長剣を構え、警戒した。
先刻、濡レドランはメロンパンのことを「ミレニアムズ」だと紹介した。ということは、ゼニスの体内にいた時間も含め、彼女は千年以上生きている超次元生命体。ヒョウガの「年上好き」性癖は年齢差が大きければ大きいほど威力絶大になるので、むしろメロンパンからすれば相性は最悪レベルだと思うのだが。
一体どんな手を使う気だ、と身構えていたところ、自分の体が四つの人格に分離したような、奇妙な感覚があった。そのうちの三つは束の間消失し、残った一つだけがヒョウガの中に戻る。
「……」
なぜだろう。急にオカリナを吹きたくなってきた。
「ふっふーん! あーしの原典は、相手の力、知恵、運を吸い取って弱体化させるし! 残りカスみたくなったあんたなんか、怖くも何ともないし!」
いかに零騎士がパワーアップしようとも、その力をすべて吸収すれば怖くない。
無気力に佇むヒョウガへ、メロンパンは力任せに斬撃を浴びせた。
「おい、なんかヤバそうな気配がするぜ⁉」
「こうなったら、強化変身して脱出するわよ!」
「自在縄」で拘束され、宙へ持ち上げられてしまったカイリとツカサは、小声で頷き合った。手の中に警察手帳型アイテムを用意し、「エマージェンシー!」と叫ぶ。
「……計算通りです」
けれども、濡レドランの方が一枚上手だった。彼はすかさず「Lサイズの箱」を召喚し、箱の蓋を少しだけずらしたのだ。
フィリーレンが蓋を開けてイセイナイト救出に成功したように、箱の所有者以外が蓋を開けた場合は、中身の解放のみを行える。だが、所有者本人が開けた場合は、どれを解放するのか、あるいはどれを吸収するのか、自由に選択できる。Lサイズの箱はそういう仕様だった。
「お前たちに、VS・スワットモードは使わせませんよ!」
「そ、そんな⁉」
ツカサが悲鳴を上げるも虚しく、一同が握り締めていた警察手帳型アイテムは全部、円筒形の箱の中へ吸い込まれてしまった。素早く、濡レドランが蓋をする。
「これで、百合・BLレンジャーは逆転の秘策を失った。やれ、SUNダール!」
「……御意」
恭しく頭を垂れたのち、鮫怪人は腕を上下左右へ振り回した。当然、そこから伸びる縄に絡めとられているカイリたちも、めちゃくちゃにシェイクされている。
「がっかりしたぞ、百合・BLレンジャー。貴様らの力はそんなものか!」
最後に一際強く振り、一同をアスファルトへ叩きつけた。
「とどめだ。次元忍法・『JAWS・GUY(ジョーズ・ガイ)』!」
鮫の背びれ型の破壊エネルギーを纏い、SUNダールは戦隊たちに向かって高速突進した。ものすごい勢いで体当たりを喰らわせ、次々に弾き飛ばす。
「……この野郎! VS・スワットモードを封じたら勝てると思ったら、大間違いだぜ!」
だが、さすがは歴戦のヒーロー。すぐにはノックアウトされず、裕介、美明日、カイリ、ツカサの四名は気力を振り絞り立ち上がった。
「『BANG・解』。『喫茶斬月』!」
「『大紅蓮NTR丸』!」
「「デュアル・百合&BL・ウェーブ!」」
オメガ珈琲シルバーの剣の刀身が黒く染まり、ネトルティ来部の背に氷の翼が装備される。百合エックスとBLエックスが白と黒のフリル付き衣装を重ね着し、百合ブラック、BLホワイトとなる。
「ほう。しぶといな」
SUNダールは攻撃の手を止め、おもむろに濡レドランへ振り向いた。
「『Lサイズの箱』とやらにはキャパシティーが存在するようだが、さっき吸い込んだのは戦士本人ではなく、強化アイテムのみ。あの『BANG・解』というやつを吸収できるくらいの余地は、まだ残っているのだろう? 少し手伝ってはくれないか」
「ご明察。けれど、その作戦を敵に聞かせてしまっては、上手くいくものも上手くいくまいよ」
渋い顔をしている青い怪人へ、SUNダールが「案ずるな」と笑う。
「俺が後方から援護してやる。一人ずつ太陽光で撃ち抜き、無力化してみせよう。貴様は何も心配することなく、奴らの強化変身のパワーを奪えば良いのだ」
「……そこまで言うのなら、仕方ないですね。分かりましたよ」
円筒形の箱を抱えた濡レドランは、不本意そうに前進した。鮫怪人の脇を通り、オメガ珈琲シルバーら四人へと接近する。
「感謝するといい、百合・BLレンジャー。この私が、Lサイズの箱の貴重なキャパシティーを割いてまで、お前たちを完膚なきまでに潰そうとしているのだからな!」
怪人の指が、箱の蓋へ触れた。
裕介が珈琲サイブレードから「珈珈弾」を、美明日が来部ガンからビームを放って阻止しようと試みるも、間に合わない。もはや何をしようとも、いかなる攻撃も強化変身の力も、あの箱へ吸い込まれて奪われてしまう――と、思われた。
「がっ」
驚愕と激痛に目を見開き、濡レドランは後ずさった。手から箱を取り落としたが、それすら気にも留めずに、背後を睨みつける。
「何のつもりですか……SUNダール!」
ゲジゲジ怪人の腹部には、一点集中された太陽光による穴が穿たれていた。
SUNダールは百合・BLレンジャーではなく、あろうことかLFOのボスを狙い撃ったのだった。