「インストール! 『オメガ珈琲シルバー』!」
携帯電話型のアイテムを操作し、裕介が変身。銀色をベースに、金のラインが刻まれた戦士へと変わった。
『HUMBLE(謙虚)! SINCERE(誠実)! ORIGINAL(本来)! 超次元ライダー・来部!』
美明日も蝙蝠の意匠を持った白の戦士になり、専用武器の「来部ガン」を構えた。
「行くわよ、早川くん」
「おう!」
二人は頷き合い、無貌目がけて疾駆した。左右に分かれ、それぞれ攻撃を仕掛けていく。
まず、オメガ珈琲シルバーが先制。走りながら、召喚した珈琲サイブレードから「珈珈弾」を連射した。しかし「無貌通行」により跳ね返され、逆にダメージを受けてしまう。
「クソッ。何なんだよ、今の技は!」
跳ね返ってきた「珈珈弾」を反射的に腕でガードし、シルバーは悪態を吐いた。
「おい後輩、気をつけろ! そいつに遠距離攻撃は効かねえぞ!」
苦戦している裕介を見かねて、カイリが叫んだ。
「ついでに教えとくと、全部の原典のパワーを使えて、俺たちの攻撃すべての対処法を知ってる! ぶっちゃけ倒すのは相当難しいけど、頑張ってくれよな!」
「ありがとよ。だけど、そういうことは先に言ってくれねえかな⁉」
半端ない絶望感を覚えつつ、裕介が大声で言い返す。先ほどナオヤとカイリの間で交わされたのと同じような会話を繰り返している辺り、実はこの二人、似た者同士なのかもしれない。
「……さ、先に言ってよね~⁉」
ちょうどそのとき、美明日も無貌の反撃を喰らって吹っ飛ばされていた。どうやら、幸先よく「来部・ジャスティスフィニッシュ」で光弾をぶっ放した結果、見事にカウンターされたらしい。
「大丈夫か、美明日!」
「え、ええ……」
お姫様抱っこのような体勢でパートナーを抱き止めた裕介は、彼女が仮面の下で頬を赤らめていることを知らない。そっと美明日を下ろすと、再び無貌へ突進した。
「遠距離攻撃が効かないなら、近接攻撃で片を付けてやる。『琲琲刀』!」
威力を増した珈琲サイブレードの一撃が、のっぺらぼうの侵略者へ迫った。
「ちょっと待って。近距離なら大丈夫とか、そういう問題じゃないわよ⁉」
ツカサが慌てて制止したが、時すでに遅し。オメガ珈琲シルバーの放った斬撃は、無貌の肩にしっかりとヒットしていた。
カイリと話し合って「近距離攻撃を当てても効かない可能性が高いから、百合ブラックとBLホワイトの格闘技はまだ使わない」と決めたのに、名古屋から来た援軍はなりふり構わずに一直線な攻め方をしている。これでは、何のために自分たちが慎重に攻撃してきたのか分からない。それに、シルバーが反撃を喰らう懸念もあった。
「ま、攻撃してしまったものは仕方ねえよな。無貌の出方を見れる良い機会かもしれない。あいつはそう、囮……じゃなくて、試金石だ。偉いぞ、試金石の後輩!」
「今、囮って言ったわよね⁉」
ツカサとカイリが緊張感のない漫才をしている間にも、無貌の能力は発動されていた。斬撃が当たると同時に反射され、無貌へのダメージはゼロになる。代わりに、反射された斬撃の勢いがシルバーへ迫り、裕介は紙一重でかわした。体のすぐ横を、衝撃波の塊のようなものが凄い速さで通過していく。
「危ねえな。何しやがる」
舌打ちし、ジャンプして後退するオメガ珈琲シルバー。
「だが、これではっきりしたな。お前には近距離からの打撃も効かないってことが」
「それが分かったところで、貴様に何ができる。私にダメージを与えることなど不可能だ」
無貌が、その真っ白な顔を裕介へ向けた。
「私からは積極的に仕掛けず、ただ『無貌通行』を発動しているだけで貴様らは苦戦している。ましてや他の原典の力も使えば、貴様らの命は数秒も持たぬ。降伏するなら今のうちだぞ」
「まだ全力を出してませんってか。舐めやがって」
裕介が握る珈琲サイブレードの刀身が、黒く染まっていく。
「ほう。貴様、何をするつもりだ」
「お前みたいなカウンター能力を持ってるキャラは、ガキの頃に読んでいた少年漫画で何度か見たことがある。そして、そいつらほぼ全員が持っている共通点があった。カウンターにも限界があり、攻撃力がでかすぎると跳ね返せないってな!」
彼がアメリカでの修行で会得した力が、解放された。
「ビビるなよ。今から俺の最強の技を、てめえに叩き込む! ――『BANG・解』、『喫茶斬月』!」
とうとう切り札を出してしまったオメガ珈琲シルバーを見て、百合&BLレンジャーの面々は青ざめていた。カイリとツカサが制止する。
「おい待て、考え直せ。そんな高威力の技を跳ね返されたら、ひとたまりもないぜ!」
「リボンズトルーパーの攻撃が効いたのは、詳細が判明していない原典の力が混じっていて対処が難しかった上に、千人による同時攻撃で、認識阻害の能力も加わっていたからよ。いかも、あのときの相手は無貌の補佐官だったけど、今回は本物で強さも段違い。あんたの技だけじゃ無理だわ!」
「じゃあ全員で一斉攻撃すればいいんじゃないの」という話だが、残念ながら、この戦隊のメンバーには認識阻害のような絡め手を使える者がいない。単純に火力の高いだけの攻撃では、「無貌通行」を攻略することは不可能なのだ。
ゆえに、加勢するのではなく必死に止めようとしたのだけれども。
「……分かってる」
不意に、シルバーは先輩たちの方へ振り返った。そして、小声で言った。
「少年漫画のキャラたちには、もう一つ共通点があった。あいつらは攻撃を吸収した後で反射するんだが、吸収と反射を同時にはできないことも多い」
多くを語らず、彼はすぐ無貌へ向き直ってしまった。しかし、言いたいことは分かった。要するに、「俺の攻撃を無貌が反射している間に、お前たちが攻撃してくれ」ということである。
あくまで「吸収と反射を同時にはできない」前提での作戦だが、他に有効な手段がない以上、裕介に賭けてみるしかなさそうだ。ツカサたちはVSチューナーで無貌を狙い、隙が生じるのを今か今かと待った。
「『オメガ天衝』!」
高く掲げた珈琲サイブレードを、シルバーが一気に振り下ろす。巨大な斬撃が放たれ、無貌を襲った。
「貴様の取るに足りぬ考えなど、すべてお見通しだ」
だが、のっぺらぼうは怯んでおらず、にやりと笑ったように見えた。いつの間にか、その手にはレジスタンスから奪ったと思われる日本刀型の武器が握られている。
「できれば、この『BANG・解』は使わずに終わらせたかったのだがな。姿は巨大で隠れることもできず、重すぎて動くこともままならぬ。――『BANG・解』。『無貌雷公鞭』」
刀は瞬時に、照準器付きの巨大な砲台のような形状に変わった。金色のそれに、同じく金色の砲弾が装填されている。撃ち出された砲弾は斬撃と正面衝突し、その威力を相殺させた。
「……てめえも『BANG・解』を使えるのか」
「当然だ」
ずっと「無貌通行」に頼るのも芸がなかろう、と無貌がほくそ笑む。
「カウンター系の能力など使わなくとも、貴様の技を防ぐことなど容易い。これで突破口はなくなったな」
「まだ終わりじゃないわよ」
手詰まりになったオメガ珈琲シルバーに代わって、来部が立ちはだかった。右手に持ったスタンプ型アイテムが不思議な光に包まれ、白い鴉の羽のような意匠が追加される。
「三武神ネトルを倒し、完全に決別したことで、私は新しい力を獲得した。今こそ、それを見せるときよ!」
スタンプを押印し、「ホーリーアップ」の音声と共に強化変身。背中から生えた羽が全身のアーマーを包み込むようにして、メタリックホワイトの姿に生まれ変わった。
『WING! WING! WINNING! ホーリー! ホーリー! ホーリー! ホーリー! ホーリー・来部!』