百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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2 はじめての死

『ウナギ! リボンミックス!』

 

 戦隊とラスボスのバトルに、一人の女が乱入した。放たれた雷撃が、無貌の体に生えたチェンソーを貫き、根元から焼き焦がす。

「無貌通行」による反射は、彼の体に触れた攻撃を対象とする。どうやらこの原典の能力は、体から生えたチェンソーまでは「無貌自身の肉体」と認識せず、したがって今の電撃を反射できなかったようだ。

 

「貴様がここにいるということは、ウルフ・J・ギンブリーは倒されたということだな。松本・オリジン・お菊」

 

 現れたリボンズをじっと見て、無貌は言った。

 

 

「……誰?」

 

 一方、ツカサたちは首をかしげた。それも当然で、お菊は早川裕介、来部美明日以外のヒーローたちとまだ面識がなかったのである。

 

「無貌たち上層部の支配に抗ってきた、超次元界のレジスタンス組織の生き残り、とだけ言っておくわ」

 

 お菊は簡潔に自己紹介を済ませ、仇敵に向き直った。

 

「無貌。あなたを倒さない限り、私たちレジスタンスの戦いは終わらない。原典無しをはじめ、散った大勢の仲間たちのためにも、今ここであなたを討つ!」

「私を討つだと? チェンソーを破壊できた程度で、図に乗るな」

 

 無貌は嘲笑する。

 

「今この場にいるヒーローの中で、私の力の偉大さを最も理解しているのは貴様のはずだ。天と地ほどの力の差を知りながらも、挑むというのか。愚の骨頂だな」

「私は何も、ノープランで戦いを挑んだわけじゃないわ。――あなたたち、今よ!」

 

 

 彼女の合図を受け、フードを被った男女が、建物の陰から次々と姿を見せた。リーダーであるお菊の命で、レジスタンス組織のメンバーたちはこの付近で待機していたのである。

 その数、何と総勢千人。

 

「なるほど。レジスタンスの残党どもを集結させたというわけか。用意周到なのは称賛に値するが、弱者を寄せ集めただけでは私は倒せぬ」

「弱者だと決めつけるには、まだ早いんじゃないかしら」

 

 よく見ると、彼らの腰にはリボンズドライバーと酷似したベルトが巻かれていた。

 

「私はリボンズドライバーを解析し、量産に成功した。ここにいるすべての同志には、量産型のドライバーを配布してあるわ!」

「……ほう」

 

 

 顔と呼ぶべきものを持たない無貌が、目を細めたような気配を見せた。

 お菊自身、アイロンマンたちから無断でリボンズドライバーを拝借したことに対して良心の呵責に苦しまなかったわけではない。せめてもの償いとして、この赤と黒のドライバーをできる限り有効活用し、無貌討伐に役立てたかったのだ。

 

「それだけじゃない。ここに集っている者たちは皆、私や原典無しと同様、多少なりとも原典の力を使える。いくらあなたが強くても、千通りの技を絶え間なく受け続ければ膝を突くしかないでしょう。千対一の状況に絶望しなさい!」

 

 じりじりと、レジスタンスのメンバーが距離を詰めてくる。同時にドライバーを操作し、スタンプ型のアイテムを押印した。

 

『RISE! RAGE! REQUIEM! アメリカン・ファイター!』

 

 量産型の戦士「リボンズトルーパー」へ変身を遂げた千人のレジスタンスたちが、たちまち無貌を包囲した。さらに、各々が日本刀に似た武器を召喚し、原典の力を解放した。

 原典のイメージ付与を強制した上層部の影響で、超次元界に生きる者は皆、何らかの原典のイメージをその身に宿している。たとえイメージ付与を拒んでも、原典無しがそうだったように、ある程度の影響は避けられないのだ。

 

 

「『面を上げろ』!」

「『巻きて昇れ』!」

「『吹鳴らせ』!」

「『打ち消せ』!」

「『砕けろ』!」

「『倒れろ』!」

「『散れ』!」

「『咆えろ』!」

「『鳴け』!」

「『刈れ』!」

 

 千本の刀が色とりどりに輝き、能力を発現する。

 傍から見ているカイリたちには、一つ一つの能力がどんなものなのかは分からない。何なら、この刀が登場する「原典」でも詳しい描写がなかったものもある。すなわち、その能力は未知数。未知数ならば、無貌でさえも予測できないトリッキーな攻撃を叩き込めるかもしれない。

 最後に、一際屈強そうな男性戦士が「『万象一切灰燼と為せ』」と発声し、攻撃準備は整った。いつでも必殺の一撃をお見舞いできる。

 

 

「なるほど」

 

 大したものだ、と無貌は控えめに拍手した。千人に包囲されているというのに、全く動揺していない。

 

「全貌が判明していない原典のパワーをも使い、千人分の能力を私にぶつける。仮に『無貌通行』で攻撃を跳ね返されたとしても、リボンズトルーパーの装甲があれば耐えられる。加えて、リボンズトルーパー自体が備える必殺技も使用可能となる。そのようにして多種多様な技を間断なく叩き込み、手数で圧倒することで私の防御を崩す腹積もりか」

「あら、よく分かっているじゃない。――分かったところで、対処の仕様がないでしょうけどね!」

 

 千人の同志の先頭に立ち、お菊もドライバーを操作した。「リボンズ・レクイエム!」の音声と共に、電気ウナギの能力が発動。リボンズの手から稲妻が放たれた。

 

 

「終わりよ、無貌!」

「……うわっ、これはさすがにやべえぞ⁉」

「ここにいたら巻き込まれちゃうわ。あたしたちも逃げるわよ!」

 

 一人のリボンズと、千人のリボンズトルーパーによる同時攻撃。未だかつてないほどの大規模攻撃を前に、百合&BLレンジャーの面々は命からがら猛ダッシュで逃げた。

 彼ら七人の背が遠ざかった数秒後に、無貌目がけてカラフルな総攻撃が炸裂。大爆発が巻き起こり、大地が震えた。

 

 

「やったぞ」

 

 誰かが呟いた。歓喜はすぐに伝播し、レジスタンスたちは口々に叫んだ。

 

「これだけの威力の技を叩き込めば、さすがの無貌も生きちゃいまい」

「俺たちの勝利だ!」

 

 はたして、爆炎の中に目を凝らすと、力なく横たわる無貌の姿があった。全身を穿たれ、抵抗する力は残っていなさそうである。

 

「……貴様らの中には、私の認識を阻害するような能力を持つ者が混じっていたようだ。これでは、『無貌通行』による反射も正常に行えぬ。どうやら、私の負けのようだ」

 

 千人のレジスタンスのうち何名かは、相手に完全催眠をかけたり、方向感覚を狂わせたりする能力を有していた。その結果、無貌自身は「攻撃をすべて逆方向に跳ね返した」つもりでも、実際は上手く反射できず、ダメージを受けてしまったのだ。

 

 

「呆気ない最期ね」

 

 フン、と鼻を鳴らすお菊。彼女たちを遠巻きに眺め、ツカサたちは呆然としていた。

 

「……もしかして、もうラスボス戦終わっちゃった? 私たちの出番、これで終わり?」

「嘘だろ。まさか、初対面の奴らに美味しいところを全部持って行かれるとは思わなかったぜ」

 

 けれども、勝利に浮かれる彼らの心は、無貌らしき人物が最期に残した言葉によって大きく揺さぶられた。

 

「申し訳ありません……無貌様」

 

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