百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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第36話 さらば!百合とBLの星

「高次元生命体の世界で、俺たちは厳しい環境下に置かれて育ちました。そこには、娯楽の類は一切ありません。当然、えっちなものも見たことがありませんでした」

「……つまり、そっちの世界で長く暮らした影響で、えっちなものに接触すると体が過剰反応を起こして、電気ショックのようなものが生じるわけね?」

 

 そんなアホな話があるわけないじゃない、と内心で首をかしげつつも、ツカサは言った。名前の通り、本当に「ピュア」すぎる人たちだ。

 

「はい。とりわけ、百合やBL関連のものへの接触が一番危険みたいです。今回ほど強い反応が出たことは、これまでに一度もありませんでした」

 

 吹っ飛ばされたショックから立ち直ったダイも、ジンに続き涙を流した。

 

「ああ、何てことだ。故郷の星に帰ったのに、百合やBLに手を触れることもできないなんて。俺たちは、一体何のために地球へ戻ってきたんだ!」

「いや、別に百合やBLに触れなくても生きていくことはできるし……。あんたたち、そこまで興味ないでしょ?」

「てかお前ら、第二の犠牲者を出さないために戻ってきたんじゃなかったのかよ。地球にピンチがやって来る、でっかい未来が危ないぜってな」

 

 

 息の合った連携で、ツカサとカイリがツッコミを入れた。対して「でも、これは重大な問題ですよ」と真剣に反論するジン。

 

「今日本では、百合とBLが大人気のジャンルとなっている。その全てに触れることが許されないとなると、ちょっと大げさな言い方かもしれませんが、俺たちは生きていくことすら難しいかもしれません」

「大げさすぎるわよ⁉ 他の趣味を見つけるなり何なりしなさいよ!  あたしも人のこと言える立場じゃないけど!」

「そういえばあなたたち、普通の警察じゃなくてBL警察だったわよね」

 

 サラも口を挟む。ピュアッシュマンとの間には、いつしか険悪なムードが漂いかけていた。

 

 

「百合やBLに対して激しい『反ピュアッシュ現象』が起きると分かった以上、あなたたちと手を組むのはリスキーだわ。何かの拍子にBL関連のものを見せられて、電気ショックを喰らったりしたら最悪だもの。やっぱり、共闘するのはやめましょう」

「ちょ、ちょっと待ってよ。あたしたちは確かにBL警察だけど、仕事内容までBLに染まってるわけじゃないからね⁉ 街をパトロールしたりとか、普通に警察官っぽいことしてるわ」

「でもこいつ、毎月一万円近い額の金をBL本の購入に充ててるけどな。プライベートはBL一色だ。下手に近づけば、電気ショックで怪我をするぜ」

「カイリ、余計なこと言わないで⁉」

 

 ツカサが悲鳴を上げた。警察の一員でないのをいいことに、彼は彼女を困らせて面白がっているのかもしれない。

 

「とにかく」

 

 二人のショートコントを遮って、ジンは強い口調で言った。

 

「皆さんと一緒に戦えば、俺たちは反ピュアッシュ現象に苦しむ可能性があります。共闘するのはやめにして、俺たちは俺たちなりの方法で高次元生命体と戦ってみます」

「おい、本気で言ってるのか」

 

 さすがにまずいと思ったのか、カイリも焦り始めた。

 

「一種のアレルギーみたいなものなんだろ? 慣れたらきっと克服できるって。だから、そんなに百合やBLを警戒しなくても……」

「反ピュアッシュ現象は、決して治らないんです。これはアレルギーや病気ではなく、俺たちに与えられた運命。運命からは逃れられません」

 

 ジンの台詞は悲観的だった。それが両勢力の決裂を致命的なものにしているようだった。

 

 

 冗談じゃない。あたしが担当した任務の最中にピュアッシュマンと交渉決裂したと知れたら、ケイイチロウから大目玉を喰らってしまう。それに何より、共に高次元生命体と戦える仲間を失いたくない。

 どうにかしてジンたちを引き留めようと、ツカサは必死に説得を試みた。出会ったときとは逆で、今は彼女らが彼らに頭を下げる番だった。

 

「百合・BL関連のものを五人へ接触させないよう、徹底するわ。もう絶対に、反ピュアッシュ現象が起きないようにする。お願い、考え直して!」

「反ピュアッシュ現象は、症状がひどいときには命にかかわります。一パーセントでも命の危険が残っているのなら、皆さんと協力体制を築くことはできません。警察や怪盗の皆さんが百合・BL趣味を完全に捨ててくれるのでない限り、手を組むことはできません」

 

 趣味を諦めることができますか、とジンは目で問うてきた。ツカサはゆっくりと顔を上げ、カイリと目くばせする。

 

「……以前、セイヘキ・ザ・ワールドという敵と戦ったときにも、似たようなことを聞かれたわね。でも、あたしたちの答えは変わらないわ」

「ああ。俺たちには、趣味を捨てるなんてできない」

 

 

 エンダーが強化変身したザ・ワールドは、「相手が百合・BL・ノーマルいずれかの性癖への情熱を持っている場合、その情熱に反応して攻撃力をアップさせる」という厄介な能力の持ち主だった。これによりツカサたちは、性癖を捨てて攻撃力をアップさせないか、性癖を捨てずに不利な条件下で戦い続けるかの二択を迫られた。

 だが、最終的に掴み取った答えは、そのどちらでもない。確かにツカサたちは百合やBLへの情熱を胸に秘めて戦っているが、戦いの瞬間においては、情熱だけではなく正義の心をも燃やしている。瞑想して精神を統一し、その純粋な正義の心のオーラパワーを引き出すことで、見事セイヘキ・ザ・ワールドを撃破したのだった。

 だから、二人は確信を得ていた。百合やBLを諦めなくたって、きっと他の手段があると。

 

 

「趣味を捨てずに、共闘できる方法を探しましょう。あたしたち警察と怪盗のテクノロジーを合わせれば、必ずできるわ!」

 

 凛とした声でツカサが提案した。

 

「そうだぜ。反ピュアッシュ現象だか何だか知らねえけど、運命だからって諦めるなよ。運命と戦って、勝ってみせろ!」

 

 カイリもいつもの調子を取り戻し、威勢よく言った。

 

「皆さん……」

 

 最後まで諦めずに方法を模索する二人の姿に、感じ入るものがあったのだろう。ジンはやや迷った素振りを見せたが、彼らへ微笑んだ。

 

「ありがとうございます。俺たち、もう一度考え直してみます」

 

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