百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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番外編⑤ おかえりヒーロー

 そのとき、一発の弾丸がレッド・ピュアッシュの手に当たり、狙いが狂った。ツカサのすぐ横を、風を切り裂いてエネルギー光線が通過していく。

 

「誰だか知らないが、今俺の邪魔をしたな。これでお前とも縁ができた!」

「ふざけやがって。別にお前と仲良くするつもりはねえよ!」

 

 エックスチューナーを構えたカイリが、ため息をついた。モモタロウへ銃口を向けて威嚇しつつ、倒れたツカサに駆け寄る。

 

「おい、大丈夫だったか?」

「何とか生きてるわ」

 

 差し出された手を取って立ち上がると、ツカサは大ピンチな状況にもかかわらず、ちょっとドキドキしてしまった。血管が浮き出た、ごつごつして硬い手。女の自分のものとは異なる、男性的で逞しさを感じる手。カイリのことを異性として意識しているのだと、自覚せざるを得ない。

 ナオヤから語弊のある発言をされたときとはまた違う、より熱を帯びたときめきだった。

 

(やだ。やっぱりあたし、カイリのことを……)

 

 

「待たせたな、ツカサ!」

 

 残念ながら、彼女が自分の気持ちとじっくり向き合う余裕はなかった。まあ、当たり前といえば当たり前である。今はバトルの真っ最中なのだから。

 

「定時連絡が途絶えたので、もしやと思って来てみたんだ。どうやら、予感が的中したようだな」

 

 ケイイチロウ、サクヤ、トウマ、ウミカ――かつて共に戦った仲間たちがいつの間にか一堂に会し、横並びに立って超モモタロウと対峙していた。サクヤに助けられ、ナオヤも再起する。さすがのモモタロウも、七人のヒーローを前にしてたじろいだ。

 

「馬鹿な。東京から名古屋までは、新幹線でも二時間近くかかるはず。一体、どうやってこんなに早く来れたんだ⁉」

「俺たちのマシンは、新幹線より速いんだよ!」 

 

 

 そう言って、カイリがにやりと笑う。彼が指さした頭上の空には、ヘリコプター型の巨大マシンがホバリングしていた。

 あれは百合イエロー・ウミカが操縦する巨大マシンで、百合カイザーへ合体する三機の戦闘機のうちの一つだ。ロケット弾を搭載しているため攻撃もこなせるが、今回は純粋に移動手段として利用した。連絡が途絶えたことで「もしや」と思ったケイイチロウがサクヤに声を掛け、さらに元百合レンジャーの面々をも集め、名古屋へ飛んできたのである。

 

 なお、この大決戦の舞台が駐車場の一角で行われているのは、オメガコーヒー本店からすればたまったものではない。店内の客たちも「何事か」と騒ぎ始めている。もし破損等した箇所があれば、BL警察が全額賠償するつもりだ。

 

「ハーッハッハッハッ! 面白い。まとめて地獄に送ってやるぜ!」

 

 銃から歯車を取り外し、レッド・ピュアッシュの姿から元のモモタロウへ戻ると、超次元生命体は大きな声で笑った。

 

「地獄に行くのはお前だ。久しぶりに行くぞ、皆!」

「おう!」

 

 カイリの号令に力強く応え、七人は一斉変身した。怪盗と警察、一度は解散した戦隊が、今この名古屋の地に再び集結したのである!

 

 

 エックスチューナーを操作して変身する頃には、ツカサとカイリの手は離れていた。「ツカサを助け起こす」という目的を達成した以上、カイリには手を繋いだままにしておく理由がない。ツカサは手を握られて密かにドキドキしていたけれど、不自然に長く手を繋いで不審がられるのは、彼女の本意ではなかった。

 けれども、いつかまた、彼と手を繋ぎたいと思う。できることなら単なる同僚としてではなく、もう少し違った関係で。

 

「……警察チェンジ!」

 

 上気した顔を金色のマスクが隠してくれるのを、ツカサはありがたく感じた。

 カイリはかなり鈍感な方だという気がする。彼との距離を縮めるには、もうしばらく時間がかかるだろう。でも、今はそれでもいい。まずは目の前の敵を倒す。

 ここ名古屋に住む人々にだって、家族や友人、恋人、大切な人たちがいるはずだ。大魔王(の泥人形)を倒す際の決定打になった「絆」を守り抜くのが、きっと自分たちに与えられた使命なのである。

 

 

「カイリ、推し推し砲で行くわよ!」

「任せろ!」

 

 相棒の横顔――銀のマスクで覆われている――をちらりと見て、ツカサは微笑した。

 

「……フフッ。やっぱり、あんたと一緒にやる方がしっくり来るわね」

「えっ?」

「何でもないわ」

 

 超モモタロウが推し推し砲と「BLディフェンダー・ファイナルモード」「BL・一撃ストライク」「百合・イタダキストライク」を連続で喰らって大爆発するのは、この五秒後のことだった。ちなみに、一応爆発の跡を調べたが、泥や砂は検出されなかった。モモタロウは泥人形ではなかったようだ。

 その後はオメガコーヒー本店の店主に土下座して「ご迷惑をおかけしました」と謝り、百合イエローの操縦するヘリで東京に戻り、超モモタロウがべらべら喋った内容を情報共有した。

 

 

 ついに、次元大魔王と泥人形の謎が明かされた。これでようやく、ナオヤは父親の真実を確かめることができた。

 未だ謎に包まれている超次元生命体とは、はたしてどんな奴らなのだろうか? 超モモタロウ以外にも仲間がいるようだが……?

 頑張れ、百合レンジャー! 負けるな、BLレンジャー! そして、影ながら応援しているぞ、ツカサとカイリ! 勝負、勝負!

 

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