百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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⑧性癖大砲!

 BLレックスロボの頭部に乗っているのは、赤と黒の近未来的なデザインのアーマーを纏った戦士。滝沢ナオヤ、またの名を高次元生命体トランガが変身する、BLファイヤーだった。

 名古屋市民からの通報を受け、「オメガ珈琲シルバーとロリーニンジャーの二人がかりでも敵に苦戦している」と知った彼は、単騎でロボを駆り、出動したのである。

 

「先日は、俺の仲間が世話になったらしいな。これで借りは返したぞ」

 

 それからナオヤは、裕介を見下ろした。

 

「君がオメガ珈琲シルバーか。名古屋の平和に貢献してくれたこと、感謝する」

「ヒーハー! 百合エックス、BLエックスの次はBLファイヤーにも会えるとは、こいつは縁起がいいでございやさあ!」

「BLファイヤーって確か、BL警察四人目の新戦士だよな。そんなすげえ奴に助けてもらえるなんてラッキー……いや、でも待てよ。もしかして、俺がオメガ珈琲シルバーだってこと、今のでBL警察本部にバレた?」

 

 

 推しに会えて素直に喜んでいるキンジ・オネガワと、正体バレを気にしている早川裕介。

 助っ人登場に各々がリアクションしていると、ガードノイド・マッシュの体を覆っていた氷の膜がバリバリと割れて崩壊した。どうにか氷漬けの状態から逃れ、再び銃を構える。

 

「馬鹿め。その程度の攻撃で、俺を止められるとでも思ったか!」

 

 BLレックスロボの必殺技「マックスBLブリザード」には、ターゲットの肉体を構成する細胞に作用し、敵を圧縮冷凍する効果がある。巨大化した次元大魔王に対して使用したときは、彼のサイズを人間と同程度にまで小さくすることに成功した。

 だが、機械の体を持つマッシュとは相性が悪い。細胞を圧縮できないため、体を凍らせることは可能でもサイズを変更できない。

 もっとも彼の場合、圧縮されたとしてもマッシュガンの「ギガ・ファントム」モードでもう一度巨大化して襲ってくる可能性はあるが。

 

 

「まずいな。奴には、BLレックスロボの技が効かないのか」

「だったら、攻撃はあっしに任せて、ファイヤー坊ちゃんは防御に専念して下さいやし。『ロリコン・荒くれバスター』!」

 

 代わって、ロリコンキングが怒涛の銃撃を放った。

 

「貴様ごときの攻撃力で、俺を上回れるものか。必殺、『ストロング・マッシュ・ダウン』!」

 

 ガードノイド・マッシュも何やら必殺技名のようなものを叫び、さらに威力を増したレーザーを発射した。光線がぶつかり合い、僅かにマッシュが競り勝つ。閃光がX字にきらめいたかと思うと、ロリコンキングは爆風で吹き飛ばされ、転倒してしまった。

 

「次は貴様だ。『スーパー・ライブ・マッシュ』!」

 

 マッシュの銃が光に包まれて銃剣へと変化し、それを構えてBLレックスロボに突進。すれ違いざまに胴を斬り払い、大ダメージを与えた。

 

「どうやら、勝負あったようだな」

 

 ふらついている恐竜型ロボを一瞥し、黒の巨兵は笑った。

 

「引導を渡してやる!」

「くっ。ここまでか……」

 

 仮面の下で唇を引き結び、ナオヤは悔しそうに唸った。

 

 

「思えば、BLレックスロボの出番が今までに一回しかないのはさすがにヤバいだろうと、『今回は俺一人で大丈夫だ』と出撃してしまったのがまずかったか。たとえ出番があっても、活躍できなければ意味がない。反省しなくては」

 

 たとえば、敵に倒される直前。重要なシーンの途中でキャラクターが回想を始め、「実はこのキャラにはこんな側面もあったんです!」と示す手法はよく使われる。今回の滝沢ナオヤの回想は、ただひたすら情けなくて残念なだけだった。

 なぜなら彼は、まだ敵にやられると決まったわけではなかったからである。

 

「ファイヤー坊ちゃん、大丈夫でございやす。こんなこともあろうかと、ロリコンキングは合体機能を搭載していやすから!」

 

 ガンマン型ロボのコクピット内で、キンジが不敵な笑みを浮かべた。

 

「何だと? そういうことは早く言ってくれ。俺の回想シーンが全くの無駄になったじゃないか」

「まあまあ。お楽しみはこれからってことで、早速行きやすよ? 『おねロリ&BL合体』!」

 

 刹那、ロリコンキングが両腕、両足、胴体の計五つのパーツに分離した。それぞれがBLレックスロボの肩、脚部、胸部に合体していく。腕と足だったパーツは、メカアームではなくキャノン砲としての機能を新たに発現させ、胴を形成していたパーツは、マッシュに斬られた胴を修復するかのように頑丈な鎧として機能する。

 

「「完成! おねロリBLレックスロボ!」」

 

 

 地上からその壮大な合体を眺めていた裕介は、「もう少しかっこいいネーミングが良かったな」と思った。あと、おねロリとはつまりお姉ちゃんと妹の百合のことだから、どう考えてもBLというジャンルとは無関係だろう。

 まあ、見た目はごつくて強そうで、最高にかっこいいけれども。

 全く異なるジャンルに属するヒーローたちが、手を取り合う。高次元生命体による洗脳の影響が薄れつつある今、百合レンジャーとBLレンジャーが共闘しているように、これもまた新しい正義のあり方なのかもしれない。

 

 

「さあ、今度は皆で一緒に操縦しやしょう!」

「ああ」

「おう!」

 

 合体前と比べて広くなったコクピットに、ロリーニンジャーとBLファイヤーの二人が乗り込む。それでもスペースが余っていたので、裕介も再度オメガ珈琲シルバーに変身し、操縦補助というかたちで搭乗した。

 おねロリとスーパーヒーローを愛するハイテンション男。キンジ・オネガワ。

 洗脳を受けていないためノーマル性癖しか持たない、BL警察の異端児。滝沢ナオヤ。

 女性に振られ続ける中で、己のオリジナリティーを模索するニューヒーロー。オメガ珈琲シルバー。

 個性豊かな三人のヒーローが結集した今、向かうところ敵なしだ。

 

 

「くだらん。死にぞこないどもが合体したところで、俺に勝てるとでも?」

 

 ガードノイド・マッシュはレーザー光を照射した。

 

「知らないのか。一足す一は無限大なんだ!」

「あっしら追加戦士の底力、見せてやりやさあ!」

「奇跡の絆で結ばれた、熱い炎を上げてやるぜ!」

 

 対するおねロリBLレックスロボは、全身の砲門からフルパワーでビームをぶっ放す。今度は逃げも隠れもしない、真正面から敵の攻撃を迎え撃った。

 

「ば、馬鹿な。この俺が……競り負けただと⁉」

 

 三人の力が一つになり、ビームの奔流がついにガードノイド・マッシュのボディーを貫いた。苦悶の叫びを上げ、漆黒の機械兵が膝を突く。

 

 

「数百年もの間、俺は超次元三武神にお仕えしてきた。俺たちの世界で神のように崇められる存在を守護するため、必死に鍛錬し、力と技を磨いてきた。それなのに、なぜ貴様らごときに⁉」

「神だか何だか知らないが、要するにお前は、その三人のためだけに戦ってきたってことか。だがな、俺たちはもっと大きなものを背負って戦ってるんだよ!」

 

 オメガ珈琲シルバーが吠え、操縦レバーをぐいと倒した。

 

「星の命を救い、その愛で大切な人と、大切な人の未来を守る。俺たちは地球と、この星に生きる人々のために命を張る!」

「あっしらは、愛と勇気というナイフを持った戦士。……皆さん、カウントダウンがゼロになったら、発射ボタンを押して下さいやし。超必殺技で、一気に勝負を決めやしょう!」

 

 BLファイヤーとロリーニンジャーも彼に続き、三人はカウントダウンを始めた。

 

「「「せーの、ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ!」」」

 

 ポチっとボタンを押すと、全てのキャノン砲から最大火力のビームが射出された。

 

「「「超必殺、『おねロリ&BL・アッパレバスター』!!!」」」

 

 

「カウントダウンの仕方が独特だった~⁉」と絶叫したのち、ガードノイド・マッシュは大爆発に呑まれて散った。カウントがゼロになっていない上に、「ワン」からカウントが始まったため攻撃のタイミングが読めなかったことは、結果的にはおねロリBLレックスロボの勝利に寄与したようだった。

 

「忍ばず、ヒーハー!」

「ジ・エンド」

「……あ、皆、敵を倒した後の決め台詞みたいなの持ってるのか。俺も何か考えておこうかな」

 

 コクピットで唐突に騒ぎ出した仲間たちを横目に、裕介はオリジナリティー溢れる決め台詞を考案していた。

 何だか緊張感のないヒーローたちだが、強敵ガードノイド・マッシュを撃破して、これにてひとまず一件落着である。

 

 

 合体を解除し、恐竜型ロボに乗って去っていくBLファイヤー。

 

「レックスロボを修理するため、俺は東京に戻る」

 

 ロボットの頭部に座り、軽く手を振ってきた。

 

「また会おう、名古屋のヒーローたち。東海地方の平和は、君たちに任せたぞ」

「先輩、今日はありがとうございました。俺はまだまだ新米ですが、一生懸命頑張ります!」

 

 彼に尊敬の眼差しを向ける裕介と、

 

「あっしも精進しやすから、期待してて下さいやし!」

 

 元気に手を振り返しているキンジ・オネガワ。

 

 

「いや、ロリーニンジャーは名古屋のヒーローじゃないだろ⁉ お前は武器を探す旅に戻れよ」

「そうは言っても、まだ名古屋のグルメを堪能していやせんし。味噌カツバーガーも食べかけでございやす」

「世界平和よりも味噌カツバーガーを優先するな」

「じゃあせめて、ロリコンキングの損傷部を直し終わるまでは滞在させて下さいやし!」

「……あーもう、分かったよ!」

 

 名古屋観光がしたいと訴えるキンジに根負けして、裕介はこめかみを押さえた。どうやら、アメリカ出身の風変わりなヒーローとの付き合いはもう少しだけ続きそうだ。

 

 

 オメガ珈琲シルバー、ロリーニンジャー、BLファイヤー。追加戦士枠の三人が力を合わせたことで、超次元三武神の守護者、ガードノイド・マッシュは倒された。

 しかし、腹心の部下がやられたとあっては、いよいよ神々たちもお怒りだ。超次元生命体の侵攻が本格化するまで、秒読みである。

 ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ! 地球を守るために戦え、世界のヒーローたちよ!

 




今回、ご迷惑をおかけした作品
・ファイブマン


※追記
いつも読んで下さっている皆様、ありがとうございます。更新準備のため、申し訳ないですが一週間ほどお休みさせていただきます。よろしくお願いします。
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