百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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⑦守れ!宇宙の普通の命

 これまでに百合&BLレンジャーが戦った高次元生命体、あるいは超次元生命体は、何らかの性癖を反映した能力を持つ場合が多かった。おねショタ、SMプレイ、ツンデレ、TSなどなど、数え上げると枚挙にいとまがない。

 このガードノイド・マッシュが反映しているのは特異な性癖ではなく、セイヘキ・ザ・ワールドが言うところの「ノーマル」性癖の中でもごく普通な部類のもの。いわゆる量産型のチャラい男子、もしくは可愛い女子のイメージが投影されている。

彼はノーマル性癖をパターン化し、解析することに成功した超次元生命体だった。

 

 

「ありがたく思え。最初こそ戸惑いもあるかもしれないが、最も異性からウケの良いヘアスタイルを全人類に強制すれば、恋愛はもっと効率的になるはずだ。いわば俺は、親切心で貴様らの髪形を変えてやろうとしているのだぞ?」

 

 だから大人しく支配を受け入れてくれないか、と続けたロボットに、オメガ珈琲シルバーは猛然と飛びかかった。専用武器・珈琲ブレイザーの銃身でガードノイド・マッシュの顔面を殴りつける。

 さすがにロボットの鋼鉄のボディーは硬かったが、怯ませる程度の威力はあったようだ。

 

「何をする。貴様、人が話している途中で攻撃するのは反則だぞ」

「さっき銃で殴られたのが気に食わなかった。それに……」

 

 近距離から珈琲色のビームを連射し、裕介はマッシュに反撃の隙を与えない。一発だけではさほどダメージを与えられなくとも、連続攻撃を仕掛けることで硬いボディーを破壊するつもりだ。

 

「すべての人間が同じ髪形だなんて、面白くねえんだよ。ユーチューバーの真似ばかりしていたかつての誰かさんを見てるみたいで、反吐が出るぜ!」

 

 志穂怜奈もきっと、そんな世界は望んでいない。

 

 

「ぐああああっ⁉ ちょ、調子に乗るな!」

 

 マッシュも髪形変更ビームを何発か撃ったが、オメガ珈琲シルバーのビームに相殺され、効力を発揮できなかった。もっとも、命中してもダメージを与えられたわけではないのだけれど。

 

「効率が悪くても構わない。皆が違いを認め合える世界を、色んなヘアスタイルが共存できる未来を、俺は選ぶ。オリジナリティーもクソもない世界なんざ、死んでもごめんだ! ――『ブレイザー・珈琲インパクト』!」

 

 オメガ珈琲シルバーに変身していられる時間は、二分三十秒しかない。そろそろラストスパートだ。

 必殺技名を叫び、裕介はガードノイド・マッシュへ突進した。

 

「こうなれば仕方ない。マッシュガン、『ギガ・ファントム』モード!」

 

 すると、敵も何やら秘策を繰り出してきた。

 ロボットの右腕の銃には、髪形変更ビーム以外にも、もう一つ別の機能が備わっていた。「ギガ・ファントム」モードに切り替えると、ビームが当たったものを巨大化させることができるのだ。ヘアスタイルを変えるだけでは敵にダメージを与えられないため、それを補うのがこのモードである。

 ビームを当て、元の数倍の大きさに膨れ上がった自動車を、マッシュは次々に投げつけた。対して裕介は、珈琲ブレイザーをソードモードに変え、空高くジャンプする。

 何を投げつけられようが関係ない。全部この剣でぶった切れば、あのロボットの懐へ飛び込める。そう考えていた時期が、彼にもありました。

 

 

(……いや、さすがにヤバいだろ。敵を倒せたとしても、壊した車の弁償はどうするんだ)

 

 ざっと見ただけで、マッシュが投擲した車は五台ある。これを全部破壊してしまったら、裕介の給料では何か月働いても返済できない。

裕介は迷った。迷っているうちにも、自動車は物凄い速さでこちらへ向かってくる。

 

「手を貸しやしょう、オメガ珈琲シルバー!」

 

 地上に残っていたロリーニンジャーが腰にバックルを装着し、そこに三枚のメダルを装填。スキャナーで読み込むことで、頭に黒い帽子、首にチョーカー、手首にリボンが付いた姿に変わった。

 

『リボン! 帽子! チョーカー! リ・ボ・チ! リボチ、リ・ボ・チ!』

 

 ロリーニンジャーの手首から伸びたリボンが五台の車を絡めとり、そっと地面へ下ろす。

 

「自動車はあっしが引き受けやす。坊ちゃんは攻撃に専念して下さいやし!」

「何だかよく分からないが、便利な能力だな。恩に着るぜ!」

 

 邪魔な車は消えた。金銭的な心配事がなくなれば、あとはタイムリミットまで暴れるだけだ。

 

 

「これで終わりだ、ガードノイド・マッシュ!」

 

 急降下の勢いを乗せ、裕介は珈琲ブレイザーの青く長い刀身を全力で振り下ろした。渾身の袈裟懸け斬りを喰らって、漆黒のロボットのボディーから激しい火花が飛び散る。歯車やらネジやら、彼の体を構成する部品のいくつかも散乱した。

 必殺技を見舞って着地した直後、タイムリミットが切れた。変身解除した裕介が顔をしかめる。

 また鉄の臭いだ。毎度毎度、嫌になる。超次元生命体ってのは、皆機械でできてやがるのか?

 

 

「まだだ」

 

 かなりの損傷を受けながらも、ガードノイド・マッシュはまだ息があった。

 

「こんなところで倒れれば、三武神様に顔向けできぬ。俺の最後の力を見せてやる!」

 

 残ったエネルギーを振り絞り、ロボットは自分自身に向けて「ギガ・ファントム」モードのビームを照射した。瞬時に身長五十メートルほどの巨体に成長したマッシュが、裕介とロリーニンジャーを見下ろして笑う。

 

「このサイズにまで巨大化すれば、一度に大量の人間のヘアスタイルを変えられる。そうすれば日本社会は大混乱だ。ハッハッハ!」

「……そんな回りくどいことしなくても、普通に破壊活動でもした方が効率よくね?」

 

 マッシュの防御力はなかなかのものだった。オメガ珈琲シルバーの必殺技を受けても倒れなかったのは、賞賛に値するかもしれない。ただ、攻撃力と作戦の内容が微妙すぎるのが難点である。

 いや、ツッコミを入れてる場合ではない。タイムリミットが切れた裕介には、巨大化したガードノイド・マッシュに対抗する術がないのだ。

 

 

「ここから先は、あっしが引き受けやしょう。カモン、『ロリコンキング』!」

 

 対抗できるのは、同じくらいの大きさを誇る巨大ロボだけ。西部劇のガンマンに似た風貌のロボットを召喚し、キンジがそのコクピットへ乗り込んだ。

 ロリコンキングを狙い、ガードノイド・マッシュが銃を連射する。

 

「受けてみろ。マッシュガン、『アタック』モード!」

「何っ⁉ まさか、もう一つ別のビームを隠していたんでございやすか?」

 

 ロボットの操縦席で、キンジは動揺した。

 

「そうだ。第三のビームは攻撃力に特化している。すなわち、ただのレーザー光線だ!」

「あ、ごく普通でございやすね」

 

 ロリーニンジャーは一瞬で冷めた表情になった。

 

 しかし、髪形をいじったり巨大化させたりせず、純粋に破壊力が高いビームは脅威といえば脅威だ。赤い光線が放たれたのを見て、横に跳んで回避しようとするロリコンキング。レーザーはその肩をかすめ、背後の山を吹き飛ばしてしまった。

 

 

「どうだ。普通こそ最高、普遍こそ至高! マッシュヘアやシースルーバングがごくありふれた髪形でありながら多くの人間を魅了するように、シンプルな武器こそが最強なのだ!」

「そうと分かっていながら、わざわざ妙なビームを撃つような真似はやめて下さいやし⁉」

 

 元々、ロリコンキングは素早い回避行動に向いていない。銃を連射したときの反動に耐えられるよう、パワーと防御力重視の頑丈な構造にしてある。

 ロリーソードガン探しの旅に出る前、ピーター・バーガーたちの協力を得て完成させたロボット。名前は酷いが、これでもアメリカの科学技術を結集させた、百合カイザーやBLカイザーに勝るとも劣らない性能を持つ。それが今、ガードノイド・マッシュのレーザー光線に苦戦していた。次々に発射されるビームをかわすのに精一杯で、反撃する余裕がない。

 

 

「逃げ回ってばかりだな。だが、貴様が俺の光線を避けるたびに、貴様の後ろにある大自然が破壊されるということを忘れるな。仮にも戦士なら、堂々と戦え! 危険に今、命を張れ。地球が危ない!」

「ふざけないで下さいやし。そもそも、お前さんがレーザーを撃たなければ、自然が破壊されることもないでございやしょう!」

 

 キンジは負けじと言い返したが、どう見ても形勢は彼にとって不利。地上に残っていた早川裕介は、戦いの行方をはらはらしながら見守っていた。

 

「畜生。俺にも巨大ロボがあれば、ロリーニンジャーに加勢できるのに」

 

 裕介が己の無力を呪ったそのとき、遥か彼方から迫ってくる足音があった。

 

 

「――『マックスBLブリザード』!」

 

 大地を疾駆して現れた恐竜型ロボ・BLレックスロボが、両肩のバズーカから低温レーザーを撃ち出す。不意を突かれたマッシュは、その直撃を受けて全身氷漬けになってしまった。

 

「手を貸すぞ、ロリーニンジャー!」

 

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