「LFOを立ち上げたのも、そのためか?」とケイイチロウ。
「その通りだ。ルーカスとお前たちの最後の戦いにおいて、あの超次元生命体が妙な姿に変わったのを覚えているか?」
あのとき、所持していた十数個の原典すべてのパワーを解放し、ルーカスは虹色のクリスタルのような皮膚に全身が覆われた姿になったのだった。無貌と同じのっぺらぼうの顔になった彼は「レベッカ、俺も君の似姿になったぞ!」と、むしろ喜んでいたっけ。
「他殺願望」の力と全原典の力を集約させ、ルーカスは光の槍を繰り出した。その結果、百合・BLレンジャーの必殺技に競り負け、散ったのである。
「虫を使って観察を続ける中で、私はあのときのルーカスの行動に着想を得た。奴が使った原典の数はせいぜい十数個で、無貌に似た形態も不完全だった。お前たちと技を撃ち合って負けたのも、当然の帰結だろう。……だが、もしも原典の数がその十倍以上、いやもっとあったとしたらどうだ? お前たちなど敵ではないし、三界を滅ぼすことだって不可能ではないだろう。私がやろうとしているのは、そういうことだ」
「まさか、LFOを使って回収した原典を集約させ、ルーカスの光の槍の強化版のようなものをぶっ放すつもりか⁉」
トウマは戦慄を覚えた。
「しかし、そんなことをすれば濡ラジラ、お前自身もただでは済まないだろう」
「私は何百、何千年もの間、地下深くに封じられていた。膨大な時間の中、虫を使って地上を観察する他にやることもなく、ただゼニスへの恨みを募らせていた。その期間に蓄えられた虚無の総量をもってすれば、百の原典を操ることすら容易い!」
全然ただで済みそうだった。おそらくこの堕天使、今までに戦った相手の中でもダントツで虚無のキャパシティーが多い。生きてきた時間の長さが桁違いだ。
「ゼニスの奴は、超次元生命体及び高次元生命体は失敗作だと考えていたようだな。私も同意見だ。奴は所詮、不完全な創造しかできなかった偽物の神。奴が私を封印したのはきっと、私の行いを『残虐だ』と恐れたからではなく、自分を凌駕する私の優秀さを恐れたからだ。私は必ずや、ゼニスよりも完璧な世界創造を行ってみせる!」
「冗談じゃないわよ。あんたの理想に付き合わされて、一度滅ぼされる世界の身にもなってみなさい。そんなこと、あたしたちが絶対にさせないわ!」
ツカサたちは一斉に変身し、濡ラジラを包囲した。
「大体お前、これまで俺たちに何度も倒されてきただろ。今回も返り討ちにしてやるぜ!」
威勢のいい台詞を吐いたカイリに、堕天使がニヤリと笑う。
「長期間の封印により、私の力は衰えた。だから待っていたのだ。死と復活を繰り返し、その度にパワーアップできるこの原典を入手してな。私はお前たちにわざと倒され続けることで、この最強の形態に至れるときをずっと待っていたのだ!」
「とか言ってるけどお前、SUNダールに不意打ちされて死んだのもわざとだったのか?」
「……」
「……」
「ま、まあとにかく、今回B・パンチローラーとメラ・メロンパンという下っ端風情しか連れてこなかったのも、わざと倒されるための計画の一部だったのだよ」
「おい、スルーするな」
「べ、別に良いだろう。原作でも一度、仲間だった怪人に騙されて不本意な退場を遂げているのだから。その性質を受け継いでしまっただけのことだ」
「いや開き直れとも言ってねえけどな⁉」
お喋りはそれまでだ、と言い、濡ラジラは二十枚以上もの原典のカードの束を見せた。
「レジスタンスどもの持っていた原典は、既に回収済みだ。あとはお前たち戦隊の原典さえ奪ってしまえば、LFOメンバーの持つ原典と合わせ、破滅の儀式に必要な数の原典は揃う」
「俺たちに勝てると思っているのか?」
ケイイチロウが強気に返す。
「勝てるのが当たり前、みたいな言い方は気に食わないな。何と言っても俺たちは、お前を封印されたゼニスにさえ勝利しているんだぞ」
「お前たちがゼニスを倒せたのは、奴の中にいた超次元生命体たちが反乱を起こしたからだ。あんなものはまぐれ当たりに過ぎない。私の実力は、お前たちの遥か上を行っている。今からそれを見せつけてやろう、ひよっこども!」
濡ラジラは木製の小槌を召喚すると、地面へ打ちつけた。
「――『性癖展開』。『誅伏湿死』!」
刹那、雨が降り始める。無数のギロチン台が出現し、六人を取り囲む。
戦士たちのいる場所だけを濡らすかのように降り出した雨の中、天使は語った。
「私の性癖展開は降雨エリアを作り出し、その中で私を検察官、敵を被告人として簡易裁判を行う。有罪判決が出た場合は被告人の持ち物を一つ奪うことができ、もし死刑判決が出れば、私はそれに加えて必殺の剣を使用可能となる。もっとも、私にとって有利な裁判だがな!」
見よ、と濡ラジラが裁判官たちを指し示す。
「どうも。裁判官Aの、彗星の濡レドランです」
「こんにちは。裁判官B、チュパカプラの濡レドランでございます」
「本日はよろしくお願いいたします。裁判官C、サイボーグの濡レドランだ」
「全部お前の分身かよ⁉ インチキ裁判じゃねえか!!」
これでは、どんな判決だって好きなように出せる。有罪も死刑も、濡ラジラのさじ加減で決められる。チート能力と言っても過言ではない。
憤慨しているカイリらをよそに、濡ラジラは勝手に裁判をスタートさせてしまった。
「では、さっそく始めよう。被告人、百合・BLレンジャーは事あるごとにLFOの活動を妨害し、私の計画を阻もうとしている。その罪は重いと思われるが、いかがかな、裁判官たち?」
「うーむ、これは死刑ですね!」
「やはり、死刑しかあるまい!」
「では私も空気を読んで、死刑!」
三体の分身は考え込むようなポーズこそ取っているけども、実際にはほとんど何も考えずに死刑一択にしている。空気を読んで死刑だとか、冗談でもやめてほしい。
「はい、満場一致で死刑です。……というわけで、お前たちからVS・スワットモードを『没収』する。もう二度と強化フォームには変身させん! ハーッハッハッ!」
「ちょっと待ちなさいよ! インチキだわ! ねえ、インチキだと思うんだけど!!」
警察手帳型アイテムを没収されそうな流れになったので、ツカサは慌てて抗議した。
「これが紛いなりにも裁判なら、控訴や上告が可能なはずよね。第二審で改めて勝負しなさい! それと、できれば裁判官は別の人にして!」
「控訴してきたか。時間稼ぎのつもりか、BLエックス?」
濡ラジラは舌打ちした。
「良いだろう、控訴を認める。裁判官はLFOの三英雄、入墨ドウコク及びBリアン女王の二名へ変更しよう」
「裁判官を身内にするっていう発想から離れなさいよ⁉」