百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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50 天使はいつから悪魔だったのか

「『触手プレイ』性癖だけが、私たちの能力ではない。ここからは、原典由来の異能をお見せしようじゃなイカ」

「腰抜かすんじゃないわよ、タコども!」

 

 イカーショクとシューダッコは、銃を抜き放って突進してきた。戦隊たちが撃ち放った光弾をイカーショクは易々とかわし、接近してくる。シューダッコには何発か命中したが、ちぎれ飛んだ腕を即座に再生させ、また突っ込んできた。

 

「体中にたくさんの眼を備えている私は、イカなる方向からの攻撃にもすぐに気がつき、対処できる。私に技をヒットさせるのは、困難を究めるんじゃなイカな?」

「そして私は、僅かな破片さえ残っていれば、体を完全に復元することが可能なのさ。原典の第六話で初登場し、第四十三話まで生き延びた、この驚異的なしぶとさを見るがいい!」

 

 シューダッコの原作に関しては、(出番がなかった期間もあるとはいえ)アニメでいうと三クール分くらいの長さにわたって出演していたことになる。ほぼレギュラーキャラである。

 

 

「何てしつこい奴なんだ。『ストライク・アウト』!」

 

 呆れたように言ったトウマの放った一撃が、シューダッコの頭部に炸裂した。頭を吹っ飛ばしたと思った次の瞬間、再生が行われる。

 

「無事に復活致しましたわ。晴れやかな気分でございます、タコさんたち」

「こいつ、甦るたびに性格が変わるのか……?」

 

 もっとも、戦闘能力が変化した様子はない。復活するごとに姿と能力が変わっていた濡ラジラに比べれば、脅威度が低いと言えるだろう。

 やたら回避率が高いイカーショクと、すぐ再生を遂げてくるシューダッコ。しぶとすぎるこのコンビは、攻撃力に特化しただけで倒せる敵ではなかった。戦いが長引きそうな予感がする。

 

 

 ノーマル性癖のナオヤと裕介、「年上好き」性癖のヒョウガはこれには加わらなかった。「触手プレイ」性癖による攻撃を見守っていたコスケンジャーを倒すべく、美明日とサヤを退避させたのちに、三人がかりで挑む。

 

「『オメガ天衝』!」

「『BL・ベガスラッシュ』!」

 

 戦士たちの斬撃を立て続けに浴び、緑の忍者は後退した。

 

「やるな、ユーたち。ならば……『大逆転・コスチュームチェンジ』!」

 

 コスケンジャーがマスク上部を回転させ、金のプロテクターを脱ぎ捨てる。アイレンズが炎の形に変わった。

 

「さらに、超次元忍法『早着替え千本ノック』!」

 

 バット型の武器を召喚すると、彼はそれを振り、物凄い数の野球ボールを打ってきた。

 

 

「うわっ⁉」

 

 避け切れず、腕でガードする三人。すると、球が当たるたびに彼らの服装が次々に変化した。アーマーの上に、カラフルな衣装を羽織るような感じになる。

 あるときはメイド服、またあるときはチャイナドレスやミニスカポリス、ミニスカサンタなど、千変万化。ただ一つ言えるのは、「いずれにせよ、男がするコスプレじゃない」ということだ。

 

「ミーの『コスプレ』性癖は、相手がお似合いのコスプレをしている状態で攻撃をヒットさせると、ダメージを通常の数十倍にすることができる。そしてこの『早着替え千本ノック』の球は、当たるたびに、相手の衣服を強制的かつランダムにコスプレ衣装へ変化させる。これだけの変化球、もとい衣装変化球を打てば、ユーたちもいつかは似合ったコスをして大ダメージを受けるぜ!」

「クソッ。これでは近づけない!」

 

 恐るべき速度で打たれるボールの嵐に、BLファイヤーとオメガ珈琲シルバーは敵の懐へ飛び込めずにいた。そんな中、零騎士だけが猪突猛進に走り、力技で千本ノックを突破しようとする。

 球がヒットするたびに、バニーガールやら逆バニーやら、(鎧の上からではあるものの)恥ずかしい衣装を着せられる。だが、ヒョウガは構わず、剛速球が与えてくる痛みにも耐え、がむしゃらに進んだ。

 

 

「確かに、コスプレも魅力的だ。でも……、でもサヤさんはやっぱり、普段着が一番素敵なんだ。ましてや、いかがわしい触手プレイなんてもっての外だ!」

「オー、ノー! ユーは一体、何の話をしてるんだ⁉」

 

 狼狽するコスケンジャーへ長剣を向け、零騎士は静かに言う。

 

「――要するに、お前たちはサヤさんや他の女性戦士に対し、許されないことをしたということだ」

『百合・パワー!』『BL・パワー!』『ノーマル・パワー!』『年上・パワー!』『オール性癖・コンバイン!』

 

 ゼロライアットをガンモードへ変形させ、緑の忍者へと照準を合わせた。

 

 

「三味線の先生だか何だか知らないが、ここで倒させてもらうぞ!」

『マキシマム・ゼロ・タイフーン!』

 

 焦ってコスケンジャーが打ってきたボールは、蒸発させた。彼の断末魔の悲鳴さえもかき消した。

 零騎士の撃ち放った竜巻状の破壊エネルギーは、直線上のほぼすべての敵を粉砕する威力を持つ。ヒョウガ最強の必殺技が、文字通りコスケンジャーを瞬殺した。

 このところメラ・メロンパンに邪魔されて本領発揮できていなかった彼だが、やはり本来ならこれくらい強いのだった。

 

 

「……おやおや、跡形もなく倒されてしまったではないか。もったいないことをする」

 

 残るはイカーショクとシューダッコのみとなり、戦士たちが活気づいたときだった。不意に出現したカラフルに発光する扉から、救世主の濡ラジラが現れる。

 コスケンジャーがやられる前にと原典を回収しに来たが、ヒョウガが彼を木っ端微塵にしてしまったので回収困難になっているようだ。新型ゲートの効果で部下の現在位置を把握しているからこそ、できる芸当である。

 

「おお。濡ラジラ、良いところに来た。ちょっと手伝ってくれなイカ?」

「わたくしたち、耐久性能はありますのに、攻撃力が足りていないようですのよ!」

 

 百合・BLレンジャーに追い詰められている二人が声を掛けると、堕天使は彼らを舐め回すように見定めた。

 

 

「……却下だ」

 

 そして、手にしたカードをイカーショクらへ投げつけた。カードは肌に触れると同時に怪人たちの所有する原典を吸収し、濡ラジラの手元へ自動的に返っていく。

 

「ひどいじゃなイカ⁉ これでは人型を維持できない!」

「何をするんですの⁉」

 

 情けない悲鳴を上げる、イカーショクとシューダッコ。ほどなくして二人は原典のイメージを失い、儚い光の塊のような、超次元生命体本来の姿へと戻ってしまった。

 

「私が用があるのは、お前たちに与えた原典だけ。このまま戦隊に倒されて原典が回収不能になるくらいなら、最初から私の手で回収してやるまでだ」

「な、何を⁉」

 

 光の塊を嘲笑し、濡ラジラが続ける。

 

「そもそもLFOなど、世界創造を行うために必要な数の原典を集めるための道具に過ぎない。そして原典が集まりつつある今、お前たちの役目は終わったのだ。……入墨やBリアンのように強き者は、計画が最終段階に入るまでの間、私の護衛でも何でもするがいいさ。だがお前たちのような雑魚は、原典を与えてもどうせ使いこなせず、無駄遣いした挙句に無駄死にするのがオチだ。だから私が回収してやるのだよ!」

 

 

 堕天使の左右に、ダークウェッター二体が召喚された。彼らは濡ラジラの両腕と合体し武装形態になると、ドリル部分に光を集め始めた。

 

「濡ラジラ、貴様……!」

「まあ、このタコさんったら!」

 

 歯ぎしりしているような音を出している部下へ、濡ラジラがゆっくりと片手を向ける。

 

「安心しろ、イカーショク、シューダッコ。お前たちは百合・BLレンジャーと激闘を繰り広げ、名誉の戦死を遂げたことにしておいてやろう。Bリアン配下のお仲間には、そうやって伝えておく。たとえ真実は、私に見捨てられて無様な死を遂げたのだとしてもな!」

 

 ドリル部から射出されたレーザー光線が、光の塊の中心部を的確に撃ち抜いた。光は霧散し、空気中に溶けるようにして消える。

 

「……フハハハハハハッ。ハーッハッハッハッハ! 良い気味だ。愚民どもの生殺与奪の権はすべて、この救世主の濡ラジラが握ってやる。やはり私こそが、世界を一度滅ぼして再創造するにふさわしい天使なのだ!」

 

 

 愉快そうに勝ち誇る濡ラジラ。彼をじっと睨み、カイリは言った。

 

「天使? 違うな」

 

 カイリだけではなく。戦隊一同の心は、濡ラジラの非道な行いを前にし、怒りに燃えていた。

 

「人間界ではお前みたいなのを、天使じゃなく悪魔って呼ぶんだ。どうにも気分が収まらないぜ。ひとっ走り付き合えよ!」

 

 




※誠に申し訳ないですが、次回の更新は4月上旬とさせていただきます。

 3月に出張の予定が多く、時間を確保するのが難しいと判断致しました。1か月ほど間が空いてしまいますが、今しばらくお待ちください。
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