百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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㉓俺たちが変身!?ありえない!

「ハア、ハア。やるわね。だったら、もう一度男らしく行こうかしら」

「――いい加減にしなさい!」

 

 双方が心身ともに疲れ果てたとき、とうとうツカサの堪忍袋の緒が切れた。

 

「あんた、さっきから男らしく、女らしくってうるさいわ。男はこういう生き物、女はこういう生き物だってイメージを押しつけるのは、一種の性差別だと思うわよ」

「そうだぜ。今は多様性の時代なんだ。男っぽい女がいたって、女っぽい男がいたって、それでいいじゃねえか。百合が好きな女も、BLが好きな男も大歓迎だ。固定されたイメージで語ってんじゃねえぞ!」

 

 カイリも彼女に同調した。

 

 

「……なあ、ツカサ」

 

 ふと、彼が真面目な表情になり、相棒をじっと見つめる。もちろんマスク越しに表情が分かるわけがないのだが、ずっと一緒に戦ってきた間柄では、そんなものはなくても通じ合えた。

 

「俺は恋愛ってよく分からねえし、お前のことを女としてどう思ってるのかも、正直よく分からねえ。TSライジャーに指摘された日から俺は、女であるお前とどう向き合うべきか悩んでたんだ」

「な、何よ、急に改まって」

 

 朱に染まったツカサの頬も、カイリにはマスク越しに見透かされているのだろう。

 

「でも、今ようやく答えが出たぜ。――男だとか女だとか関係ない。俺はお前が好きだ、ツカサ。たとえお前が男に生まれていたとしても、俺はきっとお前のことを愛していた。共に戦ってきた仲間として、最高の相棒として……俺には、お前が必要なんだ!」

 

 

 思えば、先刻カイリがツカサを抱えて転がったとき、彼の手つきには若干のぎこちなさがあった。仲間を助けるためとはいえ、女性の体に触れることに躊躇や動揺があったことは想像に難くない。

 だが彼は、相手の性別がどっちだとかはどうでもよかった。大切な仲間を救いたいという純粋で強い気持ちが、カイリを突き動かしたのだ。「男だ」「女だ」といちいち宣言してフォームチェンジするTSカイザーとの戦いの中で、彼は無意識に男女という性別について考え、そして結論を得た。

 俺は、ツカサが女だから、女としての特性を備えているから好きなわけじゃない。ツカサが、ツカサだから好きなのだと。かけがえのないパートナーとして、自分は彼女を必要としているのだと気づかされた。

 図らずも、TS系二人目の戦士は若い男女の仲を進展させてしまったわけである。

 

 

「奇遇ね。あたしも、あんたと同じ気持ちよ」

 

 彼を振り向かせるため、女性に興味を持たせるため、今までツカサはあの手この手で頑張ってきた。でも、そんな必要はなかったのだ。

 

「仮にあんたが女だったとしても、きっと恋してたと思う。あたしが好きなのは、カイリ自身だから」

 

 彼女が本当にすべき努力は、カイリに女性を好きにさせる努力ではない。自分を、ツカサ自身を好きにさせる努力だったのだから。長かった片想いがついに成就し、彼女は幸せいっぱいで泣き笑いめいた表情になっていた。

 

「あたしたちは、二人で一人。心は常に共にある。超次元生命体なんかに、絶対に負けないわ!」

「おう!」

 

 二人が頷き、固い握手を交わしたとき、奇跡は起きた。天から眩しい光が降り注ぎ、ヒーローたちの全身を包み込んだのだ。

 固い絆と愛で結ばれた二人の心が、まだ見ぬ原典に由来する、新たなパワーを引き出したのである!

 

 

「「――デュアル・百合&BL・ウェーブ!」」

 

 やがて、二人の息の合った掛け声によって、光は霧散する。その中から現れたのは、強化変身を遂げた百合エックスとBLエックスだった。

 白と黒のフリルがついた衣装を、金銀のアーマーの上に重ね着。胸には大きなリボンが、腰にはハートのマークもあしらわれている。

 

 推し推し砲や「スーパー」と名のつく強化必殺技など、これまでに百合エックスとBLエックスはパワーアップを遂げてきた。しかし、メダルを使って変幻自在に戦うロリーニンジャーや、「BANG・解」で攻撃力を倍増させるオメガ珈琲シルバーのように、明確に強化フォームと呼べそうな形態は存在せず、あくまで強化された武器や技があるだけだった。そのためチームワークを発揮して頑張ってきたわけだが、ここ最近はロリーニンジャーやオメガ珈琲シルバーの活躍の陰に隠れてしまっている印象は否めなかった。

 今ここに、彼らにとって初の強化フォームが爆誕したのである。

 

 

「お、お前たちは一体⁉」

 

 TSカイザーにとってもこれは予想外だったようで、動揺を隠せていない。こんな形態が登場するとは、武神ネトルが生前に収集していた戦闘データにはなかった。

 

「光の使者、百合ブラック!」とカイリ。

「光の使者、BLホワイト!」とツカサ。

 

 それぞれにポーズを取った後、今度はツカサ、カイリの順で、敵をびしっと指差して言い放った。

 

「闇の力のしもべたちよ!」

「とっととおうちに帰りやがれ!」

 

 怯んだTSカイザーが、しきりに「あり得ない」「ぶっちゃけあり得ない!」と繰り返す。

 

 

「今までお前たちが扱ってきた原典のパワーは、どちらかというと男の子向けのものばかりだったはず。なぜ、ここにきて女の子向けの原典の力を⁉」

「あんた、さっきのあたしの話聞いてなかったわけ? 男だとか女だとか決めつけないで。女の子だって暴れたいのよ。……きっと互いを強く想うあたしたちの心が、奇跡のパワーアップを起こしたんだわ。そうよね、カイリ?」

「ああ」

 

 二人は笑い合い、VSチューナーを投げ捨てた。この形態では、武器は基本的に使わない。徒手空拳のみで敵を圧倒するのが、百合ブラックとBLホワイトの戦闘スタイルだ。

 

「お前は言ったよな、TSカイザー。お前が使える原典のパワーは、無貌に与えられたものだと。だが、与えられた力だけを使っている限り、お前は俺たちには絶対に勝てねえぜ!」

「あたしたちは、あたしたち自身の力で勝利を掴み取る。今だって、新しい力があたしたちの心に応えてくれた。全部他人任せで、強くなるための努力すらしない連中に、後れを取るわけにはいかないのよ!」

 




今回、ご迷惑をおかけした作品
・ふたりはプリキュア
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