「良いだろう。かかって来い、ひよっこども!」
濡ラジラはカイリらへ両腕を向け、武装のドリル部からビームを乱射した。
「悪魔でも何でも、好きに呼ぶがいい。私がゼニスによって造られた天使であるという事実は、いくら戯言を並べ立てられようとも揺るぎはしない。天使である私が、悪しき魂に天罰を下す!」
「悪しき魂はお前だろ!!」
雄叫びを上げたカイリたちは、素早く散開。ビームを避けながら濡ラジラとの距離を詰め、こちらもVSリボルバーを連射した。
百合・BL性癖によって威力が底上げされた光弾は、濡ラジラのビームの破壊力を僅かに上回ったらしい。形勢は、徐々に戦隊有利へと傾いていく。
「ならば、これでどうだ」
両腕の武装を解除すると、濡ラジラは背中の白い翼を展開した。そこから、眩い光の奔流を解き放つ。
「私の最強の技を受けてみよ!」
「あたしたちも行くわよ。『ストライク・アウト』!」
「『百合拳・エレクトロフィスト』!」
対抗して、ツカサたちも一斉に破壊光弾や電撃をぶっ放す。そこにオメガ珈琲シルバーと零騎士、BLファイヤーも加勢した。
「『オメガ十字衝』!」
『マキシマム・ゼロ・サイクロン!』
「『BLリフレイザー』!」
黒い二連撃とⅩ字の赤い斬撃が飛び、さらに本日二回目の竜巻状エネルギーが発射される。
美明日は本調子ではないし、レジスタンスのメンバーに至っては皆入院している。フルメンバーとは程遠い状態だけれども、戦隊たちの総攻撃はかなりのパワーを誇った。
濡ラジラの放った光と、百合・BLレンジャーの必殺技ラッシュは数秒間拮抗し、戦隊が競り勝った。堕天使は悪態を吐き、咄嗟に二体のダークウェッターを盾にする。
派手に爆発が起こった。やがて視界が晴れると、そこには配下を失った濡ラジラが息を荒げていた。今の攻撃で、ダークウェッターたちは無事撃破されたのである。
「どうだ、濡ラジラ。これが俺たちの本当の力だ!」
「あたしたちが性癖のパワーを解放すれば、どんな敵にも負けない!」
「お、おのれ、戦隊ども……!」
百合エックスとBLエックスを睨みつけ、救世主の濡ラジラは誰もいない背後を振り返った。
「――来い、入墨ドウコク。お前の出番だ!」
そして、LFO最強の幹部を呼び出したのだった。
「呼んだか? 戦友」
すぐに新型ゲートが開き、赤と黒の鎧を纏った荒武者が見参する。ツカサたちとは初対面になるが、圧倒的な強者のオーラは見る者を威圧してやまない。
「よく来てくれたな、入墨。この者たちを始末するのを手伝ってくれ」
「お安い御用だ」
荒武者は二つ返事で了承すると、衝撃波を伴う咆哮を上げた。怯んだ百合・BLレンジャーへ、二刀を抜き放ち斬りかかっていく。
「おめえら全員、地獄行きだぜ!」
鋭く繰り出された一閃は、掠っただけでスワットモードの防弾ベストを深く抉った。VSリボルバーの銃身も容易く叩き切る。たちまち、百合・BLレンジャーは防戦一方になった。
「……おっと、無理をするな」
一気に攻め切ろうとする入墨を、濡ラジラが諫めた。荒武者には既に「水切れ」の症状が出始め、手足が干からびてきている。
「入墨、私の翼にタトゥーを彫れ。お前自身の性癖のパワーで、水切れから回復しながら戦うのだ」
「良いのか、濡ラジラ? お前の翼に傷を付けちまっても」
躊躇う武者に、堕天使は大きく頷いた。
「気にするな。私とお前の仲だろう」
「……ハハッ。そうだな」
入墨は低く笑い、濡ラジラへ近づいた。
「俺の真の力に気づき、評価してくれたのはてめえだけだった。てめえのことなら信頼できる。てめえと俺が組めば、無敵だ!」
小刀を慣れた手つきで振るい、白い翼に「封印」の文字を刻む。これにより「スティグマトフィリア」の効果が発動し、入墨ドウコクは時間経過とともに回復できるようになった。水切れによるダメージを抑えることができる。
「何をごちゃごちゃ話し合ってるんだ!」
隙あり、とヒョウガが「マキシマム・ゼロ・タイフーン」を発動した。ゼロライアットから伸びた長大な光の刃が、濡ラジラもろとも荒武者を両断しようとする。
「効かねえよ、雑魚が!」
しかし、入墨の方が上だった。荒々しく横薙ぎに振るわれた大刀は、光の刃をいとも簡単に粉砕してしまったのである。
「なっ……」
「年上好き」性癖によってバフがかかっているにもかかわらず、最強の必殺技をあっさり破られて絶句するヒョウガ。彼には目もくれず、入墨は戦隊一同を見渡した。
「自己紹介が遅れたな。俺は元無貌支持派の『入墨ドウコク』。序列は下位だった。だが、決して実力が劣っていたわけじゃねえ。戦闘能力は高いが長時間の戦闘に向かねえもんで、評価されなかっただけだ。濡ラジラはそんな俺を拾い上げ、LFOの幹部にしてくれた。奴のためなら、俺は何でもする!」
「よく分からねえけど、要はその『水切れ』とかいうパワーダウン現象が弱点で、だから評価されなかったんだな?」
裕介は理解が早かった。
「なあ、悪いこと言わねえから、濡ラジラに付いていくのだけはやめた方がいいぜ。さっきだってそいつ、Bリアン女王の部下を粛清してたし」
「粛清されたということは、そいつが無能だったってことだ。だが、俺は違う!」
自信満々に言い切り、入墨は再び戦隊へ攻撃開始した。水切れの影響でスピードが若干落ちてはいるものの、斬撃の威力は健在。次々に繰り出される圧巻の剣戟に、裕介たちはたじたじだった。
「ぐああああっ⁉」
「BANG・解」状態のオメガ珈琲シルバーでさえも太刀打ちできない剣の腕前に、ましてやスワットモード状態で主力武器が大型マシンガンになっている他の面々が敵うはずもない。あっという間に一同は追い詰められた。
「……どれ、少し手伝ってやろう」
弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂。濡ラジラも胸部装甲へオーブを装填し、天から稲妻を降り注がせた。これが決定打となり、ツカサたちは強化フォームへの変身を強制解除されてしまう。
防弾ベストが消滅し、珈琲サイブレードの刀身が黒くなくなった百合・BLレンジャー。地面に倒れている彼らを見下ろし、武者は豪快に笑った。
「ハハハハハッ。口ほどにもねえな、百合・BLレンジャー。おめえらごとき、俺と濡ラジラの絆の前には無力なんだよ!」
二刀を振り上げ、ゆっくりと戦隊たちへ近づいていく。少しずつ進行する水切れが彼の歩みを遅くするが、構う様子はない。さっさと仕留めて超次元界へ戻れば問題ない、とでも考えているのだろうか。
「とどめだ。おめえらの原典、俺が回収して……」
やる、と言いかけたところで、武者の台詞は途切れた。体をぶるりと震わせ、歩みを止める。
何が起こったのかよく分かっていないカイリたちが、怪訝そうな顔をする。入墨が震えながら濡ラジラの方へ振り向いたとき、ようやく理解できるようになった。
入墨の背には、濡ラジラが投げつけたと思しきカードが突き刺さっていたのである。そう、例の、原典を吸収する性質を持つカードだ。
「何の真似だ……濡ラジラ!」
赤と黒の武者から罵声を浴びせられても、堕天使にはどこ吹く風。涼しい顔で彼は答えた。
「とどめを差すのは私だ」
白いカードに赤と黒の色が混ざり、徐々に入墨ドウコクの所持する原典を吸収していく。
「お前の役目はもう終わったのだよ、入墨」