「な、何なんだこれは」
「俺にもよく分からなイ」
カオスな状況ではあったが、とりあえず決闘を始めることにした二人。互いに距離を取って対峙し、ダレンも銃型の変身アイテムを取り出した。
「だが、外野がどう騒ごうが関係なイ。行くぞ、ダレン!」
「望むところだ。こちらも、令和最新版の原典を使わせてもらおう」
『セット・チョコ!』
銃の先端に小さなチョコレートのような物体を取り付け、大地にそれを突き立てる。すると、銃が接触している地点から、液体のチョコレートが池のように溢れ出した。
『チョコドン! パ・キ・パ・キ!』
やがてダレンの体を装甲が覆い、最後にその表面を包む銀紙が剥がれ落ちて変身完了する。
「この形態の名は、超次元ライダー・ヴァレ……否、ダレンだ!」
板チョコのような見た目のアーマーの赤と茶色の戦士はそう名乗り、弾丸を連射しながらダイモンへ接近。初っ端から必殺技を発動した。
「喰らえ!」
巨大なチョコボールのようなものを銃から発射するダレン。対するアズマは、ドライバーに装填してある「ヴィランキメラ」スタンプを二度倒し、必殺技で応戦した。
「お前にジャッジを、下す!」
『オクトパスエッジ!』
ダイモンの背から、リボンズのリボンミックスよりも遥かに大きな、六本の機械アームが伸びた。アームはチョコボールをがしっと受け止め、難なく粉砕してみせる。
「ならば!」
『ドーマル! モ・フ・モ・フ!』
光に包まれ、ダレンの鎧の頭部と肩の部分に、ドーナツっぽい装飾が追加された。さらに技を発動。ダイモンの機械アームにドーナツ状のエネルギー体を吸着させて、自由に動かせなくした。
「小賢しイ」
『電気ウナギエッジ!』
オクトパスアームの使用を諦めたアズマは、代わりにスタンプを四度倒した。両の手のひらから超高圧電流を放ち、ダレンを狙う。乱れ飛んだ稲妻はダレンだけでなく周囲の地面をも焼き焦がし、五十路ウルフ率いる応援団やお菊らは慌てて後退した。
『ブシュエル! フ・ワ・フ・ワ!』
チョコ味のブッシュドノエルを模した分厚い鎧が、フォームチェンジしたダレンの頭と肩と胸に装着される。召喚した斧型武器を放り投げて避雷針代わりにすると、戦士は稲妻をかわしてダイモンの元へ駆けた。
「……肉を斬らせて骨を断つ」
『チョコルド! パ・キ・パ・キ!』
走りながら、小さなブラックチョコレートを銃の先端へ取り付け、最初に変身した基本フォームに近い見た目にチェンジ。ただし、ところどころに黒く妖しい紋様が刻まれていた。
「この形態は、肉体への負担が大きい。一気に決めさせてもらう」
ダイモンへ向けた銃口から、黒い液体チョコレートの奔流が放たれた。
「その台詞、そっくりそのまま返ス。成敗!」
『オオトカゲエッジ!』
アズマも負けじと、スタンプを四度倒した。トカゲの尾のエフェクトを纏った跳び蹴りを繰り出し、ブラックチョコレートの光線を相殺する。
「チッ」
なかなか決着がつかないことに苛立ったのか、ダイモンは今度はドライバー本体を操作した。三種の生物のエフェクトを同時に展開し、それらを一身に帯びた必殺のライダーキックを放つ。
「チョコレートの原典ばかり使うとは、ひょっとして俺に手加減しているのカ? だとしたら、お節介な奴ダ!」
『マッドリミックス!』『必殺・カオス・ヴィランキメラチャージ!』
「手加減? 違うな」
銃を一旦地面に置き、ダレンは新たな青いベルトを腰に装着した。チョコフラッペ型のアイテムを上部にセットし、ベルト横のレバーを倒して強化形態に変わる。
「朝早くに私に挑戦するくらいの熱意があるのだから、これまでの戦いで私が使用した原典は、貴様に研究されていると見るべきだろう。であれば貴様がまだ知らない、最新の力で応じようと思ったまでだ」
それに、濡ラジラとの最終決戦のときのように、今のダレンは複数の二号戦士の原典を自在に切り替えて戦うスタイルから脱却しつつある。レジスタンス全体としての戦力アップを図るべく、原典は可能な限り他のメンバーにも分配しているのだ。
『フラッペカスタム! シャリシャリ!』
チョコフラッペのクリーム部分を思わせる、トゲトゲしつつも流線形を描いたフォルムのアーマーを纏う。そのカラーリングには金色が加わっており、強さと高級感が漂っていた。
「ここに誓おう。手加減なしの真剣勝負で、貴様に勝つと!」
『フラッペ・ダレンボルテックス!』
ダレンも、チョコレートの渦と冷気とを帯びた跳び蹴りを繰り出す。両者は空中で大激突した。
「Come on, Darren!」
「おおおおっ!」
本来、ダレンの技にはキック命中後に時間差で相手の体を凍結させる効果があったのだが、アズマは体が凍りかける側から全身に力を込め、無理やり氷を砕いている。そのため両者ともに一歩も引かず、破壊エネルギー同士がぶつかり合う均衡状態が生まれた。
しかし、それも長くは続かない。やがて二人は爆発に包まれ、互いの必殺技の反動で吹っ飛ばされた。地面に倒れ込むと同時に、アーマーが限界を迎えて変身解除。
「くっ……」
「なかなか、やるナ……」
荒い息を吐き、睨み合う戦士たち。と、アズマは不意に、離れたところで見守っていた、審判役の五十路ウルフに視線を向けた。
「おイ、五十路ウルフ」
「ん?」
「等身大のバトルで決着がつかないときは、ロボ戦にもつれこむのがお約束だろウ。お前の持っている巨大ロボ、俺に寄越セ。間違えた、『貸せ』!」
「お前、本当に返す気あるんだろうな⁉」
「うるさイ。日本語、難しい。いいから早く貸せ!」
『オクトパス! 電気ウナギ! オオトカゲ! 超次元ライダーダイモン・ダイモン・ダイモ~~ン!』
言うが早いか、アズマは再度ダイモンへ変身した。「オクトパスエッジ」で機械アームを展開し、赤い戦士が持っていた、人の手の形をしたアイテムを奪取する。
「なるほど。これに、この指輪のようなものを嵌めれば良いんだナ」
『アウェイキング!』
ふむふむと頷きながら操作を進めていくと、「パンパン・パパパン」と拍手の音が鳴り響いた。手の形の武器が巨大化&変形し、ダイモンもそこへ飛び乗る。
『掴め! 切り裂け! レッ・ド!』『掴め! 切り裂け! レッ・ド!』『イソジード・レ~ッド!』
たちまち、金のボディーに赤い頭部のロボットが完成し、ダレンを見下ろした。
なお、このロボット、原作では変身前の状態で乗り込んでいる。その影響なのか、アズマも搭乗後すぐに変身を解いた。
「どうだ、ダレン。これだけのサイズ差があれば、いくら何でも俺には勝てまイ!」
「……貴様、借り物の原典で私に勝てたとして、本当にそれで良いのか??」
寝込みを襲うのを躊躇した割には、どうも決闘における判断基準が適当な感じがする。今さっき、ダレンが「真剣勝負で貴様に勝つ」と宣誓したのは何だったんだろうか。
何はともあれ、相手がその気ならば、それなりの手段でもって対抗すべきだ。遠巻きに見物していたBLACON・SUNに気づき、ダレンは素早く指示した。
「BLACON・SUN、貴様の『兄妹攻神(ブラブラコンジン)』を貸してくれ。あれで迎撃する」
「了解した。勝たないと、許さん!」
金色の龍型モンスター、紫の虎型モンスターが出現し、前者が後者を包み込んで拘束するようなシークエンスを経て、二体合体。完成した兄妹攻神はイソジード・レッドと向かい合い、ともに剣を構えて激しく斬り結んだ。
頑張れ頑張れと応援する野次馬を横目に、松本・オリジン・お菊はため息をつく。
「……で、この不毛なバトル、いつまで続くわけ?」
後日談というか、今回のオチ。
結局、ロボ同士が戦っているところにようやく起きたフィリーレンがやって来て(本人曰く「早朝からロボがバトルしていたら、さすがに目も覚めるよ。」)、爆裂魔法をぶっ放して二人を戦闘不能に追い込んだ。ナンバーワンはフィリーレンのままということで決まり、戦いは呆気なく終了した。
長い時を経て、平和が実現した超次元界。ここ最近起きた派手なバトルと言えば、レジスタンスナンバーワンバトルと称した、このしょうもない内輪揉めくらいであった。
思わず笑ってしまうくらい平穏な日々の中で、かつての争いで傷ついた戦士たちの心は少しずつ、だが確実に癒されていった。
これにて完結です。
どのタイミングで終わらせるべきか、正直かなり迷ったのですが、
ルーカスや濡ラジラのようにインパクトのある悪役を今後も出し続けられる自信がなかったのと、私自身他に書きたいものが出てきたので、この辺りで完結とさせていただきます。
全体を通して非常にしょうもない内容の小説ですが、最後まで読んだ下さった方、本当にありがとうございました。