百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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第37話 ファイヤープロジェクト・ニューカマー

「――ツカサ、カイリ! その男から離れろ!」

 

 と、そこにナオヤが現れた。ジンとの間に割って入り、彼を真正面から睨みつける。気づかれないように自分たちを尾行し、ピュアッシュマンの動きを見張っていたらしい。

 

「ナオヤくん⁉ ど、どうしたのよ、いきなり」

「騙されるな。この男の言うことは一見筋が通っているようで、よく考えるとおかしな点が多い。信用するにはまだ早い!」

 

 何を根拠に、と一同が思ったのも束の間、ナオヤはツカサたちが見落としていた点を指摘した。

 

「ピュアッシュマン。お前たちは二十年ぶりに地球へ帰ってきて、右も左も分からない状態のはずだ。だが、なぜか反ピュアッシュ現象については詳しい。現象が起こる原因を既に知っているのは、不自然だと思わないか」

 

 ピュアッシュマンがこの世界にやってきてから、まだ二、三日しか経っていない。その短期間で自分たちの抱えた問題を知り尽くしているというのは、なるほど、確かにおかしいかもしれない。えっちなものにいくつか触れ、トライアンドエラーで学んだのか――とも思ったが、二十年ぶりに故郷に帰ってすぐにえっちなものへ接触する人が、一体どこの世界にいるだろうか? 普通の人間は、そんなことはしない。

 

 

「バレてしまっては仕方ない」

 

 ここにはいない、何者かのため息が聞こえた。刹那、目の前の景色がぐにゃりと歪む。

 気がつくと、ツカサたちは書店の中ではなく荒涼とした大地に立っていた。草木はほとんど生えておらず、ただ岩と砂ばかりが視界を埋め尽くしている。

 

「お、おい」

 

 カイリが声を震わせ、指差した。

 そこにはピュアッシュマンの姿はなく、代わりに五体の泥人形が横たわっていた。もう、何が何だか分からなかった。

 二人が混乱する中、ナオヤだけは状況を把握していた。自分たちは今まで、幻を見せられていたのだろう。この荒れ果てた大地を街だと思わされ、ありもしない書店と居もしない人物を前に、一生懸命仕事をしているつもりでいたのだ。

 

「おそらく、父さんの幻術だな。やはりピュアッシュマンは大魔王が造った存在で、役目を終えて土に還ったのか。……しかし、彼らは何のために俺たちの元へ送り込まれたんだ?」

 

 

 彼の疑問ももっともである。これまで、高次元生命体が送り込む敵は百合・BLレンジャーを倒そうとしていた。けれどもピュアッシュマンはかなり友好的で、反ピュアッシュ現象を理由に共闘を断ろうとしつつも、最終的には手を組もうとしてくれたのだ。

 

「すべては性癖補完計画のためだ」

 

 雲一つない空から、次元大魔王がすうっと降りてくる。乾いた地面に着地し、ツカサ、カイリ、ナオヤの三人を見回してにやりと笑った。

 

「超新星ピュアッシュマンの幻を見せたことで、計画は最終段階へ突入した。お前たちは、まんまと俺の術中にはまったのだ!」

 

 

「性癖補完計画とは何だ。その計画と、さっきの幻がどう関係あるって言うんだ!」

「次元妖怪ムラムラ、セイヘキ・ザ・ワールド、そして超新星ピュアッシュマン。トランガ、この三つの共通点が分かるか?」

 

 大魔王は質問を質問で返した。しかも答える間を与えず、自分のペースで話を続けてしまう。

 

「彼らは皆、お前たちの心に揺さぶりをかけた。百合・BLブームの復活も終焉も意のままにできるムラムラ、性癖を捨てろと迫るザワールド。今回、ピュアッシュマンの幻を見せてザワールドのときの精神攻撃をさらに強化し、俺の補完計画は完遂間近だ。……もうすぐ、この星は跡形もなく大爆発する!」

 

 

「真に百合の魂を持つ者と真にBLの魂を持つ者を槍で貫くとき、百合&BLインパクトは発動する。そのとき発生する衝撃波で、地球もろともお前たちを吹き飛ばしてくれるわ!」

 

 魔王は高笑いした。

 

「当初の計画では地球を滅ぼさず、植民地化することになっていた。だが、次元四天王が全員倒され、四天王の後釜を狙うブラコンレンジャーまで倒されたことで、俺はプランを変更することにしたのだ。征服することができぬなら、いっそのこと星ごと爆発させてやる」

「何て奴だ。どういう理屈でインパクトが起こるのかはさっぱり分からなかったけど、そんなこと、絶対にさせてたまるか!」

 

 カイリが拳を握り締める。

 

「……で、その『真に百合の魂を持つ者』と『真にBLの魂を持つ者』ってのは、誰なんだ?」

「知れたことを。一人は百合エックス、お前だ」 

 

 そしてもう一人は、と次元大魔王はカイリの相棒の方を向いた。

 

「お前だ、BLエックス」

「あたしが……?」

 

 

 唖然として、ツカサとカイリは顔を見合わせた。自分たちの他にも百合やBLが好きな者たちは大勢いるだろうに、なぜ自分たちが選ばれたのだろう。

 二人の心を読んだかのように、魔王が続けた。

 

「地球人に洗脳を施した際、俺たちは何の考えもなしに百合とBLの性癖を流行らせたわけではない。相反する二つの属性を人の中に宿らせ、やがて彼らの中で属性を司る戦士が現れることを予想していた。メインプランが失敗したときのための予備は、最初から用意されていたというわけだ。もっとも、俺が思い描いていた未来予想図とは少々違っていたがな」

 

 

『俺の計画は完璧だった。ただ一つ、百合エックスとBLエックスという第三勢力が参戦した事実を除いてはな。――計画が順調にいけば、今頃日本は滅んでいたはずだ。百合レンジャーとBLレンジャーが互いに最終兵器を持ち出し、超巨大ロボによる決戦に巻き込まれて国土の大半が消し飛ぶ予定だった。お前たちが邪魔したせいで、台無しになったがな』

 

 二人は、ショタレンジャー――高次元生命体ベノムの言葉を思い出していた。百合派とBL派の和解は高次元生命体にとっても想定外だったのだろうが、結局のところ「百合」と「BL」の属性を宿す戦士がいる限り、予備のプランは生きていたということか。

 

「ていうか、槍で貫くってどういうことよ」

「こういうことだ」

 

 首をかしげたツカサに、魔王はマントの中からギター型の武器を取り出してみせた。ロリーニンジャーがテレビの中継映像で使っていた専用武器、ロリーソードガンである。

 魔王がソードガンに念力を送ると、それはまるで粘土のようにぐにゃぐにゃ曲がって変形した。長槍の形になったギターを、次元大魔王が掲げる。

 

「それって、アメリカ在住のロリーニンジャーさんの武器じゃないの? 何であんたが持ってるのよ」

「答えは簡単だ。さっき、ちょっと奪ってきた」

「はあ⁉ ちょっとじゃないわよ! 窃盗罪で逮捕するわ。ジャッジメント・タイムよ!」

 

 大魔王の場合はもっと色々な罪に問われそうなものだが、警察の血が騒いだのか、ツカサはむきになっていた。

 

 

「よせ、ツカサ」

「放してよ、カイリ。良からぬ宇宙の悪を、一気にスピード退治しなきゃならないのよ! 百鬼夜行をぶった切るわよ!」

「気高く輝く警察官はどこに行ったんだよ⁉」

 

 またしても相棒と揉め始めた二人をよそに、大魔王は種明かしをしていた。真面目に聞いているのはナオヤだけである。

 

「ハッハッハ。次元ライダーBLACONを何度もけしかけ、ロリーニンジャーを消耗させておいた甲斐があったというものよ。俺はなトランガ、弱ったロリーニンジャーが隙を見せるチャンスを、虎視眈々と伺っていたのだ! ……奴の持つロリーソードガンを『ロリギヌスの槍』へと変化させることによって、性癖補完計画はいよいよ実行可能となる。あとは、トリガーとなる百合・BLの魂を持つ者を槍で貫くだけだ!」

 




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・デカレンジャー
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