百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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57 打ち上げはなぜか八王子にて

 打ち上げと、気づけばもう年末なので忘年会と、ダレンやお菊たちとのしばしのお別れ会。この三つを兼ねて、百合・BLレンジャーは八王子のホテルのレストランを貸し切り、パーティー会場としたのだった。

 パーティーはバイキング形式。揚げ餃子、麻婆豆腐、チンジャオロース、シュウマイ、小籠包など、様々な中華料理がずらりと並んでいた。各々、好きなものを取り皿によそい、適当に席についている。

 また、コウは正式に戦隊へ加入しているわけではないが、今回の功労者としてパーティーに招待された。同じ理由で、最終決戦で濡ラジラへ一矢報いた一般市民たちも特別に招かれている。

 

 

「ご飯は笑顔ですわ~!」

 

 そして、しれっと参加しているゴークイーンズたち。怪我がようやく完治したらしい。

これまで彼女たちは「肝心なときに役に立たない」というジンクスがあったが、今回に至っては決戦に不参加。ダレンたちの傷を癒した以外に目立った活躍もなかったけども、パーティーにはしっかりと参加している。まあ、下手に前線に出て、濡ラジラに原典を奪われるよりはマシだったかもしれない。

 

「……にしても、何でまた八王子? 絶妙に遠かったんだけど」

 

 小皿によそった担々麵をすすり、ツカサが首をかしげる。

 八王子市。西東京の多摩地域にある、東京都内ではかなり面積の大きな自治体である。大学や短大、専門学校の数も比較的多く、学生の街としてそれなりに栄えている。西の方まで行くと、高尾山なんかもあったりする。自然豊かだ。

 だが、都心からまあまあな移動時間がかかるのは事実。パーティー会場に選ばれたホテルだって、すごく有名なホテルというわけではない。なぜに、八王子なのか。

 

 

「ああ、それはだな」

 

 グラスに並々と注がれたジンジャーエールをぐいと飲み干し、カイリが答えた。

 

「八王子には、日本一の店舗面積を誇るというハードオンがあるからな! そこに行くついでだぜ!」

「ハードオンに行くついでに忘年会しないでくれる⁉ 普通は逆でしょ、逆!!」

 

 クロードが倒されて以降もハードオンネタを擦っているやかましい二人もいれば、ダレンのように静かに料理を食し、「キャサリンと一緒に行ったチャイナシティを思い出すな……」としみじみしている人もいる。十人十色だった。

 なお、サヤは打ち上げで奢ると言い張っていたが、やはりというかヒョウガたちに止められた。代わりに、元・虚無英雄会会長のグリイザが「少しでも罪滅ぼしをしたい」と獄中から申し出てきて、今回の費用を全部負担してくれた。グリイザ、何だかんだで作中トップクラスの資産家だったりする。

 

 

 さて、功労者のコウの周りには、自然と人が集まった。

 

「少年は、これからどうするつもりなんだ?」とカイリ。

 

「百合・BLレンジャーに入りたいって言うなら、止めはしないけどよ」

「ごめんなさい。今はまだ、遠慮しておくよ」

 

 帽子を後ろ被りした少年は、首を振った。

 

「僕はまだ小学生で、義務教育も終わってないからさ。早くとも中学校を卒業するまでは、ヒーロー活動はほどほどにして、学校生活を中心に頑張るよ!」

 

 模範解答である。とてもじゃないが、ツカサを「おっぱい小さいね」と侮辱したのと同一人物とは思えない。

 

「……で、勉強の合間に、理想のお姉さんを探す旅をするのさ!」

 

 前言撤回。やはり、同一人物だった。

 コウは胸を張り、得意げに宣言した。

 

 

 カイリと入れ替わりに、少年は女性陣に囲まれた。どうやら「小学生男子」という属性は、彼女らの母性本能をくすぐるらしい。

 

「理想の相手を探すなんて、ロマンチックやな~。コウくんは、どんなタイプの人が好きなん?」

 

 前屈みになり、目線をコウに合わせて尋ねるサヤ。本人は意識していないのだろうが、屈んだ拍子にニットの胸部分が強調されている。相変わらず、大人の女の魅力爆発だ。

 

「そうですね」

 

 百合・BLレンジャー関係者の女性たちを一瞥し、コウは真剣な表情で少し考え込んだ。一言ずつ区切るように、ゆっくりと語り出す。

 

 

「サヤさんのように包容力があって、かつプロポーション抜群で……」

「照れてまうなあ~♡」

「お菊さんのように凛として美しく、セクシーで……」

「へえ。坊や、分かってるじゃない♡」

「美明日さんのように頭脳明晰、クールビューティーで……」

「あら、ありがとう。お礼に、投げキッスくらいならあげても良いわよ」

「それでいて、ウミカさんのように可憐で健気で……」

「やだー、嬉しい~!」

「ゴークイーンズさんたちのように、活力に溢れた女性が理想ですかね」

「オーッホッホッホ! こちとら、元気だけは常にあり余ってますわ~!」

「以上です」

 

 

 と少年は締めくくった。理想の女性の例えとして使われた女性陣が皆一様に照れを隠せない一方で、一人だけコウに食ってかかっている者がいた。

 

「ねえちょっと!! 何であたしだけ、例えの中に名前が出てこないわけ⁉ ねえ何で⁉」

「だ、だってツカサお姉ちゃん、おっぱい小さいから……」

「このクソガキ!!!」

 

 困った顔をしているコウに、恥ずかしさと怒りで真っ赤になったツカサは詰め寄った。このガキ、きわめてピュアな表情で時々ひどいことを言う。

 

「じゃあ言わせてもらいますけどね、少なくともあんたの同級生よりは胸あると思うわよ!」

 

 そこに、騒ぎを聞きつけたカイリが慌てて戻ってきた。小学生相手に喧嘩腰になっているツカサを見つけ、間に入って止めようとする。

 

「やめろ、ツカサ! 小学四年生女子と胸の大きさで競い合って、そんなんで勝ってお前は嬉しいのかよ? 嬉しくないだろうが! 大人げない真似はやめろ。まあ負ける可能性がゼロとは言えないけどよ」

「最後の一言で台無しなんですけど⁉」

 

 

 不服そうなツカサはさておき、カイリはコウに歩み寄ると、声をひそめて説いた。

 

「――おい少年。理想の女性と、伴侶にする女性はイコールじゃないぜ」

「えっ?」

 

 きょとんとしているコウに、真面目くさった顔で続ける。

 

「別に、小学生を相手に『理想は捨てろ』とか『人生は妥協の連続だ』とか諭すつもりはないけどよ。あんまり理想を高く掲げすぎるのも考えものだぞ」

 

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