百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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第8話 大勝利!さらばクイーンズ

「――あなたたちが百合とBLを代表する戦隊であるように、スリークイーンズSとタイツマンは、SMプレイを代表する戦隊なのよ。この百貨店にいる男どもを鞭打ち、極上の愛を与えてあげることで、世の中にもっとSMの良さを広めようというわけなのだわ」

 

 三人を代表して、レッドクイーンが応じた。胸に手を当て、選手宣誓でもするかのように堂々と言い放つ。彼女たちのプレイのためには、女性客は必要なかったらしい。

 剣に操られていたときのコウ同様、マイナーな性癖をメジャーにしたくて実力行使したのだろうか。いずれにせよ、高次元生命体が絡んでいると見て間違いない。

 

「いいこと? 百合やBLにも攻めや受けが存在するように、愛とは支配と従属によって成り立つものよ。快感を与える側が与えられる側を従える、その究極の形がSMプレイなの。なぜ、あなたたちは私たちのSMを拒絶するのかしら? 私たちはただ、愛の形を表現しているだけなのだけれど」

 

 レッドクイーンが小首を傾げた。

 

「SMに限らず、愛とはときに暴力的な形をとるものよ。性行為に及ぶとき、パートナーに首を絞めてもらうのが好きな人がどれだけいるか知っているかしら? そうそう、欧米ではスパンキングも流行っているわよ。一体、どうしてあなたたちには理解していただけないのかしら。私たちなりの究極の愛の形を」

 

 

「……あんたたち、全然分かってない」

 

 彼女を真っ向から睨みつけ、ツカサが呟く。赤い女王の眉がピクリと動いた。

 

「何ですって?」

「全然分かってないって言ってるのよ!」

 

 今や、BLエックスの全身からは闘気が溢れんばかりだった。

 

「攻めと受けも、SとMも、お互いに愛し合って信頼し合っているからこそ、主従関係を伴った愛情表現として成立するのよ。しっかりとした関係を築かず、ただ市民へ一方的に痛みを与えているだけのあんたたちは、愛とは何なのかを全然分かってないわ!」

 「……おのれ」

 

 今まで口を聞かなかったタイツマン三人衆が、そのとき初めて動いた。肩をいからせ、女王たちを守るように前に出る。

 

「モブキャラの分際で、我らが女王陛下のSMプレイを侮辱するとは。許し難き罪!」

「おっと、勘違いするなよ。俺たちは別にSMプレイ自体を否定してるわけじゃない」

 

 ツカサの横に並び立ち、カイリも飄々とした口調で言う。

 

「ただ、お前らのやり方は気に食わねえ。それだけだ」

 

 

――行くぞ、ツカサ。

――ええ。行くわよ、カイリ!

 

 何だかんだで今までずっとコンビを組んできた二人に、言葉は不要だった。仮面の奥の目で頷き合うだけで、お互いの考えていることが分かった。

 強い絆と信頼関係で結ばれたヒーローは、暴力で人々をねじ伏せる偽物のヒーローなんかに決して負けない。

 

「BL警察の権限において!」

「警察でも何でもないが、怪盗の気まぐれにおいて!」

「「実力を行使する!!」」

 

 BLエックスが飛び蹴りを繰り出し、レッドクイーンを怯ませる。その隙に百合エックスが男性を救出し、会場の外へ逃した。

 

「これで遠慮はいらないわね。――行くわよ! スペリオル・受け攻めショット!」

「エクセレント・ネコタチエックス!」」

 

 銃にエネルギーを充填し、百合エックスとBLエックスが必殺の一撃を放つ。

 

「タイツマン、私たちを守る盾となりなさい!」

 

 女王たちは慌てた様子で、下僕の影に隠れた。

 

「オーッホッホッホ! あなたたちはドMですから、敵の攻撃を受ければ受けるほど強くなるわ。そんな技、弾き返してしまいなさい!」

「かしこまりました。SMフィールド、全開!」

 

 命令を受けたタイツマンは恭しく頷き、バリアのようなものを展開した。光弾を受け止め、ギリギリ耐えている。

 

 

 だが、二人のヒーローの猛攻は止まらない。「スペリオル・受け攻めショット」「エクセレント・ネコタチエックス」の二大必殺技に続いて、バズーカ型武器・推し推し砲を取り出して構えた。

 前回はリボンダーマンも一緒に三人でバズーカ技を放ったが、今のツカサとカイリならば二人でも撃てるはずだ。推しと推しとの愛とは何か、理想の関係性とは何かーースリークイーンズSとの問答の中で、二人は自分たちの理想の愛を再確認していた。本当の愛を知った百合・BLエックスは、間違った愛を押しつける悪党を倒せるだけの力を発揮できるのだ!

 

「喰らいなさい!」

「これで終わりだ!」

 

 発射されたエネルギー弾がタイツマンのバリアを粉砕し、女王たちをも巻き込んで大爆発を起こす。爆風に吹き飛ばされ、全身黒焦げになった彼女たちはがくりと倒れ込んだ。

 

「あ、ありえないわ。百合とBLを愛するあなたたちの強い心が、私たちのSMフィールドを中和、破壊しただなんて……」

 

 何かブツブツ言っているが、詳しい話は取り調べのときにたっぷりしてもらうとしよう。

 犯人を無力化し、カイリとツカサは変身を解除した。ふう、と揃ってため息をつく。

 

「まだまだ戦いは終わらないようね」

「でも、俺たちならきっと乗り越えられるさ。そうだろ?」

 

 

 二人は高校時代からの腐れ縁だ。東京卍帝国の陰謀により、一時期は仲が悪かったこともある。その上、お互い百合とBLにどハマりしているせいで、異性へ恋愛感情を抱くことなど滅多にない。推しを愛でるのに忙しいのだ。

 けれども、事情を知らない人が今の彼らを見たら、こう思うのではないだろうか。「何て幸せそうなカップルだ」と。

 親しげに、楽しそうに笑い合うツカサとカイリ。幾多の試練を乗り越えて絆と信頼で結ばれた二人は、ある意味で恋人よりも恋人らしかったかもしれない。

 

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