百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

59 / 394
⑫誓い!再び強くなってこの場所へ

「怪盗チェンジ!」

「警察チェンジ!」

 

 戦闘機型マシンから飛び降りると同時に変身し、ツカサとカイリは無傷での着地に成功した。

 現場は異常だった。ドーム状の黒いエネルギー体が河川敷に鎮座し、その側には若い男性が一人、泣き崩れている。

 

「BL警察特殊部隊、BLエックスよ」

「俺は百合エックスだ」

 

 男に駆け寄り、ツカサたちはごく簡潔に名乗った。

 

 

「同僚のナオヤくんから、話は聞いているわ。あなたがオメガ珈琲シルバーね? 状況を説明してもらえないかしら」

「ああ、そうだ。アマエマックスと名乗る超次元生命体が、俺の仲間を『バブみフィールド』とかいう空間内へ閉じ込めてしまったんだ」

 

 裕介は涙ぐみながら答えた。

 

「バブみフィールドって、あの真っ黒なドームみたいな?」

 

 ツカサが聞いたのも束の間、そのドームが破裂するように消え、中から恐竜の戦士と原典無しが姿を見せた。

 アマエマックスが、青年の体を地面へ無造作に放り投げる。和服の胸の部分が血でどす黒く染まっていた。おそらく、バブライザーで胸部を貫かれたのだろう。絶望に見開いた目と、血の気のない顔は、彼が既に絶命していることを示していた。

 

 

「弱すぎる。まるで手応えがなかったぞ」

 

 赤と金の戦士は、つまらなさそうに吐き捨てた。

 その言葉に感情を逆撫でされ、制御不能の熱い炎が戸惑いを焼き払う。昨日までの感覚を忘れさせる。

 

「お前だけは……お前だけは、絶対に許さない!」

 

 もう一度オメガ珈琲シルバーに変身し、裕介は怒りを爆発させて向かっていった。ソードモードにした珈琲ブレイザーをがむしゃらに振り回し、攻撃の手を緩めない。

 けれども、アマエマックスはその全てを盾で、あるいは腕で防いだ。

 

「諦めろ。貴様ごときの力では、俺を倒すのは不可能だ!」

 

 フィールドを展開するまでもない、と言いたげに、バブライザー上部の刃でシルバーを滅多切りにする。銀の装甲はたちまち破損し、また変身が解けてしまった。

 

 

「とどめだ」

 

 膝を突いた裕介に、アマエマックスが剣を振り上げる。

 

「させるか!」

「あたしたちが相手よ!」

 

 そこにカイリとツカサが割って入り、戦いは第二ラウンドへ突入した。左右に回り込んで、VSチューナーで光弾を撃ちまくる。長い間コンビを組んでいるだけあって、二人の息はぴったりだった。

 

「スーパー・スペリオル・受け攻めショット!」

「スーパー・エクセレント・ネコタチエックス!」

 

 もはや出し惜しみはなしだ。TSライジャーとの戦いで習得した技を、二方向から同時に放つ。

 

「くっ」

 

 さすがのアマエマックスも、別々の方向から飛んでくる金と銀の光の奔流を完全にガードすることはできなかった。バブライザーでも威力を殺し切れず、装甲からスパークを飛ばして後退する。

 

「ならば、これでどうだ。『大気爆裂・バブみフィールド』!」

「おわっ⁉」

「ええっ⁉」

 

 

 暗黒空間に取り込まれると、カイリもツカサも全身から力が抜けてしまったようだった。

 

「や、やべえ。よく分からないけど、めっちゃバブバブしたくなってきた……」

「でちゅね遊びがやりたくてたまらないわ!」

「フハハハハ! 隙だらけだぞ!」

 

 勝ち誇ったアマエマックスが、必殺技「スラッシュバブシマム」を発動する。光の刃が二人を薙ぎ払い、かなりのダメージを与えた。

 

 

(畜生、どうすればいいんだ。このままじゃ原典無しも俺も、助けに来てくれた百合・BLレンジャーの皆も、あの恐竜野郎に倒されちまうじゃないか)

 

 二度の変身、二度の敗北。裕介には、もう立ち上がる気力すら残っていなかった。目の前で原典無しが殺されるのを、なすすべもなく眺めているしかできなかった無力感も相まって、涙も枯れ果てた。

 

「大丈夫か⁉」

 

 そこにもう一機、ヘリコプター型の巨大マシンが到着する。飛び降りてきたのはBL1号、2号、百合イエロー、ブルー。BLファイヤーを除く、百合・BLレンジャーの全メンバーが揃い踏みした。

 ちなみに、ナオヤは不測の事態に備えて東京に残っている。今回の名古屋襲撃が陽動ではないとは言い切れない。

 

 

「実は、かくかくしかじかで……」

 

 聞かれるがまま、早川裕介は再び状況説明を行った。ただし、先刻ツカサたちにした説明と異なるのは、今や百合エックスとBLエックスの二人もフィールド内に取り込まれ、絶体絶命だという点だ。

 

「やばやば! えー、どうするの~?」と百合イエロー・ウミカ。

「できることなら、今すぐにフィールド内へ突入し、二人を救出したいところだが……」

 百合ブルー・トウマがためらう。

「バブみフィールド内では『赤ちゃんプレイをしたい』という欲求に襲われ、まともに思考できなくなる。しかも、敵の戦闘能力が倍増する。今回の敵は超次元三武神の一人の実力者だということだし、仮に総力を挙げて挑んでも、勝てるかどうかはかなり怪しいな」とBL1号・ケイイチロウ。

「それじゃあ、打つ手なしってことですか⁉」

 BL2号・サクヤが悲鳴を上げる。

 

 問題は、バブみフィールドから脱出する方法がないことだ。ゴークイーンズの三人にそれぞれウィークポイントが存在したように、どんな敵にも何かしらの弱点があるのが常である。それが、アマエマックスには見当たらない。

 いや、どこかに必ずあるはずだ。考えろ、と裕介は自分の心に鞭を入れた。今までのアマエマックスの言動を順番に思い出し、敵を攻略するヒントがないか、死に物狂いで探す。

 

 

『俺以外の存在がバブみフィールドに入ったら最後、『赤ちゃんプレイをしたい』という強烈な欲求に襲われ、まともな思考ができなくなる。そして、俺の戦闘力はこの空間内で倍増する。もはや勝負は決したも同然だ!』

 

『無駄だ。内側から俺のフィールドを破壊することは不可能。貴様はまんまと俺の術にはまったのだ』

 

 

(……「内側から」?)

 

 体に電流が走ったかのような錯覚を覚えた。恐竜の戦士はなぜ、わざわざ「内側から」と情報を付け加えたのだろうか。

 

「外からだ。外側から、バブみフィールドを破壊するんだ!」

 

 四人のヒーローを見回し、裕介は指示を出した。

 

「あいつは、内側からの破壊が不可能だと言った。けど、外側からも破壊できないとは言っていない。もしかしたら、中にいる二人を助け出せるかもしれない」

「可能性はあるな」と百合ブルー。

「そもそも、『内側から破壊できない』というのも曖昧な表現だ。強度が高すぎて物理的に破壊できないのかもしれないが、バブバブしたくて仕方なくなるから、精神的に破壊不可になのかもしれない」

「俺たちは大切なポイントを見落としていた。ありがとう、オメガ珈琲シルバー。行くぞ、皆!」

「おうッ!」

 

 ケイイチロウの指揮で、四人はドーム型のエネルギー体へVSチューナーの銃口を向けた。

 

 

「BL・一撃ストライク!」

「百合・イタダキストライク!」

 

 各々が全力で必殺技を放ち、バブみフィールドの障壁に光弾が激突する。均衡が保たれたのはせいぜい数秒で、漆黒のフィールドはあっけなく崩壊した。

 

「何っ⁉」

 

 今まさに百合・BLエックスへとどめを刺そうとしていたアマエマックスだったが、暗黒空間から投げ出されたことで目を白黒させていた。

 

「馬鹿な。まさか貴様ら、俺のフィールドの弱点を見破ったのか。一体、どうやって⁉」

「自分の心に聞いてみるんだな」

 

 皮肉っぽくケイイチロウが言った。

 ぐったりしているツカサとカイリの手から「借りるぞ」とVSチューナーを取り、そのうち一丁は自分で使い、もう一丁は百合ブルーに手渡す。人数的には二人がダウンしているため四人だけだが、これで銃は六丁、心は六人分だ。

 

 

「アマエマックス! お前たち超次元生命体は、何かにつけてツカサとカイリを狙ってきた。この間のTSライジャー事件のときだって、挑戦状を出したのはあの二人に対してだけだった。だが忘れるな。戦隊とは、全員揃っているからこそ戦隊なんだ。俺たち四人の仲間をマークしていなかったことが、お前の敗因だ!」

 

 BL1号と百合ブルーがVSチューナーを二丁拳銃で使用し、四人が六人分の必殺技を発動した。

 

「スーパー・スペリオル・受け攻めショット!」

「スーパー・エクセレント・ネコタチエックス!」

「BL・一撃ストライク!」

「百合・イタダキストライク!」

 

 怒涛の六連撃を見舞われ、アマエマックスの装甲から立て続けに火花が散り、亀裂が走った。

 

「お、おのれ、百合・BLレンジャー!」

 

 典型的な悪役の台詞を口走ったのちに仰向けに倒れ、大爆発に包まれる。

 裕介がバブみフィールドの弱点を見破ったことで、ケイイチロウたちは無事に勝利を収めることができたのだった。

 

 

「そうか。この青年も超次元生命体だったのか」

 

 原典無しの遺体を見下ろして、ケイイチロウが数秒間目を閉じ、手を合わせる。

 

「遺体には、我々BL警察が適切な処置を行おう。ここから先は任せてほしい」

「ありがとう。でも、最後に少しだけ、こいつと話をさせてくれ」

 

 無理を言っているのは分かっていたが、裕介はそう申し出た。変わり果てた姿になった原典無しの側に屈み込み、そっと手を取る。

 

「……すまねえ。俺一人の力じゃ、アマエマックスには勝てなかった。その結果、お前をこんな目に遭わせてしまった。悔やんでも悔やみきれねえよ」

 

 枯れたと思っていた涙が、再びこみ上げてきた。ぐいっと乱暴に目尻を拭い、自らを奮い立たせるかのように続ける。

 

「俺、もっと強くなるよ。大切な人の命が目の前で奪われるようなことが、二度とないように。そして、お前に託された夢を実現させるために」

 

 

 原典無しの口から語られた、恐るべき真実。人間界と超次元界、二つの世界を救うため、早川裕介はさらに強くなることを誓うのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定